シーン10-5/名誉なき戦い
★後攻陣営のメインプロセス/2ラウンド目
「さァて、指導の時間だ……覚悟はできているな? まずはァ……」
雄叫びを上げるダリルが掲げた手の先に魔力の奔流が集中し、巨大な光球へと変化していく。その視線の先にいるのは、俺達の生存能力の要を担うディーチェだ。
「邪魔な防御魔法の使い手から始末してやるよォ!!!」
「いやぁぁぁ!? それどう見ても必殺技じゃない!?」
「落ち着けディーチェ! 防御力が低い後衛でも、問答無用で一撃死なんて――あ、クリティカル」
「えっ」
ディーチェに向け光球が放たれると同時、ダリルの頭上で回転するダイスが6ゾロを示して止まる。
クリティカル攻撃を避けるには、回避の判定でクリティカルを振るしかない。が、そう都合よく6ゾロが揃うわけもなく。
直撃した光球が、ド派手な爆発音と共に光の柱となってディーチェを飲み込む。
「ひっ……ぎぃぃぃやぁぁぁあああッ!?」
「でぃ、ディーチェぇぇぇえええ!」
「ディーチェさん――!」
思わず叫び声を上げて彼女を案じる俺とオリエさん。炸裂した光が収まると、そこには……。
「ぅ、えぐっ……し、死ぬ゛ほど痛い゛……っ」
【HP】計算
ディーチェ:【HP】57/57 → 【HP】1/57
ダリル:【HP】1/80 → 《HP吸収:10》 → 【HP】11/80
「すげぇ、生きてる! ありがとう妖怪1足りない!」
「勝手に殺すんじゃないわよ! 分の悪い賭けだったけど……【革命力】を使わずに正解だったわね」
「え……お前あの攻撃、素の《バリアコート》で受けたのか!?」
「ふ、ふふふ……ゲーム慣れしたゼノが一撃死はないって言ったから、仲間を信じて賭けたってわけ! どうよ、凄いでしょ!」
渾身のドヤ顔を浮かべるディーチェの手首から、露天商に売り付けられたミサンガが切れて落ちる。攻撃の余波に耐えきれなかったのだろう。
そういえばディーチェの奴、ミサンガを付ける時に「最高の出目を下さい!」とか祈ってたな……まさか、本当になるとは……。
俺にドヤ顔を見せつけた彼女は、表情を変えずダリルに顔を向ける。
「ふふん、どうかしら私が誇る防御魔法は! ご自慢の必殺技が防がれて残念だったわねぇ!」
「ほゥ……では追加といこう」
「えっ」
額に青筋を浮かべたダリルの両手に魔力が集中し、今度は2つの光球が出現する。
その様子を目を点にし呆然とて見つめていたディーチェは、額に汗を浮かべて騒ぎ始めた。
「いや、ちょ、待ってよ。必殺技って一発限りじゃないの!?」
「これは私の通常攻撃だ。先ほどより多少は威力が落ちるが……さァ、ご自慢の防御魔法で、信じる仲間とやらを同時に守れるかなァ!」
光球を掲げる両手が、今度は俺とオリエさんに向けられる。この流れはマズい……攻撃と反撃を受けまくった俺の【HP】は、残り19点しかないのだ。
前回のラウンドから判断するに、敵の《HP吸収》は1ラウンドに2回まで。これ以上このラウンドで回復される事はない。それも踏まえて、この状況を打開するには――勝算不明の賭けだが、これしかない。
「ディーチェ! 全力でオリエさんを防御だ!!!」
「えっ!? わ、わかった!」
ダリルの両手から放たれた光球が眼前に迫る。ディーチェは頼み通りオリエさんを防御しているようだ。
確実性など、どこにもない。それでも、ここで俺達が勝ちを拾うには。
「って、ちょっと待ってよ。ゼノはどうやって生き延びるのよ!?」
「あー……悪い、俺はここまでだ」
より現在の【HP】が低く攻撃に耐えられる可能性が低い俺を切り捨て、オリエさんに決着を託す以外に道はない。
光の柱が炸裂し、俺の全身を容赦なく焼き払う。痛みと爆熱の嵐に晒された俺に、もはや戦闘を続けられるだけの余力はなく――。
【HP】計算
ゼノ:【HP】19/76 → 【HP】0/76
力が抜け、立っている事ができず膝から崩れ落ちる。それでも俺は不敵に笑って、仲間への確信と共に呟くのだ。
「後は……任せた……!」
【HP】計算
オリエ:【HP】25/50 → 【HP】3/50
★クリンナッププロセス/2ラウンド目
ラウンド処理続行




