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第45話 どこにいるんだろうね?

 俺はプライヴィアさんへ報告を終えて、総支配人室を出てくる。俺が横切ろうとしているのに、こっちを向きもせず、忙しそうにテンパっているクメイリアーナさんに会釈をして、玄関前のホールへ。そのまま俺は、ブリギッテさんのところへ。彼女はあと三人くらいで順番が回ってくるみたいだ。


「あのさブリギッテさん」

「はい。なんでしょうか?」

「ロザリエールさん、住居(そっち)行ったと思うんだけどさ」

「はい。私が出る前に一度お見えになりましたが、お屋敷に戻られましたよ」

「そうなんだ」


 俺がいなかったから戻っちゃったのかな? 悪いことしちゃったかも。


「コーベックさん、あとは大丈夫そう?」

「はい。クメイリアーナさんも、丁寧に教えてくれるとのことですから」

「それじゃ、俺はこれで戻るね。クメイさん」

「あ、はい。お構いできずに申し訳ありませんでした」

「いえいえ、大変だろうけど、あとお願いしますね。俺、明日からのために休むことにします」

「お任せください。では、明日、お待ちしていますね」


 クメイさんだけでなく、ここにいる黒森人族の皆も一礼してくれる。どんだけなんだよ、俺?


 ギルド本部の建物を出て、あ、そういえばと思う。もはや無意識レベル、頭に『個人情報表示』どうだっけ? みたいに思い浮かべるだけで、表示されるこの画面。時間はそろそろお昼になろうとしてるね。


 ゆっくりと散歩するようにして、途中、乾燥させた甘いものを数点買って、屋敷に戻ってくる。入り口入って突き当たり、左が厨房、隣で正面が居間兼食堂。どちらにもロザリエールさんの姿は見当たらない。仕方ないから、さっき買った甘いものをテーブルの上に置いて廊下へ。


 少し離れてお風呂があって、その隣がトイレ。どちらかで掃除してるわけでもなさそうだ。突き当たりに二階への階段がある。通路の右側階段の手前に、部屋があってそこがロザリエールさんの部屋。気配も感じないんだよね。まだ帰ってないのかな?


 広めのゆったりとしたらせん状の階段を上がって、手前に二つ空き部屋。一番奥が俺の部屋なんだ。


 自分の部屋に戻ってきて、入ってすぐのところで靴を脱ぐ。こっちの世界ってベッドの上以外は土足なんだけど、この部屋の床はさ、他の宿みたいに粗くないんだ。綺麗な石材でほぼつるつるな感じ。だから靴脱いでも大丈夫だと思ったんだよね。俺がいた日本はほら、こういう習慣だったから、裸足の方がリラックスできるんだ。


 ふかふかのベッドに倒れ込んで、ちょっとだけ背伸び。この部屋も、窓があるから圧迫感が感じられない。このワッターヒルズもそうだけどさ、ガラスっぽいやや半透明な石材が窓に使われてるんだ。魔道具が作れるんだから、この程度で驚いたらいけないのかもしれないね。


 ブリギッテさんは、屋敷に戻るって聞いてたみたいだけど、ロザリエールさんはまだ帰ってないみたいだ。そういや服を見てくるとか言ってたし、もしかしたらそれで時間がかかってるのかも。それにどこかで買い物してるのかもだからね。


 朝ご飯しっかり食べたから、まだ腹も減ってないな。肌寒くもなく、快適な部屋の中。うとうとしてたら、そこからちょっとばかり記憶がありませんですよ。


 ▼


「……あー、寝てたのか」


 もはや腕時計でも見るかのように、『個人情報表示』の画面は天井と目の間に映し出されている。時間は、午後6時を過ぎてた。日本(あっち)にいたときから、休みの日は寝ようと思えばいくらでも寝ていられる。だから意識的に、何かをしようと思わなければ、あっというまに過ぎてしまうんだ。


 昼ご飯食べてないから、それなり以上に腹減った。自室を出て廊下を歩き、階段を降りて一階へ。『ロザリエールさん、戻ってるかな?』と、食堂を覗く。いないな。けどなんか、いい匂いがする。


 ふらふらとまた、引き寄せられるようにテーブルへ近寄る。すると、背中から声がかけられたんだよ。


「お目覚めになられたのですね、ご主人様。夕食の準備がまもなく整いますので、おかけになって構いませんよ。温かい葉菜、根菜から召し上がりながら、少々お待ちくださいね」


 彼女の声は、厨房の方向へ動いていた。なるほどね、あっちにいるわけだ。椅子に座ってテーブルの上を見る。すげぇ。大皿に色々と盛り付けてあるよ。


 薄く切ったパンから始まって、温野菜のサラダ。今朝と同じ部位の、1センチ角くらいに切られた肉と、同じように角切りされた数種類はある野菜の入ったスープ。けれど、目の前にお皿一枚分のスペースだけ、何もないんだよね。ナイフとフォークはあるのに。多分ここに、メインディッシュが来るんだろうな?


 先に温野菜のサラダ。うん。朝食べたのと同じ。何の油かな? それに香辛料と塩で味付けた、ドレッシングみたいなものがかけられてる。歯ごたえも少し残ってて、うん、美味しい。


「お待たせいたしました」


 すっごくいい匂い。なんだろう? 魚介のだしの匂いかな? その匂いが、俺の背後から目の前に回ってきたかと思うと、お皿の上にのせられた、頭の落とされた半身の魚。それは俺が知る限り、ムニエルと同じ手法? パンを作る麦なんかの粉をはたいて、油で揚げてあるはず。だって、衣が薄くついているもんね。それに、魚の香りがするだし汁がかかってる。そこに緑の葉野菜が付け合わせがあるんだ。


 ロザリエールさんの分もお皿が置かれた。俺が一緒に食べようって言うのを見越してるんだろうね。もちろん、言うよ。一人で食べても美味しくないから。パンを挟んで、俺の隣に座ったロザリエールさん。その方が、色々と給仕しやすいからかもだね。


「どうぞ召し上がってくださいまし」

「う、うん。いただきます」


 ナイフとフォーク、慣れてないけど使い方くらいは知ってる。ぎこちなく、身を切って。そこでちょっと驚いた。



お読みいただきありがとうございます。

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