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バベルの塔へ  作者: 背骨
3/10

3 シロクマの部屋

「ここから行くといい」


 ジョニーがパソコンを操作すると、壁が開いてそこに通路ができた。


 僕はコクとうなづいてその廊下を歩きだした。


 白いまっすぐな廊下が無限みたいに続いている。廊下の左右の壁には、ぶぞろいな間隔で扉が並んでいる。その扉の色も形も材質もバラバラだ。小人サイズの木の扉もあれば、天井すれすれまである金属の扉もある。


 廊下は、どこまでも、どこまでも、どこまでも続いていた。このまま歩き続けても、どこにもたどり着けないんじゃないか?


 僕は立ち止って、ひとつの扉を見た。赤い鉄の扉で、耳を当てると、わずかに物音が聞こえる。思い切ってそのドアをノックした。


「どうぞ」


 中から低いバリトンボイスの返事が返ってきた。


 ドアを開けると、そこは部屋になっていた。天井も床も壁も真っ白な部屋。部屋の中央には真っ赤なソファが置いてあり、そこに巨大なシロクマが腰かけて、目の前の白黒テレビを見ていた。テレビは古いブラウン管で、西部劇が映っている。


「そんなところに立ってないで、こっちに来ればいい」


 シロクマはテレビ画面を見つめたままでしょう言った。僕は言われるがままに部屋に入った。背後で扉が勝手に閉まる。


「生首少女の体を探しているんだ」


「死体愛好家ってわけだね」


「そういうわけじゃないんだけど……」


 シロクマはちらりと横目で僕を見た。手には赤ワインのグラスを持っている。彼の前には引くテーブルがあり、その上には人間のバラバラ死体があった。どうやらこのシロクマは人間を食べるらしい。


「ゆっくりしていってくれたまえ」


「いや、探し物はここにはないらしいから僕はもう行くよ」


 テーブルの上の死体は男のものだった。僕が探しているのは少女の体なのだ。僕は回れ右をして扉を開けようとした。しかしどんなに押しても引いても、それはびくともしなかった。


「はっはっはっは」


 シロクマは、大口を開けて笑った。手に持ったワイングラスから、真っ赤な液体がその白い腕にかかったが、全く意に介してないらしい。


「君はもう逃げられないよ」


「なんだって?!」


「君は私のおやつになるのだ」


 シロクマが立ち上がって僕の前にやってきた。とてもでかい。頭は天井すれすれだ。このままでは僕は食べられてしまうぞ。どうにかしないと……。


 打開策を求めてポケットに手を突っ込んだ。するとそこには、宅配便の箱を開けるために使ったカッターナイフが入っていた。僕はカッターナイフでシロクマを斬った。


「うぉおおおおお! 私の皮膚に傷をつけおったな! ゆるさん! ゆるさんぞおおおおお!」


 シロクマの咆哮。おしっこちびるぐらい恐ろしかった。


「焼け石に水だ!」と僕は叫んだ。そこの言葉が合言葉だったのか、壁がごごごごと音を立てて開き、そこに上へ向かう階段が現れた。


「しまった!」とシロクマは叫んだ。


 僕は一目散に階段を駆け上がった。シロクマは、追っては来なかった。


 階段を駆け上り、地上に出た。


 そこは、夜の駅前だった。


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