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107 束縛

クライスト国に持っていく薬が出来上がり、ポプルスと共に出発した。

とりあえず300個用意しているが、本格的に交易が始まると絶対に足りないだろう。

こちらが欲しいもの、向こうが取引材料として提示するものによって、数が異なってくるだろうから、本当にとりあえずの300個になる。


「先に買い物をするんだよね?」


ポプルスに予定を確認されて、小さく首を横に振った。


「いいえ、先に渡しに行くわ」


「それだと、俺はプレゼント買えないんだけど」


「あなた、お金持っていないじゃない」


「あるよ、ある。クライスト国にある家には少しだけどお金置いてるから、ノワールちゃんに借りて、今日中に返せる」


それもそっか。

指輪の時にお金を稼ぐ稼がないって話をしたから、ポプルスを一文無しのように思い込んでたわ。

家だってあるよね。

無かったら、どこに住んでたんだって話だものね。


「その家って、誰か管理してくれているの?」


「えー、どうだろ? クインスあたりが掃除してくれてそうな気がするけど、放置したままかも。もう住まないし、手放そうかなぁ」


「どうして? 家は必要でしょ」


「ん? ノワールちゃん、クライスト国に頻繁に遊びに行くの? 泊まる場所必要?」


「じゃなくて、ポプルスに必要じゃない。3年後、どこに住むのよ?」


私、変なこと言ってないよね?

なんで睨まれなきゃなの。


「どうして別居する必要があるの? 俺はずっとノワールちゃんと一緒に、ノワールちゃんの屋敷に住むよ。夫婦になるんだよ。それなのに離れて暮らすとか意味不明だよ」


いや、私のモノにはもうしているわけだし、私としては週末婚くらいでいいかなぁと。

街に住む方が便利だし、楽しいと思うのよね。

でも、それを言うと拗ねるだろうから、適当に謝っておこう。


「そうね、悪かったわ」


「本当だよ。もっと俺を束縛していいと思う」


「十分よ」


「十分じゃないよ。ずっと見える所に居ろとか、食べさせろとか、入浴手伝えとか、抱き枕になれとか、1日何をしていたか全部話せとか、他にも色々あるはずだよ」


「怖いこと言わないでよ。お互い好き同士なら、それでいいじゃない」


すぐにそれだけ出てくるって、ポプルスの願望じゃないの?

あー、怖い怖い。重いし、狂気じみてるわ。

私、本当に早まったかも。


「ちぇ。ノワールちゃんがそうしてくれるなら、俺からもって言えたのに」


不服そうに呟くポプルスのおでこを叩くと、デレデレに顔を溶かしながら体を寄せてくる。

腰を持たれ、顔を擦りつけられるが、犬が戯れてくるのと変わらないので放っておく。


「ポプルスの家、見に行ってもいい?」


「いいけど、寝るためだけの家だから小さいよ」


「構わないわよ。アピオスとカッシアが住めそうなら、後々譲ってあげてほしいのよ」


「うーん……アピオスに薬を作らせるんだっけ?」


「そうよ」


「だったら、俺の家はいいかもね。グース達の家と同じ敷地内にあるから、もし襲われてもすぐに警ら隊が来てくれるし」


それなら本当に、その物件は手放せないわね。

魔法が使えるようになっているとはいえ、アピオスもカッシアも優しすぎて、攻撃に使えるなんて考えていないはずなのよ。

まぁ、私がそう誘導しちゃっているっても要因の1つだろうけど。

拘束魔法くらいは、そろそろ教えてもいいのかもな。


今日訪問することは予めブラウに伝えに行ってもらっていたので、驚かれることなく、すんなりと窓から部屋に入れてもらった。


「玄関から来てくれていいんだぞ」と肩をすくめるグースは、いつも通りに見える。

だが、シーニーが持って行ってくれた簪を受け取った時は、泣いてしまいそうなほど顔を歪めていたそうだ。

そして、「重たい物を預かったな」と力なく溢したらしい。


グース曰く、あの簪はポプルスがプロポーズした時に渡した物らしく、ルクリアは毎日つけていたそうだ。

「ポプルスには大切な物だとしても、俺はへし折ってやりたいよ」と言っていたとのこと。

シーニーは、ハーブティーを淹れてあげたらしい。


「ノワール。リアトリス国・ガーデニア国・フクシア国には、この前もらった薬と一緒に書状を送っている最中だ。すぐに飛び付きたいが、訝しんで二の足を踏む、という反応をすると考えられる」


新たに作ってきた薬をクインスに渡し、ポプルスと共にソファに腰掛け、タクサスがお茶を配り終えた時に、グースが話し出した。

グースは対面のソファに座り、クインスとタクサスは壁側に控えている。


「だから、4ヵ国でどこかに集まり、会談をしようと提案している。魔女関連だからな。俺が出ていく方が信じてもらえる。だから、1つ1つ訪問してとなると時間がかかりすぎるだろ。時間をかけすぎるのは、ノワールの意とは反すると思ってな」


「そうね。可能ならサクッと浸透させたいわ」


グースは了承するように頷き、話を続ける。


「残りのレーアンマニア国・サラセニア国・エッショルチア国には、何も知らせないことにした。前もって丁寧に教えてやる必要はない。会談時にはリアトリス国の3ヵ国には『売るな。魔女がそう言っている』と伝える。薬の販売は守ってもらえるだろうが、話はどうせ漏れるはずだ。みんな当たり前のように優位に立ちたがるし、諜報活動をしていない国なんてないからな。だから、文句を言われたら対応することにする。それでいいか?」


「いいわね。他国で広まってから、慌てて薬を求めさせる。でも、取引はしてもらえない。焦りは募るばかり。本当にいい考えだわ」




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