10親しみやすさ
そうだ。
「リルさん。先程はカレン先輩たちから庇ってもらって助かりました」
俺がそう感謝を伝えると、ここにいる人達全員が疑問符を浮かべたのだ。
「リルって誰〜?」
えっ
「やだな。そこでお茶を飲んでる人がリルさんですよ」
今日の早朝にそう自己紹介を受けたんですけど…という言葉は、Chapさんが嫌悪感を表に出しながら「こいつはジル」と衝撃的な内容を暴露することで続かなかった。
「わはは!相変わらずジルは新人を揶揄うのが好きだな」
伊吹さんは爆笑して、Chapさんは特定の相手に幻術を見せるなんて魔法の無駄使いでしょと言う。
「はぁーもう少し持つと持ったんですけどね」
その言葉と共に肩をすくめたジルさんが姿を現したが、ちっとも残念そうには見えなかった。
どうやらジルさんは俺を驚かせるために昨日からこの計画を立てていたとか。伊吹さんはそんなジルさんの様子を見ながら笑みを深める。
「モネ、気にするなよ。これもこいつなりの歓迎の一環だからさ」
スイさんも苦笑しながら「そうだね~この通りジルはどうしようもない奴なんだよ」と辛口コメントを述べた。
(この出来事で少しジルさんの性格が分かったような…)
こうして俺が何とも言えない気持ちになっているとジルさんが目をギョロっとさせて「モネさん。実際に魔法を見た感想は?」と唐突に魔法の感想を聞いてきた。
それ今、聞くか?と思いながら質問に答える。
「えっと、リルさんは全体的に白い印象があったので全然、ジルさんだとは気づきませんでした」
「素直だな~確かにジルに幻影魔法を使われるとこいつを認識できなくなるから、その反応も分かる気がするな」
伊吹さんが納得したよう言葉を発する。
それを聞いたジルさんは「このように魔法が発動されていることが分からないと色んな悪戯が可能です。面白いでしょ?」と俺に同意を求めてきた。
その行為は賛同できないけど…魔法自体は面白そうだ。
それを伝えるとジルさんは手を広げてこう言った。
「どうしても魔法を教えてほしいと言うなら、教えることもやぶさかではありませんよ?知りたいのでしょ?」
俺は少し戸惑いながらも頷く。教えてほしい。異世界と聞けばJapanは真っ先に魔法が定番だと言うほど魔法という言葉は魅力的なのだ。
「おっそれはいいな。ジルは嫌になるほど懇切丁寧に魔法について教えてくれるから魔法の先生に向いている」と伊吹さんは俺が講義を受けるのは賛成派だった。
逆にChapさんは「こいつに魔法を教わったら性格が悪くなるよ」と俺に忠告をした。
スイさんにも「まぁジルが教える内容は面白いけど、時々悪戯が過ぎるから気をつけたほうがいいよ」と心配されるされる始末。
この人、ある意味信頼されているんだなと俺は3人の話しを聞いてそう感じるのであった。
そして、ジルさんは意気揚々と立ち上がりーー
「心配はいらないですよ。異世界人がどんな魔法を覚えるかちょっとした探求心で教えるだけなのでモネさんの寝る時間は確保します」
そう意気揚々と言うが、その笑顔はどうにも信用ならない。まるで“最低限の睡眠は確保する"けどそれ以外は魔法に費やすと言いたげな顔をしている。
「寝る時間“だけ”って、それ以外全部魔法漬けになる未来が見えるんですけど」
「うん。それは正しい直感だよ~」
俺の疑惑にスイさんが即答した。
_____ミニ雑談_______
「岩鉄の爺ちゃんがキッチン作ってくれなかったのだー」「そうなのだー」
俺様たちは現在、クランマスターの許可を得てから来いと岩鉄爺ちゃんに工房を追い出されたので、マスターの執務室に来ている。
「それにしてもマスターはさっきから何を見てるのか俺様は気になる」
「俺様も気になる」
マスターは空中で何かを見ている様子。聞くところによると、Chapが上げる動画と写真を事前確認しているそうだ。
「カレン、メレン」
「「何~マスター?」」
俺様達はマスターがキッチンをホームに増築してくれるまで、ここを動かないぞと意思を表明する。
「これを」
ん?なんだろう。マスターからたくさん文字が書かれた紙を一枚貰ったのだ。
「ここなら一部屋、改築しても問題ない」
ぱぁあ❀
流石マスター。話が早い。
この場所は広さもあり、冷蔵庫やオーブン?という物体も十分置けると言われた。そして改築費6割はクランが負担してくれるとマスターは言う。
俺様達も我儘を叶えるのに対価が必要なことは分かるので、大人しく5枚以上の金貨を払った。
「よし早速、岩哲に頼もう」「そうしよう」
こうして双子はホームを走り回るのであった。