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71 真相

「ポプルス。ノワールやカーラー以外の魔女にいつ会ったんだ?」


「えー、んー、残るはシャホルちゃんだけど、俺シャホルちゃんには嫌われてるからなぁ」


そこはきちんと分かっていたのね。

いつも馴れ馴れしいから気づいていないのかと思ってたわ。


「あなたの太客だったわよ。私はそこで見かけたから知ったんだもの」


「俺の太客にいたの? 誰?」


「本当に分からないの? 『結婚してほしい』『付き合ってほしい』『身請けする』って申し入れあったわよね?」


「んー、有り難いことに何人も言ってくれたんだよね。誰だろう?」


魔女が力技じゃなくて正式に申し込んでいたことに驚くべきだったが、ポプルスの言葉の方に一驚してしまった。

だって、もし受け入れていたのならポプルスは今ここにいないのだから、全部断ってきたということになる。

会話がひと段落つくまで静聴しているつもりだったのに、ついポプルスに尋ねてしまった。


「え? ポプルス、あなた身請けとか断ってきたの? どうして? 一気に借金返せるじゃない」


「一緒にいたいっていう気持ちがなかったからだよ」


上の空のように斜め上を向いて考えていたポプルスが、突然訝しげに見てきた。


「もしかして、ノワールちゃん。俺が気持ちがなくても女の子と付き合えるとか思っていない? ましてや人生を共にする結婚をできるなんて思っていないよね?」


いやー、思ってたけど、正直に言えない雰囲気だわ。

だってね、めっちゃ軽いじゃない。

ノリで付き合えるタイプにしか見えないのよ。

でも、私の髪の毛を欲しがって、プロポーズをされたと勘違いして泣いてたものね。

ゴリゴリの重い人だったわね。


「……思ってないわよ」


「今、変な間あった! ひっどー! 奴隷時代は仕方ないけど、俺、好きな人としかしないからね! って……ん? 俺、ノワールちゃんに娼館で働いてたって言ってないよね?」


「そうね。でも、知っているわよ。アピオスたちの家庭教師を調べないわけにはいかなかったからね」


「それもそっか。ノワールちゃんが俺を俺として見てくれるなら何でもいいよ」


本当はオレアさんの記憶を読み取った時に知ったんだけどね。

ここでそんなことができるって打ち明けたくないからさ。

言わなくてごめんね。


「ポプルス。脱線はそろそろいいか? 俺としてはお前に惚れているという魔女を知っておきたいんだが」


「ごめんごめん。でも、やっぱり心当たりないんだよねぇ。ねぇ、カーラーさん、一体誰?」


「仕方がないわね。エレって女の子がいたでしょ?」


「いた。って、エレ? あのエレだよね?」


「そうよ。胸がつるつるぺったんこのエレよ」


いや、カーラーさん、その言い方は……

本当に嫌いなんだろうなぁ。


「ソレが最古の魔女、傲慢のネーロよ」


は? ネーロさんがポプルスに惚れてる?

誰だろうとは考えていたけどネーロさんだったとは。


「最古の魔女? あの子、すごい子なの?」


ポプルスに問われたので、「あの子って……」と本当に魔女を恐いと思わなさすぎだなと呆れた口調で答えた。


「ネーロさんは治癒魔法や薬の第一人者よ。あなたたちが1番敬う魔女なんじゃないの」


「そうなの? 全然知らなかった。じゃあ、今ある薬の作り方を普及したのはネーロちゃんなの?」


「そうよ」


「へー。そっかー」


反応薄くない? ポプルス、医者だったんでしょ?

だったら、もっと感動するもんじゃないの?


「それで、カーラーさんはネーロちゃんが嫌いだから、意地悪したくて俺を囲おうとしたってこと?」


「簡単に言えばそうなるわね」


笑顔で頷くカーラーさんに、ポプルスはさっきと同じように興味なさげに「そっかー」と言っている。


「じゃあ、さっき言ってた証明は、ネーロちゃんに見せたいから欲しいってことだよね?」


「そうよ。もう知っているとは思うけれど、突きつけられたら悔しいでしょう」


「うーん……それってさ、刺激をしてノワールちゃんが危険になるとかはない?」


私も目を丸くさせてしまったけど、カーラーさんは数秒止まった後お腹を抱えて笑い出した。


「これほど愉快なことはないわねぇ。ポプルス、あなた本気でノワールが好きなの?」


「そうだよ。それがそんなにおかしい?」


「どうかしらねぇ。ただ私がこの情報を提供した見返りは、ノワールに嫌いな魔女を泣かせてもらうためよ。分かるかしら? 私は存分に泣かせたいのよ」


「結局は、ノワールちゃんは危険になるってこと?」


「さぁ? そこはノワールの力量次第よ」


ポプルスが、腕を組んで顔を歪めながら唸っている。

そんなことをしたところで、ネーロさんとやり合うことをもう拒否することはできないのに無駄な抵抗である。

そもそも喧嘩する相手を調べに来ているんだから、ただの悪あがきでしかない。


「私が知りたかった答えの人物が、ネーロさんということですよね?」


そこをきちんと聞いておきたい。

長い話し合いをしているが、カーラーさんははっきりと言っていない。

やり合った後に「そんなこと言っていないわよ」と知らないふりをされて、しかもネーロさんじゃなかったら目も当てられない。


「そうよ。私に言ってきたもの。『オレアに魔法をかけろ』ってね。それに、オレアはポプルスに付き纏っていたでしょ。オレアを使い捨てるくらいするわよ。邪魔なんだから」


「……オレアさんに魔法をかけたのはカーラーさんなんですか?」


「断ったわ。そうしたら『グースがいつまでも安全だとは思うな』ですって。何をする気なのか傍観していたら魔物を操るだけなんてね。あれはあれで興醒めしたわ」


「まさか……街を襲おうとしていた魔物たちは、俺を殺すためだったのか?」


「そうみたいね。結界があるのに、どうして魔物を使おうと思ったのか謎なのよねぇ」


えー、うーん……私的にはオレアさんの事件とクライスト国の魔物襲撃事件とは時間が経ち過ぎていて、魔物云々よりも「なんで?」感が強いなぁ。

やっと操れたからとか、そんなしょぼい理由なわけないと思うのよ。


「まぁ、今回はノワールが結界を張った後だったからよかったわ。だってねぇ、グースは私に何も相談してくれないものね。魔女に伝手はないかくらい聞いてほしかったわ」


「悪かった。もう十分というほど世話になっているからな。これ以上は申し訳なくなるんだよ」


「知っているわよ。何回もそう言われたんだから。でも、もう魔女と分かったんだから遠慮しないでね」


戯れるように軽く告げるカーラーさんに、グースは可笑しそうに笑っている。


「それはそれで恐いな。魔女に見返りを渡せるほど、俺もクライスト国も立派ではないからな」


「気持ちよくしてくれたらいいのよ」


「ああ、分かった。頑張るよ」


聞きたいことを聞け、和やかに話し合いは終わった。

といっても、途中からお酒が振る舞われ、ポプルス・グース・カーラーさんでの卑猥談義が繰り広げられただけだが、カーラーさんの機嫌が損なわれる場面はなかったので上々だったと思う。

「遅いから泊まっていきなさいね」というカーラーさんの言葉に甘えて、グースを残してポプルスと部屋を後にしたのだった。




来週月曜日の更新は1話のみになります。

ポプルスの過去が少しだけ分かります。


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