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26.『ヌードデッサン』/『そのまま』
『ヌードデッサン』
無人の美術室に先輩がいた。「裸は芸術だよな」
突然の質問に「はい」と生返事した。唐突に何だろう。
「そこで、お前にしか頼めないことがあって」
え、まさか私をモデルに? 先輩がゆっくりと迫って来る。ヤバい。
叫び声を上げようとした時――
「俺をモデルに描いてくれ」先輩の脱着を全力で止めた。
『そのまま』
美術部の女の子が、我が弓道部にデッサンの依頼をしてきた。どうやら、部長であるあたしを描きたいらしい。
「それでは、矢を引く姿勢をお願いします」言うことに従った。
「美しい引きの姿勢ですね」
ついつい口元が緩む。
三十秒たち、限界が近づいて来た。
「まだです! 動かないで」
おいこら待て!