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15.『肴』/『指輪』
『肴』
「最近どうよ?」
「いや~、ボチボチだね」中年男二人が、互いの店の景気を肴にして酒を飲んでいる。
「あんた、ここじゃ見かけない顔だね」
奥にいる小太りの男の隣に座った。
「自分が育ててきた会社から辞任命令を受けてね。これを最期の酒にしようと思うんだ」
彼は店を出て行った。
『指輪』
君は笑顔で「おはよう」と言った。まだ眠いので布団に潜ると、
「起きなきゃダメ」と引きはがす。
思うように動かない体を、君は支えて起こした。
服を替えてくれて髭を剃ってくれ、髪を整えてくれた。
そこまでする君は、一体何者なのだ? 私と同じ指輪をしているのはなぜだろう?