エピローグ
絶望は、誰の上にも降りかかる。それは明日とも知れぬ。今日かも知れぬ。
突然にやってきて――生きるための活力を、無情に攫っていくのだ。
頭はうなだれ足取りは虚ろ。当て所なく彷徨う姿は、まるで生ける屍のよう。
死人のように沈む瞳には、何も見えない、何も映らない。
その瞳に〝生〟への渇望は見当たらない。その世界に留まる〝理由〟は、どこにもない。
生きるための大切な〝何か〟を見失ったその瞳に、異界への扉が映る。
――ようこそ、万魔殿へ――
迎えるは、〝理性〟を無くした大男。
案内人は、数え切れぬ時を万魔殿で過ごした、〝命〟知らずな名無しの少年。
見目麗しき使用人の美女は、すれ違いざま〝心〟なき微笑を浮かべる。
万魔殿の頂に君臨するは、《大悪魔》と蔑まれし、百面相のアスモデウス。
そこに住まう黒猫は、《小悪魔》のように客人をからかう。
そこで起こる出来事は、全てがデタラメで、けれどその全てが〝自由〟
住まうも自由、帰るも自由。大切な〝モノ〟を取り戻し、出ていくのもいいだろう。
夢幻のようなその場所で、束縛するものは何も無い。
全てが全て、アナタの自由。彼らの自由。
なにもかも、なにもかもを受け入れて、万魔殿は其処にある。
幾万の、新たなる〝魔〟を迎え入れ、永久なる夜を越えながら――
――万魔殿は眠らない――




