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33 魔法の授業

本格的に魔法を教える授業の日がやってきた。

3人ともそれぞれの杖を握りしめ、真剣に見つめてくる。


杖は、作業工程の1つであるシーニーが魔法で乾燥させる度に、各々少しずつ色を帯びさせていた。

そして、完成した時にはポプルスはムーングレー色、アピオスはアンティックゴールド色、カッシアはトパーズ色に変色していた。

この変化にも3人は大いに驚愕していたし、だからこそ自分だけの杖という気持ちが強くなったように思える。


いつでも持ち歩いている3人を見かねて、シーニーが杖用のリボンを作ってくれた。

青い生地に黒糸で刺繍されたリボンは、3人に好評だった。

リボンの先に付いているホルダーに杖を差し込めるので、カッシアは斜めがけをし、ポプルスとアピオスは腰に巻いている。


「じゃあ、まずは杖を地面に置いて」


私が言い終わるや否や、3人は丁寧に杖を地面に置いた。


「自分の杖を思い浮かべながら、『アフンロ』と唱えてみて」


「「『アフンロ』」」


3人同時に唱えて、杖が手に吸い寄せられたのは3人。

全員成功し、「わー!」や「すごい!」と歓声を上げている。


1人くらいは失敗すると思ったのに。

私が想像しているよりも、魔法のセンスも魔力量もあるのかもしれないわね。


「今のを3回繰り返して。さ、練習よ」


「あ、ノワールちゃん。呪文ってメモっていい?」


「いいわよ。そのうち3人別々の呪文になって、個別の練習になると思うから」


「そうなんだ。アピオスとカッシア、分からない文字が出てきたら言ってね。魔法を間違えて覚えたら、きっと大変なことになると思うから」


「ありがとう、先生」


「ありがとうございます」


「私やシーニーに聞いてくれてもいいわよ」


笑顔で頷く2人に、微笑み返す。


「まずは、生活が便利になるだろう魔法から教えていくわね」


「身を守る方法からじゃないの?」


「当初はそうしようと思ってたんだけど、シーニーがリボンに魔法をかけてくれているから後で大丈夫になったのよ」


「え? そうなの?」


「そうなの」


恥ずかしそうに頬を赤らめるシーニーに、ポプルスたち3人はお礼を伝えている。

両手で顔を隠すシーニーが可愛くて、穏やかな空気が流れた。


「今日教える魔法は、物を軽くする魔法よ。重さによって必要な魔力が変わってくるから、小さいものから試して、必ずどこまでの重さのものまで可能か調べてね。後は、発動されている時間も計ること。人によって軽くなっている時間は変わるからね」


まぁ、軽くなった物を相手にぶつけた瞬間魔法を解除したら攻撃できるんだけど、これはあえて言わないようにしなくちゃ。

自分の身を守るのは大切だけど、魔法は争いの力じゃなく生活を豊かにするものって認識してほしいのよね。

本当に使い方次第だから。


「今日は、シーニーが用意してくれた石で練習しましょう。呪文は『ニエリフヤリソ』。成功しても失敗しても繰り返し練習よ」


頷いた3人は同時に唱え、3人とも見事に失敗した。

アピオスが踏ん張って持ち上げられるくらいの石は、全くもって軽くなっていない。


「そうねぇ、どれくらい軽くなってほしいかの想像をしてみて。パンとか、本とか、ペンとかね。ちゃんと重さを想像できるやつね」


かすかに唸り声を上げながら首を傾げた3人は、それぞれのタイミングでもう1度唱えている。

数回で成功をしたのはポプルスで、アピオスとカッシアは重さが半分くらいになったそうだ。

そして、1時間ほど要しただけで、全員成功するという快挙を成し得た。


「みんな、ものすごく優秀だわ」


「本当? 嬉しい!」


素直に喜ぶカッシアの頭を撫でてあげ、成功した石は横に置いておく。

5分毎に重さチェックをし、持続時間を調べるためだ。

結果、アピオスが2時間、ポプルスとカッシアが1時間だった。


「なるほどね。もしかしたら、アピオスは地魔法が得意なのかもね」


「地魔法ですか?」


「物作りに長けた魔法属性よ。魔法を用いて作ったコップやお皿は落としても割れないし、土や岩を変質させることもできるわ」


杖を握っている手を見つめているアピオスの顔は輝いている。


「お姉ちゃん、わたしは?」


「カッシアは何かなぁ? 調べてみよっか」


「俺も! 俺も!」


ノリノリで声を上げるポプルスと、きちんと調べる必要があるアピオスも交えて、属性を調べることにした。

といっても、調べ方は簡単で、空になった魔石に魔力を流して石の色の変化で判断する。


「属性は、火・水・風・雷・地・天・聖・闇・毒・草・空間・重力の12種類よ。得意が何かってだけで、他の魔法が使えないわけじゃないわ。ただ自分の属性を極める方が便利だってくらいね」


3人は、相槌を打ちながら聞いている。

まずは、地魔法だと目星をつけたアピオスから鑑定をはじめた。


「杖の先を魔石にあてて、後は水でも炎でも霧や靄でもいいわ。魔力を魔石に移動させる想像をするの」


「はい」


少し強張った顔で頷くアピオスは、軽く深呼吸してから魔石を見つめている。

全員で見守る中、透明だった魔石が徐々に茶色に変わっていく。


「うん。地魔法で間違いないわね。この魔石は記念にあげるわ。体の中に魔力がなくなった時に使うでもよし、シーニーに護りの魔法を入れてもらってお守りにするもよし。好きなように使えばいいわ」


笑顔で頷いたアピオスは、大事そうに魔石を手で包み込んだ。

続いて、カッシアが調べて水色に変わったので水魔法だと分かり、黄緑色に変わったポプルスは風魔法だと判明した。


3人ともシーニーにお願いをしてお守りにするらしく、シーニーはどうせならとペンダントに加工するそうだ。

至れり尽くせりである。


魔石を預かったシーニーが屋敷に消えてからも、石を軽くする重力魔法の練習は続いた。


授業後、ポプルスに「どうしてアピオスは重力じゃなくて地魔法だって分かったの?」と問われ、「重力魔法が得意なら1回で何かしらの変化があっただろうし、継続時間は短くても3時間はあるはずだからよ」と答えると、「やっぱり奥が深いんだねぇ」と言いながらノートにメモっていた。




次話はポプルスとイチャイチャ、そして新キャラ登場です。


読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

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