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34 材料の1つになる

夕食後、自室に戻ろうとしたのに、ポプルスに通せんぼされて戻るに戻れなくなった。


「なに?」


「もう5日もイチャイチャしてないよね」


「まだ5日じゃない」


「もうだよ! もう! ノワールちゃんの部屋がどこか分からないから夜這いに行けないし、俺の部屋に来てくれないしでノワールちゃんが足りない。寂しい。一緒にいたい。だから、部屋教えて。どこ?」


「嫌よ。毎日来る気でしょ」


「部屋でしかイチャつけないのに、そんな冷たいこと言うの?」


「ポプルスにもあるでしょ。1人になりたい時って」


「ない。ノワールちゃんと2人がいい」


恋人とデートするのって、2週間に1回くらいでよくない?

それでなくてもポプルスには毎日会っているから、1ヶ月に1回くらいでいいような気がするんだけどな。


「俺、これ以上だと飢える。部屋じゃなくても襲うよ。いいの?」


瞳を潤ませ頬を膨らませて拗ねたように見てくるポプルスに、観念して息を吐き出した。


「本当に外見がいいって得よね」


「武器になるからね。強気な方がいいなら、そっちもやるよ。どう?」


私の手を取ると、見つめながら手首にキスをして舐めてくる。

妖しく細められる瞳は、獲物を狩るような熱を含んでいる。


「そうね。今日はこっちがいいわ」


「了解。たくさん愛してあげる」


小さく笑ったポプルスに手を引かれ、ポプルスの部屋に移動した。

中に入るなり激しく口づけされ、立ったまま強く求められる。

ソファや窓際などでも「足りない」と強請られ、ベッドに辿り着いた時には発散したポプルスは潤いを得ていた。

逆に私は、指一本さえ動かせないほど疲れている。


「お風呂入る?」


「うるさい。体力お化け」


「ひどいの。ノワールちゃんが激しい方がいいって言ったのに」


疲れ切って倒れている私の髪を撫でたりキスしたりしているポプルスは上機嫌だ。


「聞きたいことがあるんだけど」


「なに?」


「体の全てに魔力が含まれているんだよね? 体液ってどうなるの? 俺はノワールちゃんのを舐めるわけだし、ノワールちゃんの中にも俺のが入るでしょ。害にはならないんだよね?」


少し話が長くなるかもと思って、「よっこいしょーいち」と言いながら起き上がった。

一瞬止まったポプルスがお腹を抱えて笑い出したのでムカついて殴るが、ポプルスは笑ったままだ。


枕を背もたれにして座ると、ポプルスも体を起こし腰に腕を回してきた。


「魔女が作った媚薬、知ってる?」


「強力なやつでしょ。俺はアレ好きじゃないけど、使っている奴はそこそこいたよ」


「アレの原料の1つって、魔女の体液なのよ」


「え? 気持ち悪っ。もう2度と使えないよ」


嫌そうに顔を歪ませていたのに、思いついたように真顔になり、数回瞬きをしている。

考えていることが手に取るように分かり、小さく笑った。


「材料の1つなだけであって、ちゃんと調合しているはずよ。だから、体液だけでは媚薬の代わりにはならないわ」


「あー、よかった。ノワールちゃんとのエッチが気持ちいい理由が、お互いの媚薬のせいなのかなって焦っちゃったよ。誰よりも体の相性がいいってことで、本当によかった。嬉しい」


「はいはい。私が言いたかったことは、魔力を持っている体は材料の1つになるってことよ。だから、無闇矢鱈にあげない方がいいと思うわ。何に使われるか分かったものじゃないからね」


「誰かにあげる予定はないけど、気をつけるよ。それより、もう1つの疑問は? ノワールちゃんの害になったりしてないよね?」


「ならないわよ。魔力を保有しているだけで、何も変わらないから」


「そっか。だったら、気兼ねなく何度も吐き出せるね」


可愛らしく微笑むポプルスの頬をつねると、悲しそうに眉を下げて潤ませた瞳で見てくる。


「今日は漢気あふれる設定じゃなかったの?」


「そうだった。間違えちゃった」


呆れたように手を離すと、すかさず頬にキスされる。


「ねぇ、何も変わらないってことは、元気になったり病気になったりもしないってことだよね?」


「しないわね。血だったら魔力酔いくらいはあるかもだけど、お酒飲んだ時と変わらないはずよ」


「じゃあ、ノワールちゃんを酔わせたい時は、お酒に入れておけばいいんだね」


「そんなこと言うのね。だったら、ポプルスを酔わせても問題ないわね」


「俺を酔わせていいの? 俺、ノワールちゃんが泣いてもやめない野獣になっちゃうよ」


肩にキスをしてきたポプルスに持ち上げられ、向かい合わせで座るようにポプルスの太ももの上に跨った。

首に顔を埋めてきたポプルスが舐めてくる。


「いい匂い。甘くて美味しい」


「味する?」


「するよ。誰かを甘いって思ったの初めてだよ」


啄むようにキスを落としてくるポプルスの髪を梳くように頭を撫でると、熱を孕んだ瞳で見つめられる。


「どんなけ元気なのよ」


「ノワールちゃんが俺を元気にさせるんじゃん。いっぱい楽しもうよ。ね?」


適当に「はいはい」と返事しようとした言葉も息もポプルスに食べられ、ポプルスの唇が触れていないところはないんじゃないかと思うほど体の隅々まで愛された。




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