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45 魔物を調べる

グースと一緒にポプルスを迎えに行くと、「浮気してる!?」と繋いでいた手をチョップされた。

といっても、グースの手首を叩いていたので、私は痛くも痒くもなかった。


帰り道では「どうして繋ぐ必要があったの?」と散々詰められたが、全部無視している。

泣き真似もされたが、一切反応を示していない。

手を繋いでいたことを忘れていた私も悪いが、1度グースが「飛ぶ時につい掴んだんだ」と説明をしている。

これ以上の説明はないのに、色々問われても面倒臭いだけだ。


屋敷に着くと、授業の開始を心待ちにしていたアピオスとカッシアにポプルスを渡し、地下に降りていった。

嫌なことは先に片付けておきたいし、魔物の残骸をそのままにしておきたくない。


「ノワール様、お待ちしていました」


「シーニー、色々ありがとうね」


「いいえ、お役に立てたのなら嬉しいです」


「へへへ」と笑うシーニーは可愛らしい。

薄暗い部屋じゃなく、シーニーの後ろに魔物の死体が無ければ、私の頬も緩んでいたことだろう。


「ノワール様、この死体どうするんですか?」


「調べて何もなかったら、血や目玉とかはコレクションに加えようかなと思ってるよ。何かの材料になるかもしれないからね」


「薬に応用できるんですか?」


「んー、薬には無理じゃないかな。除草剤とか毒とかなら作れそうな気がするけどね」


「除草剤ですか……」


「ん? 欲しいの? 雑草なんて燃やせばいいじゃない」


「私ではありません。アピオスたちが畑の草をどうしようか悩んでいたので、作れたらいいのかもと思っただけです」


「なるほどね。でも、アピオスたちなら火の魔法の熟練度を上げる方がいいわね。巨人族と戦わないといけない除草剤なんて危険すぎるから」


「それもそうですね。火の魔法の訓練方法を考えてみます」


シーニーは、本当に優しい子だ。

毎日忙しいだろうから少しくらいサボってもいいのに、幸せそうに家事・育児・世話をしてくれる。

もしかしたら、本人は今の日々の方が好きなのかもしれない。

引き篭もるノワールの様子をドア向こうで窺うのは、さぞかし寂しかったんじゃないかなと思う。


記憶にあるシーニーよりも楽しそうに話している気がするものね。

うん、やっぱり今度からは、シーニーも一緒に街に行くようにしよう。旅行もいいな。旅行大好きだしな。


「ノワール様の作業が終わり次第、地下の部屋を掃除しますので、ここで待っていますね」


「それなら、座ったら?」


「いいえ! 私のことは気にしないでください!」


そんな高速で首を横に振らなくていいのに。


「じゃあ、手伝って。一緒に作業しましょう」


「いいんですか?」


「ええ、手伝ってくれたら嬉しいわ」


口をニヤつかせないように固く閉じて頷くシーニーが愛らしすぎて、小さく笑ってしまった。


今更ながら、この世界に来て1人ぼっちじゃなくてよかったと思った。

1人でも生きていけるスキルは持っているが、心和やかにしてくれる相手が側にいてくれることは生活を潤してくれる。

シーニーたちのように自分を好いてくれている存在は、心に余裕を持たせてくれる。

イコール、幸せということだ。


シーニーと共に魔物の残骸の横に立ち、手を翳した。


「『サキテシ』」


魔物の残骸がほのかに青く光るが、魔法や魔術の類いは浮かび上がらない。

蝋燭を消すようにふっと息を吐き出すと、青い光は消えていった。


「操られてはいなかったのね」


「しかし、どうして巨人族ばかりが国を襲おうとしたんでしょうか?」


「誘き寄せる魔道具があったんでしょうね。もしくは、地面に魔法式でも描いていたのかも」


「理性を失うほどのですか?」


シーニーが、真っ赤に充血している魔物の瞳を指している。


「異常をきたしている瞳よね」


「はい、目に血が飛んだのかと思うほどです」


シーニーの言葉に、小さく頷いて肯定する。


外から魔物を誘き寄せようとしても、結界が破られることはないから、そこは気にしなくていい。

もし破られたらシャホルさんの暴食の能力だと判明するから、魔女の犯人が確定する。

でも、彼女の口ぶりから彼女は関わっていないと思うから、結界の破壊を心配する必要はない。


となると、気にする点は、人間側に魔女の協力者がいるかもしれないということ。

魔法式なら魔女が書きに来ただろうけど、魔道具なら人間が置いた可能性が高い。

わざわざ魔女が魔道具を置くためだけに行ったりしないだろう。面倒臭いもの。


「人間の協力者か……グースたちを守る手立てを考えないと」


「守るのですか?」


「ポプルスの帰る場所だし、アピオスたちの移住先にいいかもと思っているからね」


「分かりました。先に小蜘蛛たちに伝えておきます」


「そういえば、ランちゃんは今どこの国に行っているの?」


「オレアの故郷だというサラセニア国です。ヒタム様と関わりがあるのか調べに行きました」


「人口の8割が女性の国だったっけ?」


「はい、そうです。ヒタム様を信仰する剣術国家になります」


魔女が信仰対象になっている国もあるのね。

どんな国なのかしら? 気になるわね。


ここはやっぱり今回の事件が解決したら、みんなで旅行に行くべきよね。

知識であるのと体感するのとでは全く違うから、アピオスやカッシアのいい刺激にもなるわ。

私の旅行したい欲も満たしてくれるしね。


旅行は計画している時が1番楽しいを体現するように、前半のローテンションが嘘みたいに元気よく魔物の残骸の仕分け作業をしたのだった。




次話は拗ねたポプルスとのやり取りになります。


読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

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