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23.ふたりの愚痴り合いは留まるところを知らない:フローバージョン

 

「大体、女性狂信者を禁足地の聖地に送り込んで、それで情報取れるかもとか、頭悪いにも程がありますよね」

「IQ計ってみる?」

「何ですか、IQって?」

「その人が、同年齢の平均知性からどのくらい離れているかって数値よ」

「ぜひお願いします! 平均と最低の中間以上にならないと思いますけど!」

「あー、とりあえず問題文の意味がわかんないかもね、正確な意味取りも出題の内だし」

「テストなんですか?」

「うん、文章題だね。図形や計算もあるよ。すごいのだとフィボナッチ数列とかもあるらしい、その問題を解けるやつにIQテストするやつは誰なんだ、つー話だよ」


「……えー、よくわかりませんけど、まずその文書を読んで、計算もしないとならないのですね。

 ムリです」

「そっかー、そこまでかー」

「そこまでです! 報告書を読めているとはとても思えません!」

「情報組織の上部なんだよね」

「そうです!」

「フローが所属している下部組織に指示を出しているんだよね」

「その通りです!」

「フローの方が計算とか早くない?」

「当然です、そのフィボナッチ数列とやらは全然わかりませんけど」


「あ、そっちはいいの。IQテスト関連でつい思い出しただけだから。でも、記憶力いいよね、フロー。今一回でフィボナッチ数列って初めて聞いた言葉覚えたよね。私、ハンスのフルネーム、一回聞いただけじゃ覚えられなかったんだよ」

「あ、それ言えます」

「やってみて?」

「いいですとも。ハンス・アルベルト・ブルトカッセン・フォン・デム・ローエングリム卿です」

「うわー、さすが暗号で情報をやり取りする諜報員~」

「いえ、個々の諜報員がどれほど努力しようと」

「上がアホじゃ。

 そもそも求める情報が」

「カス」

「そして下部組織で重大な情報を探らせている諜報員を」

「使い捨て」


「もうダメだよね? フルリール」

「少なくとも王家と情報組織は、現段階で機能していません!」

「そうだよねー、暗部のメインジョブが筆頭公爵家夫人の下着の色調べだもんねぇ、お気の毒に」



 という調子で、意気投合して新しいののしり表現を開発し続けているうちに夕方になった。

「あー、もうじき日が暮れるわ、どうする? 夕食食べられる?」

「はい、いただきます!」


 鼻血出るまでチョコ食べて、ハンバーガーとチキン食べて、その後もエビセンとかポテトチップスを食べ続けていたフローを同情の目で見た藍は、夕食にはハンバーグとポテトサラダ、パンとミネストローネを提供した。

 藍の方はお腹いっぱいだったので、ぼそぼそと鮭のおにぎりを齧ってお茶で流し込んだ。


「もう寝ようか、暗くなっちゃったし、山登りで疲れたでしょ?」

「はい」

「このソファ使って。私はあっちの小屋で寝るから」

「はい。今日は珍しいものをたくさん食べさせていただき、ありがとうございました。いろいろ聞いてもらってスッキリしたし、よく寝られそうです」

「うん、そうだよね、私もよく寝られそう」


 お昼前から日が落ちる頃まで延々と同じ内容で愚痴り続けられるというのは、それはそれで一種の才能だ、よね?


フィボナッチ数列のIQテスト:

出典BANANA FISH、吉田秋生、小学館 フラワーコミックス

フィボナッチ数列は、高校の数IIで習う数列の、上位バージョン


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