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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
93/105

10 偵察へ

平和な日々が続いてほしい。そう願っていたコノエだったが、とんでもないニュースが舞い込んで来た。


事実を知る為にと、コノエは1人動く。

 夕食後、あんまりやる事もなく、少し散歩をしている。この星にも、多少季節の移り変わりのようなものがある。と言っても、僕が居た地球とは全く違う。やっぱり大きくて質量もある星だからか、場所によっては気温の変化の差が激しい所もある。


 ここは、あんまり寒くならない場所で、割りと高温な事が多い。あと、乾燥している。だから、肌とかも乾燥しやすくて、潤いを保つ化粧水とかがよく売れる程だ。

 なんて事を考えちゃうのも、この身体になってからだね。女子の身体って、男子とは違うんだなってハッキリ分かる。この柔らかい肌も、ちゃんと意識してケアしないとあっという間にカサついてしまう。


「まぁ、元の男性の身体に戻るのは無理そうだし。だからって、こう……何ていうか、青春ラブコメみたいなのが出来るかって言われたら、それも難しいだろうし。厄介な世界に放り込まれたよ」


 あの国の軍から離脱して、場に流されるのではなく、自分なりに考えていると、どうしてもセンチメンタルになる。望郷の思いまで湧いてしまう程だよ。


 アニメ、ゲーム、沢山の音楽、郷土料理、ジャンクフード、他にも沢山の娯楽と食、更に住環境に恵まれていたあの国。かなり幸せな方だったんだなぁ。


 何て考えている間に話しかけて欲しかったんだけれど、ガイナバさん。後ろにずっといるんだもん。一定の距離でさ。あ〜もう。


「ガイナバさん。何か用?」


 話しかけるタイミングを見計らっていたとしても、こんなに時間かけていたら逆に怪しくなるって。


「む……すまん。何をどう話そうかと思ってな。お前が傷つかないようにと思うと、中々言葉がな」


「別に、そんな気遣いしなくても」


 だいたい聞きたがっている事は分かっているよ。


「そうか。それなら単刀直入に聞くが、仲間だった者達と戦えるのか?」


「……うん。って、100%完璧にとは言えないかも。事情を知らない人もいる。その人達と相対したら、多分説得しちゃうと思う。知らずに戦わされているんだから」


 ただ、今あの国がどうなっているかは分からない。ジ・アークもどうなっているか分からない。コルクやツグミ、レイラ隊長。そして、アルフの事も。

 あの国が何で、中立部隊にちょっかいを出したのだろう。こうなることは分かっていただろうに。


「戦争というのは、時として我々の予想を上回る事が起きるものだ。あの中立の軍は、その辺りの事が抜けている」


「……というと?」


「まだ憶測でしかない。ただ、お前がアルツェイトにいたから、もしかしたら仲間を助けようと動くのかと思ってな」


 それで心配になって、僕の後をつけていたのか。


「心配性だね。僕に何があったかーー」


「アルツェイト国を潰す為に、どこかの国がアルツェイトの軍のフリをして攻撃した。とまでは考えないか」


「…………」


 いや、いやいやいや。何そのめちゃくちゃな作戦は。そうだとしても、あの中立軍もバカじゃないから分かるでしょう。


「我々を下と見て、平和の為にと武力を押さえつける様な奴等が、他を侮るなんてのはよくある事だが」


 そう言われると現実味が出るから。いや、実際には本当にそういう事はある。客観的に見ると、何でそんな事も分からないのかっていうことを、国のトップが平気でやることはよくある。


 恐らく、価値観や感覚が違うんだ。更に、その人の気持ちや他者に対する思いが乗ると、僕達とは全く違う判断をする。それが例え、僕達や他の人が理解出来ないような行動だとしても……。


「………」


「ふむ。どちらにしても、コッソリと調べたいのなら、少人数で情報収集をするんだ。あれが事実かどうかも、こちらには分からんからな」


 ガイナバさんは、比較的落ち着いて話している。今回の事、下手したらまた戦火が激化するかもしれないんだ。やっぱり、ある程度は知りたいんだと思う。最悪の場合、ここからも逃げないといけないだろうからね。


 確かに調べられるなら調べたい。ただ、ジ・アークの人達に見つかる事だけは避けないと。


 その場合ーー


「もし、行っていいのなら、僕一人で行かせて下さい」


「…………」


 ガイナバさんは、特に驚く事なく目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。多分、僕のこの返答も予想していたのだろう。ただし、出来たらこの返答はして欲しくなかったと思う。さっきのはため息だろうからね。


「1ヶ月経っても帰って来なければ、最悪の展開になったと判断し、我々はこの集落を捨て、別の場所を探す」


 それが最大限の譲歩……というか、そもそも1ヶ月も待たないって。こんな話もしないよ。僕とあなた達の間には、特にこれといった約定とかそういうものは無いんだから。


 なんて。僕達もここにいる人達も、もうそういう間柄じゃない。


 仲間。なんだから。


 だから、ちゃんと帰って来ないとね。


「ありがとう。ガイナバさん」


 そう僕は言って、シナプスの方に向かう。早速整備しないといけないし、準備もしないとね。


 ーー ーー ーー


 翌日、朝早くから僕は出発し、情報が集まりやすそうな場所を選んでいる。


 集落の子達が起きる前に出発したから、多分僕が居ないことに質問攻めになるだろう。その辺りは、ガイナバさんがクレナイと何とかすると言っていたし、それは一旦考えなくていい。心配ではあるけどね。襲撃されないか、とかさ。


 ただ、他の国の事や自分の立場も考えて、やっぱり僕が動いた方が良かったと思う。情報収集するにしても、手当たり次第じゃ駄目だもん。となると。


「……やっぱり、バッゲイア諸島かなぁ」


 例の事件があった場所。その辺りから調べるべきだろうね。


 ここからバッゲイアまでは、ひたすら西に向かうだけ。ただ、途中で軍の検閲もあるから、その辺りは回避していくしかない。お尋ね者だからね、僕は。


「ごめんね、シナプス。ちょっと補給とかキツい事になるかもだけど、燃料は半月分は貰ってるし、極力戦闘は避けるよ」


 シナプスの腰部にある収納スペースに、僕の食料と燃料も積んでいる。そのせいで少し動きが遅くもなるから、本当に戦闘は避けていかないと。


「ん〜と」


 そうなると、山からになるな。いや、あんまり時間もかけられないし、遠回りし過ぎてもだね。


「仕方ない。林とか隠れる場所が多い所を中心に行くか」


 そして僕はシナプスを動かし、朝日を背にして走り出す。


 あの集落でも、ある程度の情報やニュースで各国の現状を把握している。ミルディアは動きなし、ラリ国は軍縮されていて、今は戦争が出来る程の力はない。獣人、ビーストマンの動きはない。アングラーも動きなしで、スピルナーは何者かの意思で動いているのか、内戦やちょっとしたいざこざにも出現している。


 僕がここ最近で驚いたのは、カッパーリグンド民和国がミルディアに統合されてしまったこと。そうなると、ミラルド氏の身柄が気になるんだけど、それ以上の情報はいくら探っても出てこなかった。心配ではあるけれど、どうしようもないのかも。どこかで生きていてくれれば良いけれど。


 そして、アルツェイト。何故か軍拡が推し進められていて、バッゲイア諸島でも宇宙ロケットの開発にかなり熱を入れている。それがあって先の事件なんだから、怪しまれるのは当然だけれど、アルツェイト側もそれは分かっているはず。


「この動きは解せないなぁ」


 何者かの策略だとするなら、また戦争が始まるかも知れない。もちろん、あの中立部隊が黙っちゃいないだろうけれど、各国はそろそろ限界だと思う。


「力で押さえつけるだけじゃ……平和なんて……」


 小さな所で、小さな動きで、その準備を着々としているなら、いったいどこの国から仕掛けるのか。その決め手が見つかれば、集落の皆へ警戒として伝えられる。


 あそこに居る人達は全員、戦争なんて望んでいない。なんなら、あの平和がずっと続くと思っている。僕も、そうであって欲しい。それが崩されようとしているのなら、止めないと。


 だけどそれは、力じゃなく……なんて無理か。


「僕にはまだ、答えが出せないか。1人では、どうしようもも出来ない。オルグ、君は今どうしているの?」


 シナプスを走らせ、僕はふとある人物を思い浮かべる。


 あの人は、根っからの兵士だ。軍が無くなっても、戦い続けるのかも。そうだとしたら、あなたの中の平和って何? あぁ、気にしてもしょうがない。だけどこんな時だからこそ気になっちゃう。


 なんだか、まるで恋する乙女のようだ。

最低限の情報網だけでは、今回の事態は分からない。コノエは1人、偵察へと出る。


その頃、ミルディア側は今回の件を調べていて、オルグが状況把握に動いていた。


次回 「11 複雑な心境」

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