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11.『旅立ち』/『思い出』
『旅立ち』
一人の女の子が旅立とうとしている。
もう二度と、彼女と一緒にご飯を食べたりお風呂へ入ったりTVで笑ったり出来ない。
「ママは絶対あなたの事忘れないわ」俺も、私も、と叫ぶように続く。
だが、女の子は首を振った。
「幻になってもいい。今を精いっぱい生きられればそれでいいわ」
『思い出』
僕だけを見ていたあの子は、突然いなくなった。涙が枯れるほど泣いた。
校舎裏での告白を彼女が受け入れてくれた事、一緒に勉強した事、買い物で大きな街を巡った事。全部覚えている。
彼女は今、またそれを繰り返している事だろう。
あの楽しかった日々が、幻となっていく。
つらい。




