15.フローは、質問を続ける
右手を左手で握ってピーナッツを我慢したフローは、気を紛らわせるためか質問を再開した。
「それでですね、藍は再召喚を受けたみたいですけど、どうやって帰ってきたのですか? 日時を約束しておられた?」
「いや、なんか準備ができたらここに指を当てて、とか言われて、ロケットを首に掛けられたの。それで、そろそろいいかなーと思ったから、大荷物を抱え込んで合図を出したら、神殿に来てたって訳」
「そうでしたか。
よく、そんな。 ローエングリム卿はよほど藍を信じて求めておられたのですねえ、愛ですかねぇ」
「え?」
「だって、そんな。いつあるかわからない合図を待っておられたのでしょう?」
「まあね。でも私だって生まれた世界にいろいろ縁があるのよ、準備もしないで行方不明になれないでしょ? 不自然にならないように親類に挨拶したり、預金を口座に残しておいてカード使用履歴がつくようにしたり、出入国の記録を残したり、不必要な騒ぎにならないようにしなくちゃならないのよね」
「はあ、なるほど」
「こちらより、そういうのうんと精密なのよ。文書記録じゃなくて電子記録ってやつで、ごまかしがききにくいシステムなんだ。一度事件とみなされて探されたらもうアウト、なにせ生きてはいるらしいものの連絡は取れないんだから、本人以外がカードを不正使用していると嫌疑を掛けられて捜査になっちゃうとかいうのがあるのよ。探してほしいと言い出す人がいないようにするのにも、生きてる証拠を作り続けるにも、手間と時間がかかるってわけ」
「そうでしたか……。
でも、一年ですか? 卿はお待ちになったのですよね」
「そうね」
「……はあ、まあそこはそういうことで。
たくさん荷物を持ってきたということでしたが?」
「うん、からだに触れているものは一緒に送られるみたいだったから、着てみたかったウエディングドレスとか、両親の遺影と位牌とか、アルバムとか、大きな箱に詰めて風呂敷っていう布で包んで積み上げて紐で縛って、両腕にがっちり結んで持ってきた」
「はあ」
「召喚陣に現れたのが荷物の山だったから、神官様は大慌てだったみたいだけど」
「そりゃそうでしょうねえ、お気の毒に」
「すぐにハンスが呼ばれて、王宮から駆けあがって来て、藍か、藍なんだな、返事しろ、とか、ハインツそっくりに吠えてたわ、さすが叔父と甥よね。ハインツの大声のオリジナルは実はハンスなのかもしんない」
「大声はしかたないですよ、卿もお気の毒に」
そりゃもう、お気の毒に……。荷物の中に生きてる藍がいるかどうか、気が気じゃなかったんだろうから、大声くらいねえ~




