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94 アピオスとカッシアの能力

「やっと家だー!」


自室に入るなり、両手を上げて駆け出し、ベッドにダイブした。

本当なら屋敷に着いた時に叫びたかったが、みんな居たので平静を装っていたのだ。

うつ伏せから上向きにゴロンと寝返り、大きな息を吐き出す。


「はぁ、のんびりと遊びたくて旅行に行ったのに、なんでこんなにも疲れてんのって話でさ。あー、やだやだ。一体、昔に何があってノワール中心の騒動になるわけ? しかもさ、アスワドさんはノワールを中心とする事件に巻き込まれたってことでしょ。あー、マジで知らんわー。ノワールの記憶にそんなものないってーの」


違和感を覚え、ガバッと起き上がった。


「あれ? 今、私、けっこうな私よりの話し方しなかった? というか、ベッドに飛び乗るって私よりすぎない?」


なんて口にしながらも、「あ、でも、ずっと心の中ではこんな話し方だったかも」と体を後ろに倒した。

再びベッドに寝転び、天井を見つめる。


「私の我の強さよ。時間が経つにつれて前よりも強く出てきてるのかもなぁ。ノワールとは混じり合っているから消えた消えてないって悩んだりは今更しないけど、子供っぽくならないようにしないとな。って、違うか。今までなかった交流をして、性格が変わってきたって説なのかも。どんな人と付き合うか、どう向き合うかで性格って変わるもんね。それにしても、疲れたー」


なんてね、体は全く疲れてない。

言いたいだけ。

はい、ごめんなさい。

って、誰に謝ってんだか。


目を閉じ、深呼吸するようにゆっくりと深く息を吐く。


ランちゃんには、アスワドさんの森から直接ネーロさんの屋敷に向かってもらった。

他の人たちの屋敷は、子蜘蛛たちが調べてくれることになっている。

特にカーラーさんの屋敷は厳重にとお願いしている。


ベルデを閉じ込めたアスワドさんが変装をした誰かなら、魔女全員が怪しい。

でも、もし幻覚なのだとしたら、1番怪しいのはカーラーさんになる。

色欲の魔女は体を交じらわせる時に、相手に拒否させないために幻覚を見せることがある。

それはカーラーさんだけではなく、眷属のサキュバスとインキュバスもできる。

まぁ、ベルデが見破れなかったという点で幻覚だったと思っている。


カーラーさんはネーロさんの味方なのか。それとも、手足として使われているだけなのか。

はっきりさせておきたい。

もしかしたら手足として使われるのが嫌で、私をけしかけているだけかもしれないもんね。

だったら、自分の力で抜け出せよと思わなくもないけどね。魔女なんだもの。


このまま少し寝ようかなと頭の中を空っぽにしようとした時、ドアがノックされた。

私の部屋の場所を知っているのは、眷属たちしかいない。

これがポプルスなら無視をしたところだが、シーニーたちなら居留守を使うのは失礼すぎる。

「よっっしこちゃん」と呟きながら体を起こし、ドアを開けた。


「シーニー、どうしたの?」


「ノワール様、休憩中にすみません」


「そんなこと気にしなくていいわ。何かあった?」


「実は、アピオスとカッシアが森の中を歩きたいと言っていまして……よろしいでしょうか?」


「いいわよ。でも、必ずシーニーとパランが一緒に行くようにしてね」


魔女の森にも魔物はいる。

ただ本能で怯えているのか、はたまた魔女の森特有の事象なのかは分からないが、魔女や眷属を襲ってこようとはしない。

だから、森の中を歩くのなら誰かが一緒じゃないと危ないのだ。


「もちろんです! ありがとうございます!」


花が咲いたように微笑むシーニーの頭を無意識に撫でていた。

真っ赤になったシーニーが、「あの……」と恥ずかしそうにしている。


「そういえばポプルスは? 一緒に行かないの?」


「はい。昼寝をすると言っていました」


「そう。あ、シーニー。アピオスの様子を注意深く見ていて」


「分かりました」


「よろしくね」


シーニーの頭をもうひと撫ですると、口元を緩ませたシーニーは小さくお辞儀をしてから去っていった。


アピオスの謎の声が聞こえる現象は、次の日の夜というより、私とアスワドさんたちが森に放り出された直後に聞こえなくなっている。

たぶんというか、ほぼ確定でアピオスが聞こえていたのは力を失くした樹々たちの悲鳴で、原因の幹を取り除いたから消えたんだろう。

そして、カッシアに詳しく尋ねなくてはいけないが、カッシアが聞こえているのは元気な樹々たちの声なんだと思う。

アピオスは負の感情を、カッシアは正の感情を捉えることができるのだろう。


これについては、力をコントロールできるようにしてあげないとなと考えている。

アピオスたちの一族のことも調べないとと、答えが欲しい問題が多くて頭を抱えそうになる。


「とりあえず、ポプルスが寝ている間に片付けてこようかな」


首や肩をほぐす様に回し、窓に向かって歩く。

窓を開け、天井に顔を向けた。


「子蜘蛛ちゃーん、いるー? 大丈夫だと思うけど、もしもの時はポプルス担いで逃げてねー」


森と屋敷、両方に結界があるから心配はしていない。

それに、子蜘蛛が私の部屋にまでいるかと問われたら、「いない」と答えるだろう。

でも、シーニーたちを呼び寄せるのと同じで、誰宛てかを添えてから話せば届くと思っている。


こういうのは気休め程度でいいのだ。

だって、結界は破られないという自信しかないのだから。


「よし、行こう。って、その前に研究室に寄らなきゃな」


飛び立とうとしていた窓を閉めて、ドアから部屋を出た。




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