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108 結婚の報告

悪どい笑みを浮かべ合っていると、キョトンとしているポプルスが口を挟んできた。


「ねぇ、ノワールちゃん。“今日“初めて薬を持ってきたんじゃないの? 俺、てっきり“今日“グースたちに話すんだと思ってたよ。ねぇ、どうしてグースたちはもう動いているの? というか、俺の知らない話があるんだけど、どういうこと?」


え? なんか黒い靄出てない?

重たい空気を纏っているし、目も鈍い光を放っているしで、闇堕ちしたとか言わないでよ。


「先にシーニーに交渉してもらったからよ」


「いつ? シーニーを見かけない日なんてなかったよ」


「当たり前でしょ。家事の合間にこなしてくれたんだから」


「そうだ。シーニーにハーブティーのお礼を言っておいてくれ。美味しかったし、ぐっすり眠れた」


「ええ、伝えとくわ」


グースのナイスアシストに心の中で拍手するが、隣なら「本当に? でもハーブティー……後でシーニーに確認しよ」とブツブツ聞こえてきて、顔から表情が消えそうになる。


先にシーニーに口止めしなきゃ。

密会したことがバレたら、どんな暴走されるか分かったもんじゃない。

確実に、次の日は動けなくなる。


「薬を納める数は、その会談が終わってから正式に決めるでいいのね」


「ああ、こちらから数は制限しようとは思っているが、どうせ欲張ってくるだろうからな。見返りが良さそうなら増やそうと思っている」


「分かったわ。それまでにポプルスには作り方をマスターしてもらうわ」


「ん? アピオスって少年が作るんじゃないのか?」


「ふっふーん」


突然ポプルスが、上機嫌で胸を張ったからだろう。

グースはもちろん、壁側にいるクインスとタクサスも、ポプルスを胡散臭そうに見ている。


「いつでもノワールちゃんにプレゼントできるように、稼ぐことにしたんだー」


「そうか。家庭教師だけだと楽みたいだからな。いいんじゃないか」


「え? え? どうしてプレゼントをいつでも渡せるようになりたいかって? 聞きたい? 知りたい?」


「聞きたくもねぇし、知りたくもねぇよ」


クインスとタクサスからも「兄さん、ポプルスさん気持ち悪くない?」「あいつはあんなもんだろ」という会話が聞こえてくる。


私としてもこの3人に同意だから殴って止めたいくらいだけど、今日来たのはこの報告も兼ねているので我関せずにいることにした。


「聞きたいかー、知りたいかー。しょうがないなぁ。実はねぇ、俺とノワールちゃん結婚するんだぁ」


「「はぁ?」」


「しかもねぇ、プロポーズしてもらったんだよ。側にいろって言ってくれたの。自分だけを愛せって。もう熱烈だよねぇ。俺、嬉しくってさー。もう一生ノワールちゃんと生きるって決めて、プロポーズ受けたんだ」


「ポプルス、それは夢だ。さっさと起きろ」


「えー、俺、負けずにアタックしようと思ってたのにー」


「これって本当なのか? 嘘で驚かそうとしているのか?」


「でね、でね、シーニーたちが指輪を作ってくれることになって、完成したらお祝いしようってなってるんだけど、仕方ないからグースたちも招待していいって。盛大に祝ってくれていいからね」


会話が成り立っていないが、こういうのも慣れているんだろう。

誰もツッコまず、誰も怒らず、まだ思い思いに喋っている。


「だからな、ポプルス。一旦、夢か現実かを思い出せ」


「ノワール様の家に、俺もとうとう行けるの? たのしみ」


「ポプルスを受け入れられるとか……魔女すごすぎないか……」


「もう! 3人とも、普通は先に『おめでとう』だよね! 幸せな俺を妬むのは後にしてさ」


「「いや、妬んでないから」」


4人一斉に吹き出して、同時にお腹を抱えて笑ってる。

本当に仲良いよねぇ。

こういうの見てると、アピオスやカッシアにも早く友達をって思っちゃうよ。


口を挟めるタイミングだと思い、ポプルスとグースに声をかける。


「グース、薬の件はその流れでってことで。ポプルス、家の案内は今度ではいいわ。私は帰るわね」


「えー、待って待って。家に案内するし、街にも一緒に行くよ」


「家? 行ってどうするんだ?」


グースが不思議そうに尋ねてきて、クインスとタクサスも首を傾げている。


「置いたままのお金を取りに行きたいのと、将来アピオスたちが住むかもしれないから、その下見だよ。俺の家って、クインスが掃除してくれてたりする?」


「月1くらいでな」


「やっぱりね。ありがとう」


どうせポプルスの家に行くのならと、この屋敷が建っている敷地内を案内されることになった。

別に覚える必要がないのにと思ったが、アピオスたちが来た時に案内してあげられるかと思い直すことにした。


賑やかな一行で順序よく巡り、ポプルスの家に着いたところで、グースたちがついてきた理由が分かった。

ポプルスの家と並んで、グースたちの家もあったからだ。

ついでに説明をってことだったんだろう。

使用人小屋みたいなこじんまりした2階建てが5個ほど並んでいて、そのうちの4つを4人で使っているそうだ。

ただグースだけは、仕事場になっている母家の方にも自室があるので、大半はそちらで過ごしているとのこと。

静かに1人で過ごしたい時だけ、こっちの家に寝に来るそうだ。


それぞれの家に庭もついていて、アピオスとカッシアが住むには申し分がない。

使っていない畑もあるそうで、それを使っても構わないとさえ言ってもらえた。


だから、アピオスたちが気に入れば、空いている1軒を譲ってもらうことにしている。

ポプルスの家は、「稼ぎたいのなら、書類仕事を手伝いに来てくれ」というグースの懇願から残すことになったのだ。

たぶん、仕事は言い訳で、ポプルスが居た形跡を消したくないんだろうと思う。


その後は、お金を得たポプルスと買い物に出かけた。

ポプルスと合同でアピオスたちへの誕生日プレゼントにコップを購入し、お土産に飴を買っている。


「デート」とはしゃいで五月蝿かったポプルスをグースたちの元に送り、疲れ切った私は屋敷に帰ったのだった。




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