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召喚されたのはオネェと高二の弟でした

作者: ゆきのん
掲載日:2022/04/25

召喚物で、召喚されたのがオネェだったらって思いついてしまったんだ……!

忘れないうちにノリと勢いで書きました!

相変わらず、誰得かは分からないお話です!

 今、この国は滅亡の危機に立たされている。

 遥か過去に勇者と聖女が封じた悪魔の封印が長き時を経て綻び、解けそうになっているのだ。

 国の総力を挙げて綻びと共に現れた魔物を倒し、再度封印しようとしたが無理だった。

こうなれば、残る手段はただ一つ。再び、勇者と聖女を召喚し、悪魔を封じて貰うしかない……!


 そう、思っていた。


 なのになんだこれは。私たちは勇者と聖女ではなく、悪魔を召喚してしまったのか!?


 召喚陣の中にいるのは二人。

 一人は眼鏡をかけた短い黒髪に、襟に詰まった黒い服を着ている十代後半と思しき少年。

 もう一人は、癖のある栗色の髪を背中に流した少年より少し背の高い男だ。

 男なのだが……。


「あーら。可愛い子ね! アタナがアタシたちを召喚したの? まさかアタシが召喚されるなんてびっくりよ!」


 そこまで野太くはないが、確実に女性とは言えないテノール。

 一件細身だけど鍛えられているのが見てわかる四肢。

 しっかりと施された化粧と女性のような仕草と口調。

 どこをどう見ても、怪しい。


 隣に大人しそうな少年がいるから余計にそう見えるのか分からないが、怪しい。


「兄さん、ステイ。驚きか警戒か分からないけど、この人たち硬直してるよ」


 少年がそう言って男の頭を叩くと、頭がずれた。

 もう一度言う。頭がずれた。


「頭が!?」


 頭がずれるなんてやはり悪魔かと思っていたが、良く見れば鬘のようだ。


「それにしても異世界転移なんて本当にあるんだね」


 少年は興味深そうに部屋中を見渡している。

 この部屋は召喚用に全ての家具を退けたので、見て面白いものなど何もない筈だ。


「それで、俺たちを召喚した理由を教えて貰える? 嘘とか下らない理由ならどうなるか考えた上で説明してね?」


 微笑みは穏やかに見えたのに、後半は黒かった。微笑みだけで威圧されてしまった。


 この少年も悪魔なのか!? 私は悪魔を二体も召喚してしまったのか!?

 だが先ほどの召喚で魔力はもう空だ。勝てるとは思わないが、戦うしかないのか。


 なんとか腰に佩いた剣に手を伸ばすと、大きいほうの悪魔が手を伸ばしてきて剣を抑えた。


「だめよー? この子ちょーっと腹黒くてびっくりするかもしれないけど、暴力は反対だわ。まずはお話しましょ? ね?」


 しっかりと化粧の施された顔でウインクされて、呆気に取られてしまった。


 悪魔は、好戦的で、人を恐怖に陥れて楽しむ。そんな存在のはずなのに。


「アタシはエイコ。エイコお姉さまって呼んでね? こっちは弟も大輝よ。アナタの名前は?」

「……リオ」


 悪魔に名を知られてはいけない。だから悪魔に名乗る時は偽名を名乗る。真名と違いすぎる名前だと気づかれてしまうから、真名に掠る偽名だ。


「そう、リオちゃんね!」


 エイコと名乗った悪魔は楽し気に両手を合わせるが、タイキと呼ばれた悪魔は頬杖を突いて冷ややかにこちらを見ている。


「それで、リオちゃんがアタシたち召喚した理由教えてくれるかしら? あ、間違いとかでも良いのよ? でもちゃんと帰れるのよね?」


 流れるように問うエイコに、距離を取ったまま一つずつ説明していく。


「私がお前たちを召喚したのは、この国を救って貰うためだ。この国はかつて、悪魔に滅ぼされかけた。その時異世界より召喚された勇者と聖女の力で悪魔は封印されたが、今、長き時を経て封印が解けかけているんだ……」


 窓から見える空は淀んだ灰色。

 もう日の光なんて何か月も見ていない。

 このままでは食料が尽きるか、悪魔が封印から解放されてこの国を亡ぼすかどちらが早いかと言う状況になってしまう。


「自分たちでどうにかしようとしたの?」


 冷ややかな笑みを浮かべるタイキに頷いて返す。


「兄さんたちは、兵を率いて悪魔の封印されている地に向かった。だけど皆、封印の綻びから生まれた魔物に殺された……!」


 優しくて強い兄たちだった。

 必ず帰ると約束したのに、誰一人帰って来なかった。

 父も封印の地に向かい、母は必死で国を支えようとしている。


「私は魔物と戦えるだけの力がない。だけど魔力はある。だから、伝説でも何でも良いから、助けてくれる人を、願ったんだ……!」


 堪えきれずに涙が溢れる。

 情けない。悪魔の前で泣くなんて、命を差し出しているようなものなのに。


「嘘、ではないようだね」


 窓の外を見るタイキの視線の先は、人気のない町と、今にも枯れそうな庭園の植木達。


「でも、アタシたち至って普通で、特別な力なんてないわよ?」

「嘘だ! 悪魔に力がないんてあり得ない!」


 そうだ。召喚してしまったのが悪魔だとしても、悪魔に悪魔をぶつければ良い。

 悪魔との契約には対価が必要だから、私の命を差し出せばきっと動いてくれるはずだ。

 なのに、目の前の悪魔たちは何度か目を瞬いた後大笑いし始めた。


「ちょっ、アンタ黒すぎて悪魔扱いされてるわよ!」

「それ兄さんだろ! オカマが、初めて見る人には悪魔に見えるなんて……!」

「オカマじゃないわ! オネェよ!」


 叫ぶエイコに思わず一歩下がってしまうが、その所為で二人はこちらを見てしまった。


「あら、怖がらせてごめんねぇ。でもリオちゃんも酷わ! アタシたち悪魔じゃなくて人間よ!」


 ぷんぷんと怒るエイコの言葉に、思わず目が丸くなった。


「悪魔じゃ、ないのか……?」

「残念だけど人間だよ。それより、前に来た勇者と聖女はどんなふうに戦って悪魔を倒したの?」


 呆れを隠さないままタイキが問うてくるので、召喚前に読んでいた本を見せた。

 子供向けの、勇者と聖女のお話だ。


「ふぅん……。勇者が悪魔を弱らせて、聖女が封印した、ねぇ……」


 黒い笑みを浮かべながら本を読むタイキから距離を取っていると、タイキが顔を上げてにっこり微笑んだ。


「兄さんはともかく僕は荒事なんて無理だよ。だから荒事以外で出来そうなことを教えてくれる? この召喚術みたいなの」


 タイキは魔術を教えたら良いのだろうか。


「あら、アタシだって荒事は苦手よ?」


 エイコが唇を尖らせるが、少なくともタイキよりは向いているだろう。


「二人には、何が出来るか一通り試して欲しい。その上で、出来るなら悪魔の再封印に手を貸して欲しい」


 まずは二人を部屋から出しても良いのか悩んだが、このままではこの国は亡びるだけだ。ならこの国を守るために何かあれば私が盾になれば良い。

 私は母以外で残っている、最後の王族なのだから。

 国を守るために命を差し出す覚悟は出来ている。




 母に二人を紹介した時、母は疲れすぎていたのか、お迎えが来たのかと目を閉じてしまった。

 慌てて私が召喚したのだと伝えると、ピンと背筋を伸ばして二人に頭を下げた。

 エイコは顔を上げるように言い、タイキは魔導書を見たいと言った。


 母はすぐに二人の要望を叶えるように伝え、そこから二人の快進撃が始まった。


「……やっぱり悪魔じゃないか?」

「そうねぇ。アタシもちょっとそう思うわ」


 王都から離れた草原で、高笑いをしながら高等魔術を放っているのはタイキ。

 済まないが、悪魔だと言われても納得してしまえる光景だ。


「それにしても、本当にアナタも行くの?」

「勿論だ。お前たち二人に全て押し付けるわけには行かないからな」


 以外なことにエイコは癒しの魔法や浄化魔術を身に着けた。おかげで怪我をしてもすぐに治る。

 高等魔術を使えるタイキと癒しと浄化の魔術を使えるエイコが居れば、悪魔をもう一度封印することも可能だ。


「でも……アタシ心配なのよ。リオは女の子なのに、毎日顔も傷だらけにして……」

「それは、私が弱いからだ」


 そう、私は弱い。女だから非力で、封印の地に向かうには危険だと言われ遠ざけられた。

 だけど父も兄たちもみんな死んでしまった。残っているのは私と母だけ。


「私は、王族として責務を果たす。例えこの命果てても、必ずこの国を守って見せると決めたんだ」


 その為なら顔の傷なんて気にならない。民の命のほうが大切だから。


「……ほんと、これだから目を離せないのよね」

「毎日治してくれた傍から怪我をして済まない」


 エイコは私がいると面倒だから大人しくしておいて欲しいかもしれないけど、引く気はない。


「もう! そうじゃないわよ!」

「ならどんな意味だ?」


 二人を召喚して一週間と少しで、少なくともエイコの事は怖くなくなった。メイドたちもエイコと仲良くなって化粧の仕方を教え合ったりしているらしい。


 エイコを見上げると、エイコはじっと私を見下ろした後、不意に私の顎を掴んで持ち上げた。


 少し動けば触れる位置にエイコの顔がある。


 驚き目を見開いていると、エイコはいつもの緩い微笑みではなく、真顔で私を見ていた。


「こんな風に、悪い狼に食べられるってことだ」


 口調もいつものオネェ口調とやらではなく男性の口調で、その所為かいつもより低く聞こえる気がした。


 ぎらついた目はエイコの言う通り狼のようで、ぴりりと緊張が走る。

 だけど触れたのはエイコの指で、しっかりと手入れされた指が私の唇をそっと撫でる。


「悪魔を倒すまでは我慢するつもりだけど、その後は覚悟してね?」


 タイキと良く似た表情で笑うと怖いのに、何故か色気があって目が離せなかった。




 ***




 高二になったばかり弟は、自分の興味のある事にのめりこむタイプだからあんまり身なりに気を使わない。

 逆にアタシは小さい頃からヘアメイクに興味があって、身だしなみには人一倍気を使う。


 足して二で割れば丁度良いのに。なんて言われたことは数えきれない程あるけど、アタシは今のアタシが好きだし、大輝も楽しそうだから周りの言葉なんて気にしない。

 だけどあんまり酷い時は無理矢理髪を切りに行かせて、ある程度の清潔感を保つようにさせているわ。


 あの日は、丁度大輝の学校が終わった後に髪を切りに行かせて、さっぱりしたのを確認してから二人で家に着いた時だった。

 足元から光が溢れたと思ったら、薄暗い部屋の中に女の子が一人立っていたの。


 化粧っ気のない顔に、シンプルなシャツとズボン。上からローブを羽織っていたから性別は分かりにくかったけど、声音とか、ちょっとした仕草で女の子だってすぐにわかったわ。


 あの時はばっちりメイクしていたからちょーっと怖がられたけど、悪魔扱いは酷すぎないかしら。


 でも、リオちゃんが置かれている状況を聞いて、あの子はどんどん家族を失って、頼れる人もいない中で自分に出来る最善を尽くそうとしたのだと分かったわ。


 頼れる筈のお母さんも国を支えるのに必死でリオちゃんを心配する余裕もない。

 届くお父さんの訃報。


 どんどん追い詰められていくリオちゃんが一度も笑っていないのに気づいたのは何日目だったかしら。


 大輝と同じ今年十七歳になる女の子なのに、自分の苦しみや悲しみに蓋をしてこの国を生かすことだけ考える。


 それはとても尊いことかもしれないけど、アタシにはとても辛いことに思えたわ。


 だからアタシは必死になってリオちゃんを甘やかして自分を頼るように言って、気が付いたらリオちゃんが目を離せなくなっていたわ。


 情けないわ。リオちゃんが大輝を誉めるだけでも嫉妬しちゃったんだもの。

 でも……アタシはリオちゃんに男として見られていない。

初めにお姉さまって呼んで。なんて悪ふざけしたのも悪かったかも知れないけど、今は、あの子に一人の男として見て欲しい。


 あんまりにも無防備だから、キス直前でアタシを男だと意識させようとしたら、本音が思いっきり漏れた……!


 恥ずかしいし情けないけど、あの子動けば触れる距離なのに逃げる方向にも動かないし、触れた唇柔らかくてついいっぱい触っちゃったのよ!

 その癖後から真っ赤になって逃げて行って、可愛すぎて仕方ないわ。

 あぁ、でも……悪魔を倒すまでは触れるの我慢するわ。その間にアタシのこと一人の男だとしっかり意識して貰うんだから!




 ***




 突然のエイコの豹変に狼狽えるリオと、旅に間にリオを囲い込もうとするエイコ――いや、兄英司の謎の戦いは、悪魔を倒すまで何故か俺を挟んで続いていた。


 いや、本当になんで俺を挟むんだ。

 色恋、しかも兄の片思いとアタックを間近で見守るとか凄く嫌なんだけど。


 悪魔はまだ封印が解け切っていないのもあって、兄の「リオちゃん娶るためにさっさと消えろやボケがぁ!」と言う一撃で消えた。

 そこに至るまでの魔物は俺が倒したけど、最後は本当に一撃だった。


 そんなわけで悪魔を倒した兄は本格的にリオを口説き、城に戻る頃にはリオは何とか最後の一線を保っているような状態にまで追い込まれていた。

 あ、勿論帰り俺はずっと一人部屋ね。巻き込まれたくないから。


 国を救った褒美に何が欲しいと言われて兄は速攻でリオを娶りたいと言い、俺は世界中の魔導書を求めた。


 元の世界に帰ることも考えたけど、あの世界よりこっちの方が俺には心惹かれるものが多い。

 兄もリオがいるから戻るつもりはないだろう。


 とりあえずこの国にある魔導書全てを読む権利を得た俺は、魔導書を読んでは試し打ちに行くを繰り返した。


 途中でドラゴンを倒したり、大規模な火災を食い止めたりしたみたいだけどあまり興味はない。

 それより今は、俺の世話を焼いてくれるメイドさんが少し気になる。


 兄がリオに抱いていた思いはこんな感じなのだろうか。


 唯一残っていた王家の娘と結婚した兄はこの国の王になってしまったけど、何だかんだで上手くやっているようだ。

 国は平和だし、兄とリオの間に子供も生まれた。


 悪魔はもういないし、どうやらこの国には恐ろしい魔術師がいるとのことで他の個体がくるとしてもずっと先の事だろう。


 リオが命がけで守ろうとした国は今、みんなの笑顔で溢れている。

何時だってノリと勢いだけど、☆ぽちして頂けると嬉しいです!!

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