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22 ポプルスとオレアの関係

ポプルスを加えての生活が始まり3週間ほど経ったが、特に問題もなく平和に過ごしている。


アピオスとカッシアの日常は、午前中は運動と畑仕事をし、午後は勉強になっている。

夕食後の自由時間では、私かポプルスかシーニーに絵本を読んでもらい、ベッドに入る前までは絵本の絵を眺めていたりする。

勉強に関しては、ただ毎日詰め込むだけでは息苦しくなるだろうと、3日勉強をして1日休むを繰り返すことにした。


日付と曜日はもちろん存在しているが、他者との関わりがない森では気にする必要はない。

今日が何月何日かだけは、アピオスたちが来た時から把握するようにしている。


「ねぇ、ノワールちゃん」


今日も今日とて、食事中にポプルスから話しかけられた。


「手紙を書いて送るってことできるかな?」


「そうねぇ、ブラウかランちゃんにお願いして、クインスさんに渡すことならできるわ。渡したい相手にはクインスさんから送ってもらって」


「いいの!?」


「どうしてダメなの?」


「ここでの生活のことや、ノワールちゃんのことを書かれるかもしれないんだよ? それとも、手紙の内容を確認したりする?」


「しないよ。それに好きに書いていいよ。どうせ誰もここには辿り着けないんだから」


「それもそっか。国のことが気になるし、ありがたく書かせてもらうよ」


「だったら、月1とかでやり取りすれば。それならブラウやランちゃんの負担にはならないだろうから」


「ノワールちゃん、優しい! 本当にありがとう!」


「どういたしまして」


早速、その日にしたためたようで、次の日にブラウがクインスまで運んでくれた。

そして、クインスからの手紙を受け取って戻ってきたらしく、夕食後に「話したいことがある」とポプルスにお茶に誘われた。

今日の絵本の読み聞かせ担当は、シーニーにお願いをしている。


「もしかしたら、もう知ってるかもしれないんだけど……」


「なに?」


「オレアが、ここに来ようと躍起になっているらしい」


アピオスたちの前で話せないことなんだと思っていたけど、オレアさんのことだったか。

シーニーから聞いたけど、頻繁に森に入っているらしいんだよね。

気づいたら森の外に出ているのに諦めないって、ある意味すごいよね。


「そうらしいね」


「やっぱり知ってたんだね。オレアの行動は国の意志じゃないから、そこだけは勘違いしないでほしい」


「それはしてないけど、頭に虫が湧いているのに国として放っておいていいの?」


鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたポプルスが、お腹を抱えて笑い出した。

笑い声の合間に、「頭に虫って」という言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。


「あー、お腹痛い。ノワールちゃん最高だわ。好きだわー」


さらっと「好き」と言ってくるとは、さすがチャラ男。

いい気分になるから、どんどん言ってほしい。

だからって、ドキドキしないけどね。


「ねぇねぇ、俺と付き合わない? 絶対楽しいよ」


「遠慮しとく」


「えー、冷たいの。ま、でも3年あるしね。それまでに落としてみせるよ」


「無理だと思うけど、頑張れば」


「ふふふ、俺に落ちない女はいないからね。覚悟してよ」


妖しく微笑んでくるポプルスを呆れたように見るが、痛くも痒くもないようだ。

自信満々という名の完全装備が見えるような気がする。


「はいはい。ってかさ、オレアさんは恋人じゃないの?」


「やめてよ。俺、趣味悪くないよ」


「そうなんだ。ああいう設定を楽しんでいるのかと思った」


「え? まさかノワールちゃん、強い刺激を求めて遊んじゃうタイプなの?」


わざと明るく、その上で恥じらうように聞いてくるポプルスの手腕は素晴らしい。

これがイヤらしく話してくるようであれば、気持ち悪いだけだからだ。

真面目や真剣に聞かれても困るしね。

変な空気が流れることもなく、日常会話として成立している。


「私はいらないかなぁ。人肌恋しいと思うこともないし」


「そこは思おうよ。俺ならいつでも添い寝するからね」


「はいはい。ってかさ、オレアさんに、きちんとお断りを入れたらいいんじゃないの? 好きじゃないんでしょ?」


「うん、俺が好きなのはノワールちゃんだからね」


「おはよう」と「おやすみ」くらい軽い「好き」だから、本当にドキドキしないわー。

「明太子大好き」と同じノリなんだよねぇ。


食べたいなぁ。

炊き立てのご飯に明太子乗っけてさ。

こっちの世界には無いだろうなぁ。

もう食べられないと思うと、本当に心の底から食べたくなる。


「それに、好きじゃないと伝えているし、態度でも表してる。それなのに纏わりついてくるんだよ。どうしようもないよ」


「一緒に国を興した仲間だから切り捨てられないの?」


「一緒に興したというより、冒険者としての力はあるから移動するのを手伝ってもらったんだよ。移民してきてくれる人たちを魔物から守ってもらう人は、多い方がよかったから」


「元冒険者なのね」


「いや、今も流れの冒険者だよ。俺がいるところに入り浸ってたから、幹部と思っている人は多いかもしれないけどね」


なるほどねー。

そういえば、ランちゃんの調べでも国を興した主要人物としかなかったな。


「だから、国として拘束できないんだけどね。邪魔はしたり説得を試みたりはしてるらしいけど、全部振り切ってしまうんだって」


「ふーん、じゃあ、諦めてくれるまで待つしかないってこと?」


「そういうこと。早く俺以外を好きになってもらうしかないの」


「大変だね」


「本当にねぇ。だから、ないとは思うけど、あいつが森を抜けてきたら俺が体張ってでもアピオスたちには近づけさせないから、結界を消すのだけはしないでほしい。お願い」


両手を合わせて眉尻を下げた顔で、瞳を潤ませながら上目遣いで見てくる。

まだ少ししか時間を共にしていないが、人の懐に入るための色んな武器を持っているなぁと感心する。

まぁ、顔の偏差値が高いことを理解しているからできることなんだろう。


「分かった。すぐには消さずに、何かしらの協議はさせてもらうわ」


「ありがとう! ノワールちゃん、優しい! 大好き!」


「はいはい」


嬉しそうに立ち上がって私の側に来ようとするポプルスを、魔法で浮かし元のソファに座らせた。


キョトンとしているポプルスを無視していると、またお腹を抱えながら笑い出し「最高に楽しいよ」と言われた。




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