シーン10-4/名誉なき戦い
★戦闘配置(ゼノ視点)
敵陣エリア
配置なし
前線エリア
ダリル
ゼノ、オリエ
自陣エリア
ディーチェ
★セットアッププロセス/2ラウンド目
ラウンド処理が進み、再び練技スキルで身体能力を高めるディーチェ。
敵の【HP】は悪くないペースで削れている。こちらの消耗も大きいが、幸いにして防御の要であるディーチェはまだ【革命力】を残している。
仮に2ラウンド目で倒し切れなかった場合でも、敵のメインプロセスを【革命力】も使用しての《バリアコート》で凌げれば、こちらの勝ちは揺るがない。
そんな試算を済ませた俺を見下ろし、ダリルは静かに告げる。
「このまま勝てる、と思っているな? では……本気を出すとしよう」
直後、ダリルを包む魔力が勢いを増す。相対するだけで肌がひりつくような感覚を伝えてくる魔力の奔流――その中心に立つ巨漢は、楽しげに嗤っていた。
「あァ、ようやく魔力が馴染んできた……ククク、ここからが本番だなァ……!」
★先攻陣営のメインプロセス/1ラウンド目
「ちょっ、戦闘中にパワーアップとかズルくない!? ロマンがあって格好良いなぁとか思っちゃったじゃない!」
「言いたい事はわかるけど、頼むから真面目な空気で戦ってくれ!? 動かれる前に倒せば強化も関係ない! 畳み掛けるぞ!」
「りょ、了解ですっ! 躊躇していられる状況ではないですね……ダリル先輩、覚悟して下さい!」
「くっ……私だって土壇場で覚醒してパワーアップとかしてみたいんですけどー!」
ディーチェの煩悩の叫びと共に展開された陣術の支援を受け、威圧感を増すダリルの眼前に躍り込む。
敵の強化は想定外だが、こちらのメインプロセスで倒し切れば問題ない筈だ。そう踏んでスキルを発動し、反撃を覚悟しつつ【革命力】まで注ぎ込んで攻撃を行なった俺だが――。
【HP】計算
ダリル:【HP】41/80 → 【HP】17/80 → 《HP吸収:10》 → 【HP】27/80
ゼノ:【HP】37/76 → 【HP】19/76
「なっ……ふざけんなよ回復量まで増えてるじゃねぇか!?」
「ハハハハハ! これが魔道の力か!」
案の定、カウンターの拳が俺を打ちのめす。しかも回復量が上がった《HP吸収》のおまけ付きだ。
敵の【HP】回復量が増え、このラウンドで期待できるダメージソースはオリエさんの攻撃のみ。そして、彼女の攻撃力はあまり高くない。
固唾を呑んで見守る俺達の前で、オリエさんのメインプロセスによる攻撃がダリルを捉える。
「もう終わりにしましょう、ダリル先輩――ッ!」
敵の回避判定にペナルティを与える《フェイント》のスキルを組み合わせ、裂帛の気合いと共に放たれた打撃。オリエさんの【革命力】でダイスを増加させたダメージロールが適用されるが――。
【HP】計算
ダリル:【HP】27/80 → 【HP】1/80
「く、仕留め切れない……っ!」
「打撃が軽い! それでは倒れてやれないなァ、オリエェ!!!」
「ねぇ、ゼノ……あれって……!」
「あぁ……あれは……!」
思わず自陣エリアのディーチェと視線を交わし、同時に叫ぶ。
「「よ、"妖怪1足りない"だぁぁぁ!?」」
……説明しよう。
「妖怪1足りない」と言えば、TRPGユーザーの間でまことしやかに囁かれる怪異の名前だ。
その怪異は判定やダメージロールなど出目が絡む場面にふらりと現れ、事態の打開に必要な達成値やダメージ量の算出に悪さをする。
すると何が起きるか?
その怪異が冠する名前の如く、その場面において必要とされる数値に、僅か1だけ届かない出目が現れるのだ。
俺も生前のセッションで、何度この妖怪に煮え湯を飲まされたことか……と、感傷に浸っている場合じゃない。
妖怪のせいでダリルの【HP】が残ってしまった。これはつまり……。
★後攻陣営のメインプロセス/2ラウンド目




