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69 色欲の魔女

どっちの答えをもらうにしても数分は待つだろうと思っていたのに、ローゼオは1分もかからず戻ってきて「カーラー様のところまでご案内いたします」と頭を下げてきた。

客人として迎えてくれるという姿勢に変わったことに、第一関門を突破したと心の中で安堵の息を吐き出した。

だって、話し合いの場を設けてもらえないことには何も進展しない。

成り行きで側に置いてしまったアピオス・カッシア・ポプルスのことが分からなさすぎて、2年半後のお別れに不安がよぎる。


不安? 魔女の私が不安を感じたの?

元の私なら怖くて動けないような時も、ビビって発言できないだろう時も、平然と人を殴った時も、ノワールと混ざってからは波風立たなく冷静だったのに……

そっか。私は本当に3人に情が湧いてしまっているのね。

これはもう2年半後の別れの時には泣いてしまうかもね。


そんなことを、日本の大きな平家のようなカーラーさんの屋敷の廊下を歩きながら考えていた。


通された1室は一面畳で、部屋の奥が1段上がっている。

その壇上で、カーラーさんは脇息にしなだれかかるように座っている。

服装は花魁のようといえばいいのか、すぐに脱がせられるような着物でデコルテや足が見えている。


うひゃー! エッチスケッチワンタッチだよ!

あんなん触りたくなるよ。

一夜のランデブーをしたくなるよ。

まぶくてほの字になっちゃう。


部屋の雰囲気や服装も相まって、衝撃すぎるカーラーさんの妖艶さに一気に感情が昂ぶった結果の感想である。

ちなみに、後ろによろめいてポプルスにぶつかっている。

「大丈夫?」と心配そうに顔を覗き込まれ、「ここにも国宝級の顔が」と大袈裟に仰け反りそうになった時に、冷静さが“すん”と戻ってきた。

もう綺麗に混ざり合ったと思っていたが、大きすぎる驚きがあると顔を覗かせてしまうのだろう。


「大丈夫よ」


「本当に? まだ疲れてるとかじゃない?」


「大丈夫だって言ってるでしょ」


ポプルスの顔を押すと簡単に離れていったが、さっきよりも近い位置に立ち直された。

きっとまたよろけた時に受け止められるようになんだと思う。

本当に優しいんだからとついポプルスの手を叩いてしまうと、幸せそうに微笑んだポプルスが抱きついてきた。


「もう、ノワールちゃん可愛すぎるー! ねぇ、俺のこと好き? 好きだよね?」


「鬱陶しいわね。こんな時にやめてよ」


「いいじゃん。だって、チェルナーはグースにしか興味ないはずだよ」


「それでもよ。離れて」


「えー、イチャイチャしたいのにー」


ポプルスは離れてくれたが、頬を膨らせて手を繋いできた。

視線を送ると、「いいでしょ」と唇を尖らせてきたので、ため息だけで抗議しておいた。


「チェルナー……魔女なんだな?」


グースの重たい呟きは、きっとカーラーさんにも届いただろう。

カーラーさんは少し寂しそうに微笑んだのだから。


「ノワール、お座りなさいな」


「はい、ありがとうございます」


横並びに用意されていた座布団3枚の真ん中に腰を下ろした。

両隣にポプルスとグースが座ると、ローゼオが飲み物を運んできた。


「色男を2人も連れて、何の話をしに来たと言うの?」


「私は連れてくる気はなかったんですよ。でも、2人がどうしてもって言うから一緒に来たんです」


「そう」


扇子を広げて顔半分を隠して見つめてくるカーラーさんを真っ直ぐ捉える。

視線を外すなんてことはしない。

敵意は感じられないが、何が起こってもおかしくはないのだから。


「単刀直入におうかがいします。オレアさんを使って私に攻撃をしてきたのはカーラーさんですか?」


「違うわ。と言えば信じるのかしら?」


「怪しくはありますが、証拠はありませんので信じますよ」


何が面白かったのか、カーラーさんは小さく吹き出し、肩を揺らして笑い出した。

笑い顔は扇子で隠されているが、声からは楽しくて仕方がないと分かる。


「はぁ、頬が痛いわ。ねぇ、ノワール。あなた、そんなだから嫌われるのよ。自覚なさいな」


「誰にですか?」


「本当にねぇ、初めて会った時は私の胸に興味津々で、谷間に指をつっこんでは顔を輝かせていたものね。あなた、あの頃から変わっていないのねぇ」


「変わっていますし、気持ちいい胸をしているカーラーさんが悪いんですよ」


「ふふふ、変わっていないわよ。末っ子の甘えたちゃんは純粋ゆえに愛された。だから、嫌われたのよ」


愛されたから嫌われた?

それがオレアさんを使って攻撃してきた理由だっていうの?

でも、そうしたら今問題の中心になりつつある銀色と金色はどう関係があるの?


「それはヒントですか?」


「答えよ」


「誰がしたのかを知りたいんです。カーラーさんは知っているんですよね?」


「知っているわよ。だからこそ、銀色が欲しいんだもの」


カーラーさんは、妖しく微笑みながら視線をポプルスに動かした。

ポプルスは自分で自分を指しながらキョトンとしている。




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