シーン5-3/名誉ある手伝い
「つまり……騎士団が追っている違法ポーションが、ゼノが魔剣聖になっちゃう原因かもしれないって事!?」
「ゼノが魔族に堕ちた原因は不明とされているから、断定はできない。けど、ルールブックにはこうも書かれていたんだ。
『剣聖ゼノの魔族化も含め、ゼノの厄災の裏には、世界の混乱を狙う何者かの暗躍があったのかもしれない』
青の騎士団が違法ポーションを根絶できずに、製法が暗躍する何者かの手に渡っていた可能性は十分にある」
ようやく事の重大さを理解したのだろう、ディーチェは真剣な表情で頷いている。そんな彼女に、改めて今後の行動方針を伝える。
「ゼノの破滅を回避する確実な方法は、魔族化を防ぐ事だ。今回の一件が俺達の最終目的に合致しているかもしれない以上、本気で取り組んだ方がいい」
「わかったわ。心してかかりましょ」
「あ、あの……深刻な様子ですが、何か問題でもあったのですか?」
振り返ると、オリエさんが心配そうにこちらを見ていた。
「ああ、いや。ディーチェに違法ポーションと魔族の危険性について軽く説明をね、ははは」
「そうそう、そうなのよー。うふふ」
「な、なるほど……? ともあれ、我々が囮捜査までして流通ルートをを追っているのは、そういった事情からなのです」
疑問符を浮かべつつも必要以上に詮索してこないオリエさんに内心で感謝しつつ、改めてこの事件に関わり、解決を手伝う事を決意する。
ゼノを待ち受ける破滅の運命を回避するためにも、絶対に違法ポーションの流通を根絶して――。
「戻ったぞ!!!」
詰所の入り口から響いた大声に思考が中断される。顔を向ければ、捜査から戻ったダリルさんが近付いてくるところだった。巨漢だけあって相変わらずの迫力だ。
「ダリル先輩。そちらはどうでしたか?」
「うむ! 逃走した売人の足取りが掴めたので、合流して追跡しようと思ってな!」
「おぉ……流石は青の騎士団。仕事が速いわね」
「だな。それじゃ、俺達も行くとするか!」
騎士団の詰所を後にした俺達はダリルさんの情報に従い、王都の外縁部にほど近い民間の貸し倉庫群へと向かう。
さて、一体何が待っているか……。




