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116.『邂逅』/『感想』
『邂逅』
私は孤独だ。街を歩いていても誰も私のことを気に留めないし、視線さえ感じない。私だけ世間からつまみ出されている。痛い辛い寒い怖い寂しい。
だんだん力が抜けてきて、終いには誰かとぶつかって私だけ倒れた。
「大丈夫ですか、お姉さん」
一ヶ月後に彼氏となる高校生との邂逅だった
『感想』
自費出版した小説を友人に貸して一ヶ月になるので感想を聞いてみた。
「どうだった?」
「いやー、このズッシリ感がいいよね。物理的に厚いし、何より物語の厚みを感じる。表紙の絵が綺麗」
「本文の感想は……?」
「……インクと紙の匂いが」
「素直に言ってくれ」
「ごめん読んでない」