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14.フローは藍の家出理由を探る

 

「えーっとですね、もしかしてお嫌でしたら申し訳ないです。ですが、藍は何で家出なんてなさったんですか? いえ、もちろん私にとっては凄くラッキーだったんですけど、侯爵家のご養女で、ローエングリム伯爵家のご次男と婚約なさっているとのことでしたが、なにかありましたか?」

「あー、それそれ、もう。聞いてくれる?

 自分ちに帰って、家を売って、そのお金でわざわざ貴族がいるよその国まで行って、こっちにもう一回来るって最終的に決心できるまで一年くらいかかったのね。亡くなった両親のお墓の世話を頼んだり、体力がなさ過ぎたからフィットネスしたり、やることもいっぱいあったし。ハンス・ローエングリムに求婚されてたから、持参金になるようにあっちの世界のものを買い込んだりしてたわけよ」


「えー、えーっと、ローエングリム卿の求婚を受けて、その後にご自分の世界にお帰りになったのですか? それに、藍の国には貴族はいないってことでいいですか?」

「そうだよ。もう一回来るかどうかは帰ってみなくちゃわかんなかったし。貴族がいたのは八十年前まで」


「そうですか、全員平民っていうのは楽そうでいいですね。

 あのですね、ローエングリム卿ですよね。ローエングリン伯爵家のご養子、先代ファンデル侯爵と王女殿下の唯一のお子で、王位継承権保有の、あのハンス・ローエングリムですよね」

「よく知ってるわねぇ、さすが諜報員」

「ですが、何故? それほどの良縁なんて探し回ってもないような、フツーはその場で、え、私でいいんですか、とか言って、キミじゃないと嫌なんだ、はじめて会った時からずっと好きなんだ、とかなって、そこまで言ってくださるならお受けしますとかで、ちょっと謙遜風情を見せて、私なんかで本当によろしいなら、とか一応ポーズはつけながらも、即決? 的な状況じゃぁ……」


「……フロー、鼻血」

「あ、すいません」


 フローは想像でコーフンしたらしい。初めて食べたチョコレートの刺激に耐えきれなかったか、とろりと鼻血を漏らしてしまっていた。ティッシュの箱を渡され、鼻軟骨を摘まんでなさいと言われて首筋を濡れタオルで冷やしてもらった。


 もうスパイやめるか? 無理じゃね?



「チョコ、今日はもうやめようね」

「はい、すいません。お世話になりっぱなしです」

「私もお勧めしすぎたわ。クッキー、うーん、ポテトチップとかエビセンとかがいいかな」


 ちょっと待っててと言いながらパソにお祈りに行く藍と、もっと聞きたくてうずうずしながらもさすがに鼻を押さえながら質問攻めにはできないフローであった。



 梅塩味エビセンと柿の種、この組み合わせならビールじゃないのかというところ、なぜかお茶のペットボトルを抱えて帰ってくる頃には、フローもなんとか復活していた。

「この、エビセン?ですか? これもすっごくおいしいです。もう手が止まらないんですけど」

「ああ、それね。そうでしょう? やめられないとまらない、って感じ」

「そう、それです。ほんととまらないです」

「うん。全部食べると、おなか一杯になって他のが食べられなくなるよ? テキトーにね」

「はい! こちらの辛い方も捨てがたいです!」

「そっちのナッツも鼻血のもとだよ」

「え、そうでしたか、わ、わかりました」


 藍は餌付けでもしているのだろうか?


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