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1.藍は家出している

今回は、心話を示すダブルコーテーション『』が使えないだけセリフの書き分けが難しくなりました。基本、ふたりの対話形式で、順に話しています。同じ話し手が引き続き話すときは、一行空けるか、相手の名を呼ぶように注意しました

 

 はー、やってられるか。


 そもそも藍は、いわゆる巻き込まれ召喚でこの世界に来た。紆余曲折というほどでもないがそれなりのイベントがあって、ちゃんと日本に帰ることができた。


 だが、また来てしまった。今度は自分の意志で来た以上、準備もしたし、訓練もした。だが、努力は報われるとは限らないのである。ここを去った時から状況は大きく変わっていて、サポートが得られず、あっという間に忍耐限界線を突破、さっさと家出した。

 最初の召喚のとき使った”キャンプ地“にあの時張ったワンタッチ・イベントテントを張り直し、相変わらず”ネットショッピング“で水・食料から始まるすべての必要品を手に入れている。


 前回、召喚直後から二カ月近くイベントテントで暮らした。野獣を恐れて直径十五メートルほどの歪な円形にネット柵を張り回してテント地とし、柵の外に種々の蔓植物を植えていた。あれから一年半、蔓植物は隆々と繁茂し、ネットを張り回して作った柵の高さを大きく越えて木々にまつわりながら立ち登り、“地球産蔓植物の大群生地”を形成している。


 外来植物による在来植物層の浸食にあたるのだが、OK?

 まあ、異界から人を召喚しようというのだから、その程度の覚悟はあるんだろう、たぶん。


 思えば前回は三年ヒッキーあがりで、筋力なんて洗濯物を干す程度しかなく、コンクリートブロックひとつ運ぶのも大仕事だった。 no筋であった。

 いたく反省し、日本に帰ってからは散歩から始めてエクスサイズに進み、異世界に再び来るかどうか決めるために、貴族制とアングロサクソン人種に囲まれた生活を実体験しようと行ったイギリスでは、ボクシングフィットネスにも通った。ジムで知り合った女性に、遠慮がちに「karateはできるか」と聞かれて、クリリンの真似をして見せたのも懐かしい。結構笑いは取れたのだった。


 藍は努力してきた。だが、群れに交じってどんよりと生活していればなんとなくそれなりに形が付き、社会システム自体が支えてくれる日本ライフと、上位貴族の養女、王位継承権所有者の婚約者として近い未来には統治の一端を担うべく生きるこの世界では、そのあたり全体が、ド、ドヒャーというほど違ったのだ。



 そりゃそうだぜ、藍!


ハンス・ローエングリムは、気楽に、本人はできるつもりで、お守りしますとかなんとか耳触りのいい言葉で藍を口説いたのだが、そりゃまあ、ハンスは現代日本人がどんなに安全で便利、清潔な社会を築いているか知らないからねぇ。

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