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20 ポプルス到着

10日も経たないうちに、ポプルスが大きな荷物を背負って戻ってきた。

今回もパランに迎えに行ってもらったら、1人と1匹で3日過ごしたからか、屋敷に着いた時には信じられないほど仲良くなっていた。

「俺、動物にも女の子にも好かれるんだよね」と堂々と言ってのけるポプルスに、やっぱりチャラ男だと思ったものだ。


「もっとゆっくりでよかったのに」


「えー、俺はもっと早く来たかったのに。冷たいの」


と、明るく言われた。


ノワールはウザッと思う性格だろうが、私としては軽口を叩ける人は案外好きだったりする。

恋愛対象ではなく、友達としてお酒を飲むのに丁度いい相手なのだ。


それに、これくらい元気な人の方が、アピオスたちも打ち解けやすいよねと思っていた。


この世界に来てから順調に過ごしていて、私は楽観視していたのだ。

さまざまと思い知らされたのは、夕食時にポプルスを紹介した時だった。


「俺の名前はポプルス。2人に勉強を教えるために来たよ。よろしくね」


「ァ、ピオスです。よっろしくお願いします」


アピオスが顔を強張らせて、久しぶりに喉を詰まらせながら返していた。


それだけでも「おや?」と思ったが、普段アピオスより進んで会話をするカッシアが、口を引き結んでアピオスの腕を掴んだのだ。

恐々とポプルスを見ている姿に、男の人が怖いんだと理解した。


あー、私のバカバカバカ。

そりゃそうだよ。

カッシアが置かれていた状況を考えれば予想できそうなことなのに。

なぜ考えが至らなかったの。

はぁ、イケてなさすぎる……どうしようかな……


深く考えていなかった自分を殴りたくなっていると、ポプルスがにこやかに微笑みながらしゃがんだ。


「俺、身長高いから怖かったよね。ごめんね」


ポプルスは可愛らしく小首を傾げているが、カッシアは泣き出しそうな顔をアピオスの背中に隠してしまった。


「そっか、まだ怖いかー。でも、これ以上小さくなれないからなぁ。あ! 離れてみるね。うん、いいかもね」


終始明るい声で話しながら、ポプルスは部屋の隅に移動している。

そして、まるで遊んでいるような楽しげな声をあげた。


「もういーよ」


微動だにしないカッシアを心配していると、アピオスがカッシアの手を握った。

自分も緊張しているはずなのに、さすがお兄ちゃんである。


感心していると、カッシアが恐る恐る顔を覗かせた。

チラッとカッシアの瞳が見えたと思ったら、満面の笑みで手を振るポプルスを見て、すぐに引っ込んだ。


チャラ男、もしかして保父さん経験有りなの?

まだ話せてないけど、対応神じゃない?

チャラいだけではないとは、めっちゃ尊敬できる。


ってことで、雑に扱っても大丈夫そうだな。


「ポプルスさんには、ずっとあそこでいてもらおっか。さ、お腹空いたよね。ご飯食べよう」


「はいはい。先に食べていいよ」


アピオスとカッシアの背中を優しく押してテーブルに促そうとしたが、カッシアがなぜか動こうとしない。

不思議に思っていると、瞳を潤ませながら私を見てきた。


「お姉ちゃ……でも、私、わがまま……みんなで食べる……」


え? なに、この子!?

めっちゃ優しくない?

私が感動で泣きそうなんだけど。


打たれた胸に温かいものが込み上げてきて、柔らかくカッシアの頭を撫でた。

そして、カッシアを抱き上げて視線を合わせる。


「じゃあ、カッシアは私とアピオスの間で食べよっか」


「うん、そうする」


安心したように抱きついてくるカッシアの背中を撫でながら、ポプルスを見やると、両手で顔を隠して丸まった状態で床に倒れていた。

「ううっ、可愛い」と漏れ聞こえる声に、悶えたんだなと理解した。


10人座れる長テーブルに、3人と1人に分かれて夕食が始まった。


「改めて、ポプルスです。よろしくね」


「アピオスです。よろしくお願いします」


カッシアに対してのポプルスの対応に、悪い人ではないと心が解れたのだろう。

今度は詰まらず言えたようだ。


「……カッシアです。よろしくお願いします」


両手を強く握りしめて小声だったけど、カッシアも自己紹介ができた。

褒めるように頭を撫でると、体から力を抜いてへにゃっと笑った顔を向けてくる。


「2人とも、もしポプルスさんに嫌なことされたら我慢しなくていいからね。すぐに私かシーニーに言うのよ。まぁ、言えなかったとしても、私もシーニーも分かるから大丈夫だけどね。だから、安心していいのよ」


「え? もしかして、俺の全て丸裸なの?」


「変なことした時だけ、私の耳に入るようになっているだけよ。悪いことしなきゃいいだけよ」


「するつもりないよ。ただ何もないところで転んだり、どっかに体や足の指ぶつけたりしたことを、報告されたら恥ずかしいじゃない。俺はカッコよくありたいの」


髪をかき上げながら言うポプルスに、アピオスとカッシアは目を瞬いた後、小さく笑い出した。


ポプルスにジト目を向けてしまいそうだったが、笑った子供たちを優しい面持ちで見るポプルスにわざと言ったんだと分かった。

だからこそ悪ノリすることにした。


「その仕草がカッコよくないわ」


「ノワールちゃん、ひどーい。俺、めっちゃモテるんだから。2人にもモテる秘訣教えるからね」


ポプルスのウインクしている姿に、アピオスとカッシアは笑ったままだ。


「そうだ! 明日から1週間は、2人が俺にここでの生活の仕方を教えてよ。で、1週間後からは俺が色んなことを2人に教えるね」


先に仲良くなることを優先したのね。

やっぱり保父さん経験あるんじゃないかな?


ポプルスをオッケーして失敗したかもと思ったけど、ポプルスでよかったのかもしれない。

大人の男の人に慣れるのは、最大難関だったかもだからね。


まぁでも、ポプルスは美人さんだからなぁ。

そのうち普通の男の人に慣れられるような何かを考えなきゃだな。


小さくだが頷いている2人を見て、自然と顔が綻んだのだった。




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