シーン6-1/捜査は足で
問題の貸し倉庫群までやって来た俺達は、広い倉庫群を効率よく巡回すべく手分けして捜査に取り掛かる事になった。手分けと言っても、ダリルさんとそれ以外の者、という2チームに分かれる程度だが。
青の騎士団の身分を持つ2人を各チームに割り振った上で戦力バランスを考えると、必然的にこの割り振りとなったのだ。
ダリルさんにディーチェを同行させる事も考えたが、大声が基本のダリルさんと、それに呼応してハイテンションで喋りそうなディーチェの組み合わせには多少の不安が残る。
であれば、青の騎士団で捜査責任者を任される実力を持つダリルさんに単独行動を取ってもらうのが安定するだろう、という判断になったのだ。
「ダリル先輩、どうかお気を付けて」
「うむ、オリエも気を付けてな! 普段と違う捜査の形だが、これも良い勉強の機会になるだろう!」
「ダリルさん。声、抑えて抑えて」
「おっと、これは失敬した……!」
そんなやり取りを経た後、俺達は倉庫群を巡回していく。違法ポーションの売人が逃げ込んだという以上、流通元の拠点ないし薬の保管庫があってもおかしくない。
俺達とダリルさん、どちらが当たりを引くかはわからないが、いずれにせよ戦闘になる可能性は十分にある。
慎重に周囲を警戒しつつ、並んだ倉庫の様子を1棟ずつ確認していくのだが――。
「お前ら、お客さんがいたぞ!」
怒鳴り声と共に倉庫の裏手から現れた数人の男が、一斉に俺達を包囲する。剣呑な雰囲気を漂わせる相手に、オリエさんが一歩進み出る。
「私は青の騎士団のオリエ・シュトルツという者。捜査の一環で倉庫を巡回している最中です。あなた達は?」
「…………」
オリエさんの質問には答えず、代わりに武器を手に身構える男達。国家権力である青の騎士団を相手に暴力で抵抗するのか……無駄に根性あるな……。
「質問に武器を持って応じるとは……すみません、少し荒事になりそうです」
「了解です。ディーチェ、支援は頼んだぞ」
「任されたわ! 見るからに怪しい連中ですもの。叩きのめして話を聞かせてもらうとしましょ!」
相手に合わせて俺とディーチェも武器を構え、格闘術が主戦法であるオリエさんも両手の拳を握り締め、片足を引いて臨戦態勢に移る。
騒ぎを聞きつけてダリルさんが合流してくれれば楽になるが、自力でどうにかする前提で考えた方がいいだろう。
「はっ! 男の方は絶対にぶっ殺すとして、美人な客は丁重に歓迎しないとなぁ!」
いかにも悪役ですといった男達の下卑た笑いと共に、戦端が開かれる。
……というか、どうして俺にそんな殺意が向いているんだ……?




