28/124
28.『気配』/『ダイブ』
『気配』
夜中、トイレでドアの向こうから気配を感じた。数分たっても消えない。膝が震える。
水を流し、目をつぶってドアを破る勢いで開けた。そして後ろを見ずに早足で逃げる。
裸足で追ってくる。冷や汗が止まらない。心臓が破裂しそうだ。
寝室に飛び込めた。まるでオアシスのよう。
後ろには祖父が佇んでいた。
『ダイブ』
「最初にダイブ出来た奴が勝ちだぞ!」
友達数人で海へ遊びに来ていた。五メートル下には波打つ海が広がる。誰も先へ進もうとしない。
「仕方ねぇ。俺が一番だ!」体格のいい男子の姿が消え、ド派手な音が耳をつんざいた。腹を打ちつけたらしい。
「“だいぶ”痛そうだな」
真夏の空気が一瞬で凍りついた。