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ファンブル転生 ~未来の悪役、破滅回避を目指してTRPG世界を冒険する~  作者: イズミユキ
第3話/転生1年目、4の月(光の裏月)中旬/虚無の冒険者
59/65

シーン10-4/名誉なき戦い

★戦闘配置(ゼノ視点)


敵陣エリア

 配置なし


前線エリア

 ダリル

 ゼノ、オリエ


自陣エリア

 ディーチェ



★セットアッププロセス/2ラウンド目


 ラウンド処理が進み、再び練技スキルで身体能力を高めるディーチェ。

 敵の【HP】は悪くないペースで削れている。こちらの消耗も大きいが、幸いにして防御の要であるディーチェはまだ【革命力】を残している。

 仮に2ラウンド目で倒し切れなかった場合でも、敵のメインプロセスを【革命力】も使用しての《バリアコート》で凌げれば、こちらの勝ちは揺るがない。

 そんな試算を済ませた俺を見下ろし、ダリルは静かに告げる。


「このまま勝てる、と思っているな? では……本気を出すとしよう」


 直後、ダリルを包む魔力が勢いを増す。相対するだけで肌がひりつくような感覚を伝えてくる魔力の奔流――その中心に立つ巨漢は、楽しげに嗤っていた。


「あァ、ようやく魔力が馴染んできた……ククク、ここからが本番だなァ……!」



★先攻陣営のメインプロセス/1ラウンド目


「ちょっ、戦闘中にパワーアップとかズルくない!? ロマンがあって格好良いなぁとか思っちゃったじゃない!」

「言いたい事はわかるけど、頼むから真面目な空気で戦ってくれ!? 動かれる前に倒せば強化も関係ない! 畳み掛けるぞ!」

「りょ、了解ですっ! 躊躇していられる状況ではないですね……ダリル先輩、覚悟して下さい!」

「くっ……私だって土壇場で覚醒してパワーアップとかしてみたいんですけどー!」


 ディーチェの煩悩の叫びと共に展開された陣術の支援を受け、威圧感を増すダリルの眼前に躍り込む。

 敵の強化は想定外だが、こちらのメインプロセスで倒し切れば問題ない筈だ。そう踏んでスキルを発動し、反撃を覚悟しつつ【革命力】まで注ぎ込んで攻撃を行なった俺だが――。


【HP】計算

 ダリル:【HP】41/80 → 【HP】17/80 → 《HP吸収:10》 → 【HP】27/80

 ゼノ:【HP】37/76 → 【HP】19/76


「なっ……ふざけんなよ回復量まで増えてるじゃねぇか!?」

「ハハハハハ! これが魔道の力か!」


 案の定、カウンターの拳が俺を打ちのめす。しかも回復量が上がった《HP吸収》のおまけ付きだ。

 敵の【HP】回復量が増え、このラウンドで期待できるダメージソースはオリエさんの攻撃のみ。そして、彼女の攻撃力はあまり高くない。

 固唾を呑んで見守る俺達の前で、オリエさんのメインプロセスによる攻撃がダリルを捉える。


「もう終わりにしましょう、ダリル先輩――ッ!」


 敵の回避判定にペナルティを与える《フェイント》のスキルを組み合わせ、裂帛の気合いと共に放たれた打撃。オリエさんの【革命力】でダイスを増加させたダメージロールが適用されるが――。


【HP】計算

 ダリル:【HP】27/80 → 【HP】1/80


「く、仕留め切れない……っ!」

「打撃が軽い! それでは倒れてやれないなァ、オリエェ!!!」

「ねぇ、ゼノ……あれって……!」

「あぁ……あれは……!」


 思わず自陣エリアのディーチェと視線を交わし、同時に叫ぶ。


「「よ、"妖怪1足りないようかい・いちたりない"だぁぁぁ!?」」


 ……説明しよう。

 「妖怪1足りない」と言えば、TRPGユーザーの間でまことしやかに囁かれる怪異の名前だ。

 その怪異は判定やダメージロールなど出目が絡む場面にふらりと現れ、事態の打開に必要な達成値やダメージ量の算出に悪さをする。

 すると何が起きるか?

 その怪異が冠する名前の如く、その場面において必要とされる数値に、僅か1だけ届かない出目が現れるのだ。

 俺も生前のセッションで、何度この妖怪に煮え湯を飲まされたことか……と、感傷に浸っている場合じゃない。

 妖怪のせいでダリルの【HP】が残ってしまった。これはつまり……。



★後攻陣営のメインプロセス/2ラウンド目


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