22.ふたりの愚痴り合いは留まるところを知らない:藍バージョン
その後もふたりは、お互いの”恵まれない境遇“についてポテトチップスを噛みながら延々と愚痴を垂れ流し続けた。
「大体さー、息子の嫁になろうって女をイビって何かいいことある?
困るのは息子だよ? あ、ハンスは養子で、後継ぎの実子より持って生まれた身分が高かったよ。そうか、嫁になる予定の女も敵認定か。
よっし、ご希望に沿ってあげようじゃないの、伯爵夫人。これを理由に婚約破棄してやるわ、絶対よ! ちょうど都合がいいじゃん、婚約破棄だー、死ぬまでに一度やってみたかった! やるぞ!」
「応援します、ってか、このチャンスを逃したら二度とないかもですね。
ぜひ卒業記念ダンスパーティーでどうぞ」
「どこから卒業すんのよ。 王宮の夜会よ、決まってるわ!
そうだ、ついでに紅茶ぶっかけもやっておこうかな。ひとりふたりは面倒だわ、まとめていこう。煮出した紅茶を噴霧器に入れておいて、会場中に噴射しまくってやる、絶対やる!」
「よくわかりませんが、紅茶を煮出すところは手伝えますよ、ご存分に」
王宮舞踏会に参加する貴顕を、水田の雑草か害虫扱いする藍であった。
「えーっと、藍、ちょっと気が付いたんですけど、いいですか?」
「どうぞ?」
「あのですね、予行演習でやってみてくださいますか、婚約破棄ですけど」
「いいわ! いくわよ!
ハンス・ローエングリム、そなたのその傲慢な態度、到底受け入れがたい、今宵こそ、並み居る貴顕の前で婚約破棄を宣言する、でしょ」
「はい」
「で、ハンスが、俺のどこが傲慢か聞かせてもらいたい、でしょ」
「そうですよね、聞いている人は誰でもそう思いますよね、王家と侯爵家の都合で、伯爵家の養子に出されても苦情ひとつ言わないで従ってきたローエングリム卿ですもんね。暴れ馬のふたつ名を持つエッシェンフォルゲン少佐の手綱を三年に渡って辛抱強くとって、周囲との調整に力を尽くしてきた、名高いローエングリム卿ですから」
「えーっと、そなたの義母は、そなたの婚約者たるわたくしを、呼び寄せておきながら客間で一時間も待たせた。誠に許しがたい、あれ?
そなたは、そなたの婚約者に対して傲慢な態度を隠せない義母の躾を怠った。そなたもまた傲慢のそしりを免れない、え? ちょい待ち、えーっと
そなたの義母がそなたの婚約者たるわたくしに傲慢な態度をとるのは、そなたの指示であろう、うーん」
「それを王宮の夜会で?」
「うーーーん」
婚約破棄のご利用は計画的に~




