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11.ふたりはいいだけディスって、おなかがすいてしまった

 

「あー、大声出したらおなかすいたわ。お昼過ぎたし、フロー、何か食べる?」

「はい、お願いします!」

「えーっと、おいしそうな匂いさせるのも不審だから、料理はできないの。ちょっと待ってて」

「はい」


 匂いを控えたとして、怒鳴り合ってる絶叫大声の方はどうなのよ。人がいれば同じくらいの距離で届いちゃわない? においも声も。 藪の中の怒鳴り声とか、どう? 藪に、火つけられちゃうんじゃない? あ、聖地か、さすがに放火はないかな。



 今回の藍は、雨対策もじっくり練っていた。経験値を積んでバージョンアップした神宿り賜うパソは、今や電源コードすら必要とせず、藍に運ばれた場所で自在にショッピング機能を発揮するまでになっていた。そのパソ神様に願って、ってか、単に買いたいものをカートに入れて決定するだけなんだけど、ショッピングできる物をじっくり探せば、イベントテントより堅牢で雨に強く、DIYキットの木製小屋よりはるかにお手軽な、ウッドコンテナというものがあったのだった! すばらしい!

 それは、ドアと窓が付いている木製のコンテナで、設置するだけで小屋機能を発揮するというもうどうしようもなく異世界キャンプ雨天時必須製品だったのだ。


 家出してキャンプ地にたどり着き、最初にショッピングしたのが、そのウッドコンテナだ。パソ様を雨から守れるすばらしい施設である。ベッドのヘッドボードの向う側、小机に鎮座していただき、日々パソに祈って(注文して)、水も日用品もフードデリバリーもお授けいただいている。もちろん、藍が残してきた銀行口座の残高はカード引き落としで着実に減少している。


 お昼には、ハンバーガーとポテト、チキン、そしてフローにはオレンジジュース、自分にはジンジャエールを注文し、パソ前に凝縮した光の粒から実体化したレジ袋をふたつぶら下げてフローの待つテントに帰って来た。


「はい、どーぞ」

「ありがとうございます」

 ワンタッチ・イベントテントは、前回メイベルに指導されたと同じようにスノコ、断熱シート、半畳のスタイロ畳の順で床面をカバーしてあり、その上に初めの日と同じようにリクライニングソファとオットマン、低いテーブル、そして、ベッド代わりの人をダメにするクッション大型が置いてある。

 思えば、あの日はこのセッティングを終えるだけでぶっ倒れた。今回は、前回ここを去る時に金属製コンテナに詰め込んでおいたアイテムを引っ張り出してセットしたが、手順がわかっていることもあって楽なものだった。


 もうno筋じゃないんだ! がんばったもんね、ここは報われたところだよ。


 渡されたプラスチック製品の手触りに馴染みがなく、カサカサと音がする白い袋にこわごわ手を入れたフローは、藍の方をちらちら見ながら真似をしてハンバーガーを取り出した。

「えーっとね、これ、ハンバーガーっていうのよ。紙を半分くらいこんな風に外に折って、こうやって齧る、どーぞ」

「え、は、はい」

 フローは恐るおそる齧りついた。

「モガ、ググ、ういすい!」

「でしょ、飲み込んでからでいいよ、ムリしないで」


 藍はにっこり。フローは慣れないおいしさを伝えようとしたが、口に物を入れて開母音を発声するなんて、さすがにできない。二度と一緒に食事してもらえないだろう。フガフガ言うのは諦め、何度か噛み締め、ごっくんと飲み込んだ。

「藍、これ、すっごくおいしいです」

「うん、よかったね。ポテトもあるし、チキンもどうぞ。その塊はお肉だよ。飲み物はオレンジジュースね。ストローをこんな風にコップに差し込んで吸うんだけど、うまくいかなかったら蓋取って直接口つけちゃって」

「え、え、はい」


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