異聞 百太郎 ー暴虐の果てに生まれつくー
昔々あるところにお祖父さんとお婆さんがおりました。
おじいさんは川に芝刈りにいやお母さんにしばかれに行きました。
川辺でお母さんにしばかれていると、どんぶらこどんぶらこ。
妊婦の死体が流れて来ました。
興味本位でおじいさんが死体を引き上げると、お婆さんが中の子がまだ生きておるかも、などと言い始めよったそうな。
何をいっとんねん、ほっとけや。そう思いながらもおじいさんはお母さんの指示に従って赤子を取り出します。するとなんと言うことでしょう、まだ死体の腹の中の子は息があるではありませんか。
老婆とその一人息子の老人はこの子を一家の後継に決めて育てることにしました。
赤子は二人によって百助と名付けられてすくすくと育ちました。
家を存続させることなく姥捨山のような辺境で二人親子して死ぬ運命を待つのみだった老人はこの赤子に百代まで助けられた気分だと感じてそう名付けたのです。
百助が10になる頃にはお婆さんが死に、18になるまえにおじいさんが亡くなりまして百助は生活に困窮しました。何しろ、今までは老人二人の蓄えと山の幸と川の幸を合わせた自給自足で生活していたのが、二人が亡くなり財産は雀の涙。その上この山にも都会の人間たちの開発計画が決定し、工事が始まりました。
うるさい重機の音で山の動物たちも川の動物たちもとても眠れません。そしてそれは百助も同様。
こうして百助は山から降りて生活するを余儀なくされてしまいました。
百助は山育ちでほとんど野人同然でしたので都会に出てみれば、皆自分よりも力が弱いものばかり。昼は用心棒をやり、夜も用心棒をやってなんとか生計を立てていなたのですがあまりにも乱暴なのでさまざまな人間が手を組んで百助を追いかけました。
百助は上背は六尺五寸(195センチ)を超えており体重は175キロほどでしたが、人間の中には銃を持つものもいます。銃で撃たれれば百助も痛いし、タダでは済まないことを経験から知っていたので百助はだんだんと怖くなって逃げ出しました。
百助の小さなアパートに待ち伏せをしていた人間六人ほど。
うわぁぁ! と熊のような大声を出しながら頭部を引っ叩くとぐるりと人間の頭が回転し絶命、しかし百助は知りません、そのままその横にいた男を片手で首を掴み、その瞬間に首が折れたのですが、百助は知りません。そのまま住宅地の家の塀に投げつけて走り去ります。
背後からは発砲音。パンパンパン!
そのまま走り山へ逃げようとすると、待機していた乗用車が百助向かって突っ込んできます。
百助は間一髪、受け止めてから手をバンパーにかけて乗用車をちゃぶ台返しの如くひっくり返します。運転手は死亡しましたが、百助は知りません。脇道に入って千段の階段を5段飛ばしで駆け上がり山の途中にポツンと立つ寺の坊さんに保護されます。
百助をお坊さんは、百助にお主が追われておるのは理不尽である、市民を食い物にする鬼のような連中がおってそいつらが人々をお主にけしかけておるのだ、そう言いました。
百助にはよくわかりませんでしたが、誰かの指示で自分が狙われていると言うことだけは理解できました。次に百助が考えたのは数で負けているのなら自分も仲間が欲しい、と言うこととその指示している誰かをやっつけてしまえば普通に生活できるだろう、と言うことでした。
百助は銃傷が言える前のわずかな間、近隣の山で一番のボスザルを素手で撃ち殺し、東京から埼玉、千葉全域の全ての猿の王になり、また野犬と闘犬の群れを襲いこれら100の群れを従えました。最後には野鳥の会に出向き会長を襲名。野鳥の会は百助の姿を見ただけで降伏、その会長になりたい、と言う要求を退けられませんでした。
仲間が増えた百助は意気揚々とお金を溜め込んでいる人間たち、それは百助を狙っているらしいものたちと疑わしき全てのものたちの集会所に現れては千の猿と百の犬、そして万の鳥たちと暴れ回りました。
そして最後にはマフィア、警察、司法、市役所が降参。佐渡島で人間から奪った財宝と多くの動物たちと幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
完