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第43話 いつもどおり、これですか。

 屋敷を出て、いつもの道を散歩するようにゆっくりと進む。ダイオラーデンと同じ、赤煉瓦のタイルがモザイク柄で組まれてる、遠くからでもすぐにわかる壁をした建物が見えてくる。


 ダイオラーデンと同じ、というより、ダイオラーデンがここと同じように作られてるんだろうね。どこの町や国に行っても、『冒険者ギルド』がどこにあるか、一目でわかるようにしてあるんだと思うんだ。


 ギルドに到着。入り口の扉は閉まってる、……んだけど、当たり前のようにドアが開くんだよ。その横には笑顔のクメイリアーナさん。


「おはようございます、ソウトメ様。本日までお休みのはずでしたが、どうされましたか?」


 匂いか? 俺昨日、ちゃんと風呂入ったんだよ? 狼人族ってやっぱり、人より嗅覚優れてるのかな? 俺が来ると最近こうして、ドア開けてくれるんだよな……。


「クメイさんおはよう。あ、あのね、今日は俺のところの」

「あら? 本当ですね、あらあらあら? これはまた沢山」


 俺は『なんのこっちゃ?』と振り向いたんだ。するとそこには、見知った人の姿があった。


「お館様、お邪魔してもよろしいのでしょうか?」

「あ、コーベックさん。いいから入って入って。ギルドからしたら、歓迎だと思うけど。俺の関係者だし」


 そこにいたのは、俺が面倒を見ることになった黒森人族のまとめ役。コーベックさんだったんだ。


 クメイリアーナさん、あっという間に受付に戻っちゃってる。もしかして、彼のことも匂いでわかったのかな?


「いらっしゃいませ。冒険者ギルド、ワッターヒルズ本部へようこそ」


 ここはダイオラーデンの支部と同じなんだよ。まるでファミレスみたいな挨拶だもんな。これはもしかしてあれか? 挨拶も俺みたいにあっちから来た人が伝えたのか?


「クメイさん。彼らは俺の家族みたいなものでさ」

「はい。存じております」

「登録お願いできるかな?」

「では、こちらで承りますので――」


 コーベックさんを始めとして、ぞろぞろと八人くらい。コーベックさんの奥さんで、女の人たちのまとめ役、ブリギッテさんは少し遅れてくるんだって。


「コーベックさん、こっちこっち」


 俺は依頼書の張り出された掲示板で手招きをした。


「はい。お館様」

「あ-、ここではさ、ソウトメと呼んでくれないかな?」

「かしこまりました。ソウトメ様」

「あまり変わらないか。それでさ、こんな感じに――」


 俺はコーベックさんに、ギルドのことをある程度のことを教えたんだ。もちろん、クメイさんやジュリエーヌさんに教えてもらったことの受け売りなんだけどね。


「あ、申し訳ありません。私の仕事なのに」

「いいっていいって。俺んとこの家族(ひと)がお世話になってるんだから、これくらいはね」

「ありがとうございます」


 クメイリアーナさんが恐縮しちゃってるよ。あ、ドアが開いた。そこにいたのは、うちの家族で女性のまとめ役。


「あ、やはりここで間違いないのですね。お館様、遅れて申し訳ありません」


 コーベックさんの奥さん、ブリギッテさんだった。ってか『お館様』か、もういいや。


「ブリギッテ、ここではお館様のことを『ソウトメ様』と呼ぶように」

「そうなの? わかったわ」


 あははは。気遣ってくれるのはありがたいけど、もうどっちでもいいような気がしてきたんだよ。それにしても、ブリギッテさんも五人ほど連れてきてる。案外外で働いてみようと思う女性も多いんだね。


「おや? 今朝は大盛況だね?」


 うわ、珍しい。金色の髪の毛に特徴的な色の毛が混ざる、まくり上げられたブラウスの裾から見える、腕から手首にかけて見える体毛がいかにも『虎』という力強いイメージを感じる女性が、受付の左の扉から出てきた。ここの総支配人、プライヴィアさんが出てきちゃったよ。


「おはようございます、プライヴィアさん。うちの家族が大勢で押しかけてしまってすみません」

「あぁ、ソウトメ殿の匂いがしたんでね。いやいや。うちとしても、大助かりだよ。なるほどね、皆、黒森人族なんだ。そうだね、……おそらくは40、いや、50歳程度かな?」


 匂いって。虎人族もそうなのか? それよりもすげぇよ。年齢言い当ててるし。


「あはは。よくわかるんですね」

「そりゃ、長く生きてるからね。これぐらいわからなければ、総支配人はできないよ」

「そうなんですか。俺はそんな離れ業は、できそうもないです」

「いや、ソウトメ殿は十分じゃないか? この大陸でおそらく、いや、この世界でも屈指のね、回復魔法の使い手だろうから」

「そうなんですか?」

「そうだよ。私が知る限りだけど、この大陸の魔界側にも、ソウトメ殿ほどの回復魔法を使える者はいないと思う。いや、過去にはいたかもしれないが、現役ではどうだろうね? 先の大戦で、亡くなってる人の中にいたかもしれない」

「先の大戦、ですか?」

「あぁ。今より三百年以上、私が生まれるより前の話さ。文献でしか知らないから、話してあげられることは少ない。けれど、その大戦が原因で、『悪素が発生したのではないか?』とも言われているのは事実だね」

「……そうなんですか」

「君に嘘は言わないよ」

「悪素の発生原因はわかっているんですか?」

「それらしい場所は調査されてる。けれど、そこに至るまでに、調査に赴いた者たちが戻らなかった。それを確認にいった者まで、死んだのではないかと言われていてね。おそらく『即死する何かがあるのではないか?』とだけ残されている。『龍人族の聖女様ならあるいは?』と言われているが、万が一、聖女様を亡くすことがあってはいかないだろうから。未だに調査すら進んでいない状況、としか言えないんだよね……」


 俺が思っている以上に、悪素の闇は深そうだ。もし俺がそこへ行ったとして、即死、蘇生、即死のコンボでやられたら、身動きがとれないどころの話じゃないかもだわ。こえぇ……。


「それよりもだよ、ソウトメ殿」

「はい」

「ギルドとして、いや、このワッターヒルズとしてはね、黒森人族の皆さんが移り住んでくれるのは、大歓迎だったりするんだ」

「はい?」

「私も噂でしか知らないんだが、黒森人さんはね、金属、木材、石材の加工から修繕に至るまでを得意としてる種族だと聞いているんだ」

「そうなの? コーベックさん」



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