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32.『旅』/『お腹』
『旅』
隠居生活に入った水戸藩主は活力を無くしていた。
そんなある日、奇妙な少女を助けた。彼女は時間旅行者と名乗った。意味不明だ。
だが旅の魅力を大いに語ってくれた。「旅をしていると様々な人に出会います。優しい人、怖い人。彼らと出会って自分がどう変わるか。それが楽しみなんです」
彼は決心した。
『お腹』
電車の席をお腹の大きい人が譲ってもらっていた。近くに若い男が立っている。
「寒いわね」
「ああ、冷えると赤ちゃんに悪いから早めに帰ろう」
温かい光景だ。私達にも、昔はあのような出来事もあったものだ。
「あなた、あたしも早く帰りたいわ」
彼女はお腹をポンと叩いた。お前はもっと外に出ろ。