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35 暴食の魔女

ポプルスとの夜の逢瀬は休みの前日と決まり、ポプルスの部屋で過ごすことになった。

不満を漏らすポプルスに「加減できるなら回数を増やしてもいい」と提案したが、「いつの間にか無我夢中になってしまうから無理」と言われたので、5日に1度のペースに決まったのだ。


何度も繰り返したら少しは落ち着くかと思っていたが、初めての夜から3ヶ月経った今も激しさは変わらない。

全身全霊で愛してくる。

気持ちいいが、少ししつこくて暑苦しい。


そして、昨日も鬱陶しいほど愛されて体が重たい。

研究もせずに1日庭でのんびりしようかなと考えていると、森を覆う結界をノックされた。


しかも、叩かれた場所は上空。

人間の仕業ではないことは、少なくとも空を飛んでいることから分かる。


人が飛べる魔道具は渡り船というものが存在するが、これは国から国に移動する時の手段でしかない。

定められている空路以外を飛ぶことは許されていないのだ。


ここにきてようやく動いた事態に、否応にも気持ちが引き締まる。


「あれ? やっぱりノワールちゃんも一緒に遊ぶ?」


庭に出ると、ポプルス・アピオス・カッシアが水魔法で遊んでいた。


教え終わっている魔法は、物を軽くする魔法、料理や焚き火のための火をつける魔法、水を出す魔法になる。


飲み水程度に出す水を杖から飛ばして、3人は体に当てあって遊んでいたのだ。

逃げ回ったりするから体力向上にもなるらしく、休日の定番の遊びになっている。

夏に水鉄砲で遊んでいるような風景だし、水の勢いも弱いので、いつも微笑ましく眺めていた。


「遊んでいるところ悪いんだけど、いいって言うまで家の中に入っていて」


「何かあった?」


「お客様みたい」


心配そうについてきていたシーニーに3人を家の中に促してもらい、不安気に見てくる3人に手を振ってから空に向かって飛んだ。


オレアさんが森に侵入した後、数ヶ月の間は何も起こらなかった。

でも、念のため結界を強めたままでいてよかったわ。

魔女が諦めるなんてしないと思ってたのよね。


結界の外に出た途端に何か攻撃されると思っていたので気を張っていたが、そよそよと風が吹いているだけだった。

注意深く周りを見渡していると、前方から黒い影が近づいてくる。

真っ先に視線がいく大きな黒い瞳にボブヘアの黒い髪の幼女が膨れっ面で、頭が3個ある子犬を連れている。


「シャホルさん、何か御用ですか?」


見た目5歳くらいだが、御年752歳の暴食の魔女。

7人いる魔女の中で2番目に古参で、ノワールからすれば大先輩になる。

魔女会議で会う時は用心をしたことはないが、今は最大限の警戒をしなければいけない。


「貴様が結界を強めたせいだろうが! 何してくれてんだ!」


「シャホル様、落ち着いてください。お話し合いに来られたのでしょう?」


3個頭があるケロベロスは幼女に合わせて子犬になっているが、こちらも見た目に騙されてはいけない。

750年以上、暴食の魔女の右腕をしているのだ。

かなり強力な魔物になる。


「ルーフスがそう言うから仕方なく来たが、やはり釈然とせん。全て此奴のせいではないか」


「いいえ、我々が悪いんです。はじめからノワール様にお願いしていればよかったんです」


「はっ! こんなヒヨッコにお願いだと! 頭など下げとうない!」


「シャホル様、大人になってください」


言い合いをしている内容に、心当たりが全くもって見当たらない。

お願いをしたくないからオレアを使って攻撃したということだろうか?

その原因となっているだろうお願いとは、一体なんだろうか?


「えっと……攻撃を選んでしまったほどのお願いって、何でしょうか?」


シャホルさんとルーフスがピタッと止まり、訝し気な視線を送ってくる。


「何の話だ?」


「ですから、攻撃を選んでしまったほどのお願いって何でしょうか? という話です」


「何をぬかしているか。私がそんなアホなことするわけなかろう」


「えっと、するわけないというのは攻撃のことですか?」


「さよう。貴様のようなヒヨッコを攻撃するなど、ただの弱い者虐めだ。何故そんな面倒臭いことをせねばならん」


「うーん……実はですね、人間を森に侵入させ、その人間を爆発させた魔女がいるんですよ」


「はっ! それが私だと言うのか! 洒落臭いわ!」


本気で嫌悪感剥き出しで怒っているように見える。

ケロベロスのルーフスも、何だが憤慨しているように感じるし。

魔女を信じるのはどうかと思うけど、ここは信じてみるか。


「分かりました。シャホルさんを信じます。何のお願いに来られたのかは未だ不明ですが、立ち話も何ですし、よろしければおもてなししますよ」


「そうだな。そうしてもらおう。ケーキとジュースを頼む」


「シーニーに用意させます。それと、私の家には今弱い人間が3人います。殺さないでください。もし少しでも攻撃されるようなら、シャホルさんのお願いは絶対に聞き入れません」


「はっ! たかが人間に情を移すなど、貴様は真にヒヨッコだな」


見た目と言葉遣いが本当にマッチしないのって、シャホルさんだけなのよね。

魔女の見た目が固定される理由を知っている身からすると、切なくなるわ。


「シャホル様、それは仕方ありませんよ。ノワール様から人間の雄の匂いがプンプンしますから」


え? お風呂入っても匂うの?

念入りに洗ったのになぁ。


「人間の男の何がいいというんだか」


眉間に皺を寄せるシャホルさんに苦笑いを浮かべながら結界の術式を変え、シャホルさんとルーフスを連れ立って地上に降りた。




シャホルが来た目的とは?……来週の更新をお待ちください。

そして、来週はあの国に行く予定です。


読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。


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