シーン11-1/汚名返上
ダリルが倒された事で違法ポーションの流通ルートは解明され、青の騎士団による捜査の手が入った。オリエさんに指揮が引き継がれた捜査体制の元、順調に下手人達の炙り出しが進んでいるようだ。
役目を終えた外部協力者である俺達には細かい情報は入らなくなったが、事後処理の説明に訪れたオリエさんの口ぶりから察するに、流通ルートの根絶は時間の問題と思われる。
一方で裏切り者を発見、鎮圧し捜査の発展に大きく貢献した俺達には、青の騎士団から正式な報奨として感謝状と民間人向けの勲章、そして金一封が与えられた。
その勢いで青の騎士団に勧誘されもしたが、厳格な規律に縛られ生前のゲーム知識を十全に活かせない可能性を危惧した俺とディーチェの意見が合致し、そちらは丁重に辞退する運びとなった。
「今回の一件では、私個人としても本当にお世話になりました。おかげで騎士としての使命を果たす事ができたのです」
報奨の受け渡しに俺達が滞在する宿を訪れたオリエさんは、深々と頭を下げると、何度目かもわからない感謝の言葉を口にした。
「うんうん。私としても、仲間の役に立てて嬉しいわ」
「だな。そういえばオリエさん、訊いていいものか迷ってたんですが……ダリルは、その後どうなったんですか……?」
俺の問いかけに、オリエさんの表情に影が差す。尊敬する先輩がああなったのだ、当然の反応だろうが……彼女は気丈に表情を改め口を開いた。
「団の医療騎士が言うには……ダリル先輩は完全には魔族化しておらず、今後の治療で過剰な魔力を浄化できれば人間として生きられるだろう、との事です」
「そうか……ダリルにはまだ戻れる道が残ってたんですね。良かった……なんて簡単に片付けていいかは、ちょっと悩むところだけど」
「っていうか、あんなデタラメな強さだったのに魔族化が完了してなかったのね……魔族ヤバいわー」
もしもダリルが完全に魔族化を終えていたら、恐らく俺達では勝負にならなかっただろう……そう考えると背筋に悪寒を覚える。
魔族の危険性を改めて実感した俺達の様子を見つつ、オリエさんは寂しげに笑って言葉を続けた。
「人間に戻れても、ダリル先輩の罪は消えません。それに私との確執も……今はまだ心の整理がついていませんが、いつか彼と話をできればと思います。
背負わせてしまった重圧や、学んだ教え……時間はかかっても、向き合わなければ前に進む事ができませんから。先輩も、私も」
静かな決意表明に俺とディーチェも笑顔を返し、捜査本部に戻るというオリエさんを見送って宿に戻る。




