第27話毒親と長男のニート豪志
長男の豪志が海城高校卒業後に東京大学文科一類受験に失敗し、精神病を発症、長い闘病生活に入りニートとなった。すぐに精神病も寛解し豪志は立ち直るはずだという隆の当初の目論見ははずれ、豪志は闘病生活で貴重な20代を棒に振った。次第に、隆はイラつき焦っていった。
豪志の主治医の川名明徳先生と旧友の医師、田中亮先生を訪ね、隆はカウンセリングを受けた。
「自慢の息子でした。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群、芸術的感性にあふれ、とんでもない天才児でした。豪志は」
「実際に、豪志は、名門海城高校を卒業し、東京大学文科一類を受験しました。東大は落ちましたが、滑り止めの立教大学法学部は現役でなんなく受かっていた。一時的な挫折とタカをくくっていました。卓球では、松戸市内大会個人優勝、千葉県ベスト8。身長175cmで顔は絶世の美男子。性格も優しく人懐っこい」
豪志の主治医、川名明徳先生は、
「典型的なアダルトチルドレンですね。再構築、育て直しが必要です」
「つまり、あなたがたご両親は、それだけの天才児だった豪志くんに対して、東大に入って当たり前だと考えていませんでしたか?自分たちは、それだけの豪志くんの頑張りに相応しい、一生懸命働いて努力している姿を見せてきましたか?」
隆は、川名明徳先生の言葉にショックを受けた。
「わたしは、弁護士として社会の一線で活躍してきたつもりですが、家では、夜は午前さま朝は昼までぐーぐー寝てる。豪志に誤解を与えてきたかもしれません。妻の重子も怠け者の専業主婦で、とうてい豪志から尊敬されるような暮らしぶりではなかった」
川名明徳先生はふたたび尋ねる。
「豪志くんは33歳で日本大学経済学部に合格した。そこでなにかひどいことを言ったとか?」
隆は唸った。
「立教でも日大でも大して変わらない。お前がその程度の学校に受かるちからがあるのは分かってると」
川名明徳先生は嘆息し、
「自分で言っていておかしいと思いませんか?そういう考え方が豪志くんを追いつめた」
「豪志くんに愛情を注いで育ててきたと胸を張って言えますか?」
「わたしは……、わたし自身が逆境の中でいのちからがら生き抜いてきたので、子供もつらい目に合わせて当たり前だと思ってきました。豪志には悪いことをした」
川名明徳先生は、
「時代の変化もあります。今は今、過去は過去です」




