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ファンブル転生 ~未来の悪役、破滅回避を目指してTRPG世界を冒険する~  作者: イズミユキ
第3話/転生1年目、4の月(光の裏月)中旬/虚無の冒険者
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シーン4-1/事なかれ

 紆余曲折の末、俺達は遂に冒険者ギルド:ティアストール支部に到着した。まさか辿り着くだけでこんなにも様々なイベントに出くわすとは思わなかったが、ようやく目的地に足を踏み入れる事が叶ったのだ。

 ギルドに入ってすぐ目についたのは、右手側に設置された巨大な木製の掲示板だ。受付中の依頼概要が貼り出されている前では、冒険者が掲示板を眺め、自分の力量に見合った依頼を品定めしている。俗に言うクエストボードというやつか。

 視線を左手側に移せば、ギルドに併設された酒場の喧騒に出迎えられる。一仕事を終えて戻った冒険者達の打ち上げだろうか、テーブルには見るからにスタミナが付きそうな肉料理の大皿が鎮座し、数人の男が木製のジョッキを手に持ち笑い声を上げている。

 そして顔を正面奥に向ければ、いかにもここが受付です、といった様子で横並びに設置されたカウンターが目に入る。カウンターの向こう側から人当たりのいい笑顔を見せているのは、ギルド職員の受付嬢だろう。


「すげぇ……本当に冒険者ギルドだ……」


 生前、TRPGを遊ぶ中で幾度となく世話になった架空の施設が、現実の光景として眼前に広がっている。その事実に感動を覚えて呟いた俺に、隣のディーチェもまた、楽しそうな笑顔を向けてくる。


「ふふっ。言ったでしょー? この転生は紛れもない現実だって。ワクワクしてきたかしら?」

「ようやく実感が追いついてきた気がする。俺、本当にブレイズ&マジックの世界に生きてるんだな」

「ええ。今はここが、あなたの生きる世界よ。さあ、素敵なセッションを目指して、冒険者登録を済ませましょ!」

「ああ、そうだな!」


 湧き上がる興奮を抑えきれず、足早に受付へと向かう。見慣れない顔である俺達の様子を観察していたのだろう。受付嬢さんは、にこにこと俺達の言葉を待ってくれている。

 カウンターの正面に立ち、緊張と高揚を落ち着けるべく深呼吸し、口を開く。


「すみません。俺達、冒険者登録を――」

「失礼する! 人を捜しているのだが!!!」


 記念すべき第一声は、ギルドの入り口から響いた大声に掻き消された。悲しい。

 受付嬢さんが向けてくる同情の視線を感じつつ一体何事かと振り返ると、入り口の逆光を背に2人の人影が立っていた。

 片方は人族の大男。恐らく先程の大声の主だろう。動きやすさを重視したポイントアーマーと呼ばれる軽鎧を身に纏っている。

 もう片方の人影は、墨を流したような黒髪と、顔の一部に竜種の鱗を持つ凛々しい顔立ちの竜人族の女性。こちらも動きやすさ重視の軽装を纏っている……というか、凄く見覚えのある人物だ。


「ゼノ。あれってさっきのフードの人じゃない?」

「あ、ああ……」


 白髪に赤い両目を見開くディーチェの様子は余計と1ゾロっぽく見えたが、今はそれどころではない。

 そう。ギルドの入り口に立つ女性は、俺達が青の騎士団に引き渡した、怪しい薬の買い手に間違いなかった。

 そして、俺が絶句しているのはそれだけが理由ではない。いきなり現れた2人組の胸には、ティアストール王国を守護する騎士の証、つまり「青の騎士団」のエンブレムが据えられていたのだ。


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