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第10話 めっちゃ緊張する。

「こちらはですね、登録された方のランクに合わせた、依頼票になっています。上から高いランクで、一番下が初心者の方々が受けられるものになりますね。お客様の、えっと、なんとお呼びすればよろしいでしょう?」

「あ、俺はタツマって言います」

「ありがとうございます。こちらに掲載しているランクは、一番下がF級で、一番上はA級になります。それ以上のものは、ここでは掲載してはいませんが……。タツマさんの受けたいと言われた依頼内容ですと、どうしてもD級からになってしまうのです」

「なるほど。荷を受け取って配達とはいえ、信用がないと難しいということなんですね?」

「えぇ。この城下町の中だけであれば、タツマさんのような方が受ける仕事は、荷車や馬車があれば済んでしまうものですから」


 そりゃそうだ。空間魔法みたいな収納系の魔法を持ってるメリットは、せいぜい大物を運ぶくらいだろうから。そうでなければ、国から町、国から国みたいな長距離じゃないと出番はなさそうだからね。


「そうなんですね。これだけあると、目移りしてしまうので探すのもかなり大変そうで……」

「大丈夫ですよ。冒険者の方々に、適正なお仕事をおすすめするのも、私たち受付の仕事ですから」

「それは助かりますね」

「では、ご登録だけでも先にされますか?」


 ここまで丁寧に説明してくれたなら、登録くらいいいかな? って思っちゃうよね。ジュエリーヌさんって、いい笑顔するんだよね。昨日のメサージャさんといい勝負くらいにね。


「んー、じゃ、お願いしようかな?」

「はい、ではこちらへどうぞ」


 ドアの表にある『未使用』のプレートをひっくり返すと『使用中』に表示が変わるんだ。なるほどねー。案内されたのは、驚きの個室。部屋の中は、壁が木造。匂いもなんだろう、落ち着く感じだね。


「こちら、おかけになってください」

「あ、はい」


 ジュリエーヌさんはドアを閉めると、内鍵までかけるんだ。外の音が全くしないほどの防音効果があるみたい。テーブルの上には、何やら見慣れたものが置いてあるんだけど……? これってあのとき見た、『個人情報ダダ漏れタブレットもどき』に似てるんだ。


「あ、あのこれって、こ――」

「安心なさってください。登録時の記入をサポートするための魔道具になっております。もちろん『個人情報』は守るとお約束させていただきます。もし漏れるようなことがあれば、一番の容疑は私にかかりますので、ほぼ間違いなく牢屋行きですから……」


 牢屋行きって……。ジュリエーヌさんの眉がハの字になって、困った顔になってるわ。それより何より、美人さんと二人っきり個室だよ? なんだか、彼女の方からいい匂いがしてるし。めっちゃ緊張する。こんなとき、平然としていられるんだろうな? リア充だったら、……爆発しろ。ちくせう。


「私を、このギルドを信頼された上で、ご登録されるなら作業を進めさせていただきますが?」

「あ、うん。お願いしようかな?」

「かしこまりました。少々お待ちくださいね」


 もどきタブレットの上側に、キャッシュカード大の何かを填める部分があるなと思ってたら、似たようなカードを置いたんだよね。おまけに、あっちにあったタブレットもどきみたいに、ちょっと大きな手の形に似たものがあるんだよ。


「では、この形に沿って、手のひらを置いていただけますか? 年齢、性別、お名前、主要スキルが表示されますの――」

「これでいいのかな?」

「あ、そ、それでいいんですけど……」


 いいきる前に置いちゃった。うん。確かに年齢と、性別、名前、スキルが表示されてるう。スキルレベルもあー、数字のところだけ表示されんのね、やっぱし。これ作った人、同じなんじゃないかな?


「空間属性レベル1、回復属性レベル2ですね。回復属性もお持ちだなんて、依頼選択の幅も広がって良いと思います」


 あれ? と思って、俺は『個人情報表示』をするように念じる。すると出てきた画面に表示された回復属性はこうなんだよね。


 回復属性: 20(32)


 やっぱり、右側の『(ゼロ)』は読めない仕様なんだ。それよりも、回復属性持ってること褒められたんだけど……?


「回復属性って珍しいんですか?」

「そうですね。二百人、いえ、五百人にひとりくらいでしょうか?」


 珍しいんじゃないかっ! どこが珍しくない、あー、王家的にみたらってことなのかもしれないな。一般人レベルから言えば、珍しいスキルなんだよきっと。


「……あら? 31歳だったのですね。20代中ごろかと思っていました」

「おっさんだからごめんね」

「いえ。私は今25なので、お兄さんという感じですよ?」

「お世辞でも嬉しいです。あ、これだけ個人情報ダダ漏れしたんだから、秘密は守ってもらえるんですよね?」

「えぇ。もちろんです」


 俺は気になったんだよ。悪素毒が実はもっと、深刻な状況なんじゃないかって。


「そしたら、ちょっと手を見せてもらってもいいかな?」

「男の人に手を握ってもらうのは、久しくなかったもので……」


 そんな、横向いて頰を染められても困るんだけど。ってことは、ジュリエーヌさん、フリーなのか?


「いやそうじゃないってば。俺ね、南側にある小さな村出身なんだけど」

「嘘ですよね?」

「はい?」

「だって、家名持たれているではありませんか? 小さな村には村長以外……」

「あー、そっか。やっぱり、個人情報ダダ漏れってまずいよなー……」

「私も家名はありませんよ? 普通、この国では、大店の主人や、騎士さん以上でしょうねぇ?」


 じと目で見るんだよ。口角をちょいと持ち上げるようにして。


「あー、そのあたりはノーコメントで。この国の生まれじゃないことだけは、当たってるけどさ」

「もしかして、ほかの国の貴族様だったり――」

「しません。そのあたりもノーコメントで」

「わかりました。これ以上はツッコミしないことにしておきます」

「助かるよ。それでね、俺は『悪素毒』について調べてるんだ」


 握ってたジュリエーヌさんの手が、少し動揺したかのように動く。


「手袋、外してもいいかな?」

「……はい」


 手袋を外して、手をひっくり返して指先を見ると、やっぱりな……。指先から5ミリ、いや、1センチ弱くらい黒ずんでるんだよ。どの指もそうだ。爪との隙間なんてまるで、機械油が染みてとれないように見える整備士みたいだ。


「悪素毒の症状、かなり進行してますね。痛くないですか?」

「否定しません。お風呂に入ったときや、お酒を飲んだときは、かなり痛みます」


 やっぱりね。メサージャさんより酷いかもしれないわ、これ……。



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