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120 違和感がある令嬢

ポプルスが青い実を探しに出かけて、今日で9日目。

ランちゃんが一緒だとはいえ、少し心配になってきた。


「ねぇ、キューちゃんとカーちゃん。私がポプルスを迎えに行ったら、失格になるわよね?」


「なるネ」


「なるでごわす」


2匹は今、目の前でアピオスとカッシアの訓練中になる。


まず2匹は、アピオスとカッシアに、2人の能力について説明していた。

アピオスたちは驚きながらもきちんと受け止めていて、与えられた力をどう使えばいいのかと、積極的に相談していた。

出会った当初を考えると、すごく前向きになっている。

ここでの暮らしがいい方向に導けているようで、本当に喜ばしく思う。


気合いを入れている2人が始めた訓練は、自然と友達になること、そして魔力の流れを切り替えることだった。

キューちゃんとカーちゃんは変身をする時に、実際に魔力の流れを変えているらしい。

逆流しても大丈夫なのか心配になったが、巡らせる順番を変えるのではなく、流れの勢いを切り替えるのだそうだ。

変身する時は体の中心に勢いよく魔力を巡回させるそうで、アピオスとカッシアは耳を中心に同じことをすればいいらしい。


よく分からなくて首を傾げてしまったら、「ノワール様は魔女だから、分からなくて当たり前ネ」と言われた。

眷属のみんなも似たようなものでしょ? と思ったけど、私とは魔力の保有量が違うので感覚が異なるのかもしれない。

となると、私にアドバイスできることがないと言うことになり、毎日頑張っているアピオスとカッシアを、ただ静かに眺めている。


2人は来る日も来る日も坐禅を組み、魔力がどう流れているのかを掴もうとしている。

2人とも途中までは追えるそうなのだが、急にぱったりと分からなくなるらしい。

その感想も理解できなくて、「そうなのね。掴めるといいわね」と当たり障りのない返事をしている。


ポプルスを待っていても帰ってこないし、私1人何もせずにのんびり過ごすのも手持ち無沙汰になってきたので、シーニーが新たに纏めてくれた資料に目を通すことにした。

もう一度調べてほしいとお願いをしていた、ポプルスとグースがいた娼館「キオヤホラサナ」について報告が上がってきたのだ。


前回同様、カーラーさんやネーロさんの関与が結びつく事柄は見当たらない。

ただ詳しく調べてもらったから今回分かったこと。

娼館御用達の人物たち。その中に、「チェルナー」と「エレ」の記載がない。

ポプルスやグースのあの口ぶりから、あの2人は絶対に太客だ。

なら、わざと残されていないことになる。


それと、もう1点。

ポプルスの客に、王子の真実の相手である男爵令嬢、ルビア・ブバルディアの名前がある。


こんなことってあるの?

彼女、娼館の掃除係りとして働いていたのに、ポプルスを買う余裕なんてあったの?

それも、上位に食い込んでいるほど通っているんだけど……


シーニーも怪しいと思ったのか、彼女について調べてくれている。


ルビアの生家、ブバルディア男爵家はある。

あるにはあるが、男爵夫婦は亡くなっていて、男爵の席は空白になっている。

ルビアが成人したら、その席に着くようになっているらしく、成人の20歳まで後数ヶ月。

領地はないから、管理するのは小さな屋敷だけでいい。

使用人はたった3人で、年長者の執事が纏め上げている。

その使用人たちの話題に、ルビアが上がることはないらしい。


ルビアは今、王子が住んでいる王宮に身を寄せていて、男爵家の屋敷に帰っていないそうだ。

そもそも、ルビアは娼館の従業員部屋に寝泊まりしていたと記載があるので、今回の騒動が起きる前から帰っていないことになる。

それを裏付けるように、彼女の私室らしき部屋はあったが、生活したような痕跡は見当たらなかったとのこと。


ルクリアのことが頭をよぎったのは、私だけだろうか?

ルビアは、本当にブバルディア男爵の子供なんだろうか……と。


だって、使用人の話題に上がらないなんてことある?

仕えている主人が、王子と結婚するかもしれないのよ。

外では話題に出しちゃいけなくても、家の中でくらいって思うのよね。


あ! そうよ!

ポプルスがいない今のうちに、ポプルスたちが住んでた村に行ったらいいのよ。

でも、帰ってきた時に、私がいないと五月蝿くなるわよね。

茶番だけど、私との仲を認めてもらうために、森を彷徨っているんだものね。


「シーニー」


休憩に入ったアピオスたちに、飲み物を配っていたシーニーを呼ぶと、シーニーは幸せそうな顔で駆けてきてくれた。


「ノワール様、何でしょう?」


「ちょっと出かけてこようと思うんだけど、ポプルスが後何日くらいで帰ってくるとか分かる?」


ポプルスには魔術を施しているから、調べようと思えば森のどこら辺にいるかは大体分かる。

だけど、そこから屋敷までの道がどうなっているのか分からないので、何日で帰ってくるかの予想を立てられないのだ。

だから、シーニーたちに聞く方が早い。


「はい。毎日小蜘蛛が報告してくれていますので、分かります」


やっぱりね。

みんなが全く心配していないから、何かしてると思ってたのよね。


「最短で1週間ですね。道を少しでも外れたら、10日くらいだと思います」


「え? ポプルスってば、迷って遠い場所にある実を採りに行ったとかなの?」


「いいえ、途中で森の大移動が起こったみたいでして、青い実が遠くなってしまったんです。これには、キューとカーも渋い顔をしていました」


森の大移動って、なに?

シーニーが小さく笑いながら話すってことは、特に不思議な現象じゃないってことよね?

時々、起こっているってことよね?


「ですので、1週間は帰ってきませんので、外出されても大丈夫ですよ」


聞くタイミングを逃しちゃった。

今度、森に散歩に行く時にでも、パランに尋ねてみよう。


「分かったわ。ありがとう」


シーニーの頭を撫でながら、お礼を伝えた。

ハニかんだシーニーは、照れ隠しなのか、足早にアピオスたちのコップの回収に行ってしまった。

相変わらず、可愛い眷属である。


1週間あれば、もしも数日帰って来れなくても問題なさそうね。

だとしたら、ついでに男爵令嬢のこと、見に行ってみようかな?

会えば、何か分かることがあるかもしれないものね。




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