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即興短編

みんなやってるだろ!

掲載日:2025/07/04

 電車の中で、元気そうなおじいさんが、足を伸ばして横向きに席に座っていた。


 車内はそこそこ混んでいて、吊り革に掴まって立っているひともいくらかいる。

 仕事帰りで疲れていた俺は、自分が座りたいこともあって、おじいさんに声をかけた。


「あのぅ……」


「なんだ?」というように、睨まれた。


「一人で三人ぶん、独占されてますよね?」


「ハァ!? それがどうした!?」という顔をされた。


「ふつうに座ってもらえたら、あと二人そこに座れるんですけど……」


「アァ!? ふつうだと!?」

 ようやく声を出された。

「これがふつうだろ!? みんなやってんじゃねェか! 見ろ!」


 見ると、確かにみんな横向きに座っている。三人ぶんのスペースに足を伸ばして楽チンそうにしている。

 老人や妊婦さんはみんな席に座っているので、立っているのは元気そうなひとばっかりだった。


「テメェが座りてェからって、他人を批判してんじゃねェぞ、若造!」

 おじいさんの口が止まらなくなった。

「楽なのが一番だろうが! 大体俺は年寄りだぞ!? 年寄りが優先で席に座ってて何が悪りィ!?」


「でも……」

 俺は口ごたえした。

「みんながふつうに座ってくれれば、今ここに立ってるひといないと思うんですけど……」


「みんなやってることがおかしいって言うのか! テメェ、自分の言うことが一番正しいって思うタイプか! ……おい、兄ちゃん!」

 おじいさんが俺の隣に立っているお兄さんに声をかけた。

「兄ちゃん、今、自分が立って乗ってることをおかしいと思うか!?」


「いえ、僕、すぐに降りるんで、進んで立ってるんです」

 お兄さんはにっこりと、そう答えた。


「ほら見ろ!」

 おじいさんが後ろ盾を得て、強くなった。

「みんなやってることにオマエも合わせろ! 自分だけが座りたいからって他人を批判すんな!」


「すみません」

 俺は大人しく、頭を下げた。




 おおきな駅で電車が止まると、乗客が大量に降りはじめた。

 出口の前をスマホに夢中なひとたちが立って塞いでいる。それを邪魔だなんて言うひとは誰もいなかった。だってみんなやってるから。

 誰もがスマホ・ウォールの狭い横をすり抜けて、ちびちびと降りていく。

 俺はその駅で降りるわけではなかったけど、駅員さんがちょうど通りかかったので、気を強くして、みんなに言ってみた。


「出口の前、開けてくださーいっ」


 すると駅員さんが俺のほうを見て、けしからんものに注意をするように言った。


「何を偉そうに言ってんだ、オマエ! みんなやってることに従え!」





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― 新着の感想 ―
 アハハ~、お年を綺麗に重ねる方と、そうでない○●って、おられますよねー。  判るように、目で見えない障害が有ります、のグッズ展開をしました~~。  私より、絶対元気な方、座ってるから☆★☆  …
 ルールのつくりかたにはふた通りあって。 ・公平、効率的、こうあるべきというもの ・慣習や大多数のあいだにひろまってるやりかたをスタンダードとするもの  成り立ちが違いますね。  後者には、「悪癖」…
正論よりも数が正当性を主張しているなあ……。 こういう人は自分がその立場になった時の動画でも見せないと、基本的に動じないんだよ。 まあ、駅員さんがいるから、と気を大きくするのも何だが。
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