3 シロクマの部屋
「ここから行くといい」
ジョニーがパソコンを操作すると、壁が開いてそこに通路ができた。
僕はコクとうなづいてその廊下を歩きだした。
白いまっすぐな廊下が無限みたいに続いている。廊下の左右の壁には、ぶぞろいな間隔で扉が並んでいる。その扉の色も形も材質もバラバラだ。小人サイズの木の扉もあれば、天井すれすれまである金属の扉もある。
廊下は、どこまでも、どこまでも、どこまでも続いていた。このまま歩き続けても、どこにもたどり着けないんじゃないか?
僕は立ち止って、ひとつの扉を見た。赤い鉄の扉で、耳を当てると、わずかに物音が聞こえる。思い切ってそのドアをノックした。
「どうぞ」
中から低いバリトンボイスの返事が返ってきた。
ドアを開けると、そこは部屋になっていた。天井も床も壁も真っ白な部屋。部屋の中央には真っ赤なソファが置いてあり、そこに巨大なシロクマが腰かけて、目の前の白黒テレビを見ていた。テレビは古いブラウン管で、西部劇が映っている。
「そんなところに立ってないで、こっちに来ればいい」
シロクマはテレビ画面を見つめたままでしょう言った。僕は言われるがままに部屋に入った。背後で扉が勝手に閉まる。
「生首少女の体を探しているんだ」
「死体愛好家ってわけだね」
「そういうわけじゃないんだけど……」
シロクマはちらりと横目で僕を見た。手には赤ワインのグラスを持っている。彼の前には引くテーブルがあり、その上には人間のバラバラ死体があった。どうやらこのシロクマは人間を食べるらしい。
「ゆっくりしていってくれたまえ」
「いや、探し物はここにはないらしいから僕はもう行くよ」
テーブルの上の死体は男のものだった。僕が探しているのは少女の体なのだ。僕は回れ右をして扉を開けようとした。しかしどんなに押しても引いても、それはびくともしなかった。
「はっはっはっは」
シロクマは、大口を開けて笑った。手に持ったワイングラスから、真っ赤な液体がその白い腕にかかったが、全く意に介してないらしい。
「君はもう逃げられないよ」
「なんだって?!」
「君は私のおやつになるのだ」
シロクマが立ち上がって僕の前にやってきた。とてもでかい。頭は天井すれすれだ。このままでは僕は食べられてしまうぞ。どうにかしないと……。
打開策を求めてポケットに手を突っ込んだ。するとそこには、宅配便の箱を開けるために使ったカッターナイフが入っていた。僕はカッターナイフでシロクマを斬った。
「うぉおおおおお! 私の皮膚に傷をつけおったな! ゆるさん! ゆるさんぞおおおおお!」
シロクマの咆哮。おしっこちびるぐらい恐ろしかった。
「焼け石に水だ!」と僕は叫んだ。そこの言葉が合言葉だったのか、壁がごごごごと音を立てて開き、そこに上へ向かう階段が現れた。
「しまった!」とシロクマは叫んだ。
僕は一目散に階段を駆け上がった。シロクマは、追っては来なかった。
階段を駆け上り、地上に出た。
そこは、夜の駅前だった。