シーン1-3/チュートリアル
「きゃ~~~! なんですって!? チュートリアル山賊団~~~!?」
大仰なリアクションと共に叫び声を上げるディーチェ。そんな彼女を見て満足そうに頷いた山賊団は、呆然とする俺の方に咎めるような視線を向けてくる。
「ヒッヒッヒ……おいおい兄ちゃんよぉ、ちょいとノリが悪いんじゃないですかい?」
「フッフッフ……せっかく俺達が名乗ったんだ、そっちの美人な姉ちゃんみたいに驚いてくれなきゃあ、張り合いがねぇってもんだろう?」
「ヘッヘッヘ……こうなりゃ名乗り上げのおかわりだ、行くぜ野郎ども!」
……何これ。アーレアルスの山賊団ってこういうノリなの? 取り敢えず、ここは相手に合わせた方がいいだろう。下手に刺激して面倒事になるのは避けたい。いや、もう既にめちゃくちゃ面倒な気配しかしないのだが。
「くっ……お前達、チュートリアル山賊団か……!」
シリアスな声音を作り、相手の言葉を繰り返す。反応に困った時は情報を復唱して状況が進むのを待つといい、と教えてくれたのは、俺にTRPGを教えてくれた高校の先輩だったか。生前のセッションで培った演技力が、まさかこんな形で役に立つとはなぁ……。
「ヒッヒッヒ! やればできるじゃねぇか兄ちゃんよぅ」
「フッフッフ! この世界を楽しく生き抜くには、ノリと勢いも大切だぜぇ?」
「ヘッヘッヘ! それじゃあ名乗りも終わったところで……怪我が怖けりゃ、金目の物をいくらか置いていってもらおうかぁ!」
いや結局そうなるんかい! マズいな……こちらはまだ互いの性能確認も終わっていないというのに。まして近場の街や村までどれくらいかかるかわからない状況で、所持アイテムや現金を奪われるのは避けたい。
一体どうやってこの状況を切り抜けるべきか。思案する俺の内心など知らんとでも言うように、ディーチェは彼女の武器らしい錫杖を構える。
「はっ、上等じゃない! こっちも伊達や酔狂で冒険に出たわけじゃないの!
全員ぶっ飛ばして、ここら一帯の情報とか色々と吐いてもらうんだから!」
ディーチェの啖呵に、武器を握り直して応じるチュートリアル山賊団の面々。
「ヘッヘッヘ! 威勢のいい姉ちゃんは嫌いじゃないぜぇ? いいだろう! 俺達に勝ったら、この辺りの地図と情報その他諸々を丁寧に教えてやるよぉ!」
「やったぁ! 意外と優しいのねチュートリアル山賊団! それじゃあ行くわよゼノさん、やっておしまいなさい!」
「他力本願もいいとこだな!? あーもう仕方ない、やってやる!」
半ばヤケクソになりながら、腰の刀を抜き放つ。それなりに重量はあるが、ゼノの肉体であれば問題なく扱えそうだ。
「ヒッヒッヒ! いいねぇ、やる気があって眩しいくらいだぜぇ」
「フッフッフ! こいつは丁重にかわいがってやらないとなぁ?」
「ヘッヘッヘ! 俺達が本物の戦いってやつを教えてやるよぉ!」