4.行き倒れ女性は隣国のスパイで、名はフローレンスというらしい
藍は、自分の分はドリップパックでコーヒーを、行き倒れ女性にはパックの紅茶を差し出した。
「あ、ありがとうございます。あの、ほんと、すみません」
スープとパンの次に熱い紅茶をふうふうしながら流し込み、女性は少し落ち着いたようだった。
「助けてくださり、ありがとうございます」
女性は、ソファにもたれていた体を起こして、座ったままながら頭を下げる。
「うん、気にしないで。あ、名前聞いていい? 私は藍っていうの」
「フローレンスです」
「フローレンス、花ちゃんかー、フローでいい?」
「はい、それで。 アイ様のお名前はどういう意味ですか?」
「濃い青色のことだよ、藍と呼んでね」
「はい」
「どこから来たの、フロー」
「えーっと、事実とカモフラ、どっちが聞きたいですか?」
「え?」
「事実は、フルリールの諜報機関の下っ端で、情報収集のために送り込まれました。カモフラの方は、一年ほど前にグランツフォルの聖地に顕現した聖霊と、その聖霊を従えた女性をひとめでも拝見したいと探し回っている哀れな聖霊信奉者です」
「へー、それ、私だわ」
「え?」
「だから、その聖霊を従えた女性」
「えーっと?」
「私、アデライーデ・ルイーゼ・エッシェンフォルゲンが、聖霊猫に守られてこの聖地に降臨したんだよ」
「ええーーー!」
そりゃ、驚くわな~