2.聖地から下りる道を探すために探検を始めるが、行き倒れた女性に出会う
藍は、前回よりはるかに迅速にキャンプ地を設営した。
前回たっぷり種を撒いた芝が青々と育っていたので、居心地は相当よくなっていた。柵より内側を侵略し始めていた蔓植物を刈り、快適なキャンプ空間を作り上げた。
五日ほどだらだらライフを楽しみ、さて、と腰を上げる。
藍はこの国から出てもいいと思っている。貴族暮らしなんてムリじゃん、人を使うとかムリー。自分で着替えて、自分で買い物行って料理して、後片付けも掃除も洗濯も、全部自分でできるもん! 離れがたいのはメイ姉さんだけだが、日本と異世界に離れているわけではない。会えないわけじゃない。
パソ神がついていてくれる限り、衣食には困らない。体力もついたから、王都を離れて地方都市に、そこで行き先を探すのだ! (やってできない筈はない、かも)
というわけで、前回作者に大不評だった不審者的迷彩ウエアに身を包み、前回は行きそびれた方向へ一キロメートルほど、最初は四方向に、それから八方向へと放射線状に探検 (と言えるほどのものか?) してみることにしたのだった。なんてすばらしい進化。メイ姉さんに叱られながらも絶対に柵外に出ようとしなかったあの頃の藍とは違うのだ! (多分)
前回一度だけ探検に出た時には、アクアリウムに使う白い石を目印に使ったが、今回は赤のリボンを用意した。地面に置いた白いものよりも、木に結んだ赤くてひらひらするものの方が目印の数を減らせる、とか気が付いたのだった。やはり、一年間日本とイギリスで暮らす間、何度もなんども異世界での生活を思い返しては、こうすればよかったかも、あんな風にもできたかもしれないと考えを巡らせてきただけのことはあったのだった。
すでに藍は”異世界素人“ではないのだ! (そのはず)
万歩計で距離を測りながら、ゆっくりと森を歩いた。一日に一方向、一キロほど歩き、到達点に目印のリボンを結んで帰る、それだけ。往復二キロメートルの冒険! で、その日は終了だ。あとは相変わらず不貞腐れてデッキチェアでだらだら寝そべっている。危機意識皆無。
こんなペースじゃ逃げ切る前に発見されると思うのだが。藍は一体どうしたいのだろう。
探検(か?)を始めて三日目。東から始め、南は三百メートルほどで王都背後の崖なのでスルー、西を終え、北方向へ歩いていたら、行き倒れに出会った。まあ、異世界定番のひとつだ。行き倒れている誰かを見つけたら、それはもう、助けるしかないのも定石。
ヘイヘイ、お任せ~とか思いながら、ばったり俯せに倒れ込んでいる女性に気楽に近寄って行った。
ここは聖地と呼ばれ、都人にとっては侵入禁止地帯である。侵入者がいて、それが見つけて~とばかりに行き倒れている女性ともなれば、藍の不審者ウエアよりもっと不審に決まっていた。足元こそブーツだが、小さな鞄を斜め掛けにしただけのロングスカートとジャケット姿の女性に息があることを確かめ、そっと揺り起こす。
「水、飲む?」