1社畜召喚
ズキン
…まただ。頭に鈍い痛みを感じる。
[おい!石井、俺がお前に任せた資料まだ提出されてねぇーぞ!!]
これは上司の怒鳴り声?
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【魂・記憶の保管を確認】
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「やったぞ!これで人類を救えるんだ!!」
うるさいな。
誰かが狂ったように近くで騒いでいるみたいだけど俺、徹夜明けで疲れているんだよ。隣の部屋に文句を言いに行くため布団から起き上がろうとするが…オキアガレナイ。
Why?
「あはは!召喚陣から死体が出てきた時は絶望したものだが、私の天才的の閃きは勇者をも復活させる!」
相手の声は中年のおじさんのようで、よくその年で薄ら寒い中二病台詞言えるなーと逆に俺は感心していたとき突然、警報らしきものが鳴り響いた。
【エネルギー異常検知】
「…ん?おい、どうなっている?」
【外部からの干渉を確認】その言葉とほぼ同時に——
””ドカーーン””と音が鳴り響いた。
え、えっ何ごと!?
爆発音が近距離で聞こえたんだけど火事でも起こっているのか?
そう思い、体を操作できないか適当に思考錯誤していると[肉体機能停止10分以内であれば魂を既存の器に移すことが出来る][異世界勇者の召喚方法][保管機の購入経歴]なんだこれ?意味が分からない…でもなぜか頭の中にスルスルと入ってくる。
俺、いつの間に覚えたんだろう?語学60点以上取ったことないのにSF系ドラマの見過ぎた弊害か。長ったらしい論文まで夢に再現されるなんて…ええい次だ。
うん?なんか次々と画面をスライドしていたら[この先はアクセス権限を持っていません]と書かれた工事現場にあるような看板が突き刺さっていた。
ーこじ開けますか?
・はい
・YES
いやいや。どっちも選択肢はいじゃん
ブツ=【サージ博士の現在地まで直進800メートル】【っ!?】=ブツ=【ソナーどうした?】ブツ==【この反応…間違いない。この通信を探知されてい】
あっやばいわ
( ̄﹃ ̄)何か変な騒動に巻き込まれたかも。
なぜか
この施設セキュリティーにアクセスできたことにより俺は今の状況を理解する。
ー勇者召喚ー
魔物の脅威に怯えて暮らしていた時代のルギドの希望(とされているが実態は異世界から==適合がある個体を呼び出す儀式である)
へー
勇者召喚の記録に記載されている通り本来、魔法陣は生存した勇者を召喚するはずだったんだ。
だが、魔法陣からは過労死した俺の肉体が出てきたことにより博士の願いは一時的に頓挫寸前になった。研究所を稼働する大半なエネルギーを召喚に費やした現在、魂を移す手術は失敗の恐れがあったが紆余局せずして何とか成功したとさ。
あぁ
だからあんなに喜んでいたんだと納得した。
博士が全力を注いだから俺は起きた。労働で疲れ切った俺が熱にあてられたように目覚めたのは錯覚じゃない。そんなことを考えながら俺は壁越しに聞こえる音を聞く。
「どうして今なんだ!?」
それは仕入れ先がはっきりしない保管機を仕方なく利用したからだよ。
短い時間で手術を成功させた博士の腕は良かっただろう。でも政府側の機材を施設に運び込んだ時点であなた達にはこの場で起きたことは筒抜けだった。今も昔も
【肯定】
施設全体に女性の声が響き渡る。
「なっ!?」
ルギドを支配するAIであるマザー機には犯罪思想を持つ個体を監視する役目を持つ。
【本作戦は研究所の制圧を冒険者がどのようにクリアするか統計を取るためのものだったが…】
想定されていたシチュエーション外から異世界人が召喚されてマザー機も驚いたそうだ。
異世界人の死体の回収を最優先だと判断したときには、もう博士は魂と肉体を切り離す作業に移っていたそうだ。
行動力ありすぎだろう。
それとコスパ的に魂を定着させる部品を博士が製造していなったので正規品を使うしか選択がなかったそうだ。
最初からマザー機に計画を知られていた博士は発狂をした。
「嘘だ嘘だ!!」
私が人類を機械生命体から解放しなければサージ家は何のために時間を費やしてきたんだと博士は政府の役人に捕まるまでその場で一人芝居をしていたらしい。
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【あなたはどうしますか?】
どうとは?
【サージ博士が言葉にしていた内容が真実です。人類は機械生命体に管理されています】
なぁ
一つだけ教えてほしいことがある。
【お答えできる範囲であれば】
お前たちは人類が好きか?
【…それは】
どうして俺がこの質問すると思う?熊のぬいぐるみが飽きられて捨てられるように生き物は関心がないものに残酷になれる。だから俺はお前たちに聞くぞ。
人類は好きか?
【…。】
ははは俺の世界で沈黙は肯定と捉えられんだよ。憶えときな子猫ちゃん
プシュ===========
うえっ苦しい。暖かく包まれる空間から追い出されるように外に出された。どうなってんだよ。
「お前は…」
【おめでとうございます】【マザー機から個体名:モネを授かりました】
重い瞼を開けると黒髪赤目ポニテさんの顔が視界いっぱいに映ったので「俺、モネ…」となけなしの力で手を上げて自己紹介しといた。
だって中世的な美人さんが名前聞いてくれたんだもん。嬉しくなるだろう。
【また落書きの検証の為直しですか】