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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
91/105

8 それがエゴだとしても

殺さないといけない。そんな事態の中、確実に相手を仕留めていくクレナイに合わせ、コノエも相手機を撃ち、追い詰めていく。そして……。

 クレナイの機体を見るや、敵意丸出しになった、アルツェイトのビースト部隊の2人は、先に翻弄する役割の味方を失ったからか、チームプレーなんてかなぐり捨てて、ひたすらに集中砲火してくる。


「おっと、とっ。クレナイは大丈夫?!」


『ふふ~ん♪ こんなじゃあびくともしませんよ~』


 流石というかなんというか、大きな両腕を前に構えるだけで、イタチの機体の銃撃を防いでいる。

 その火力もさることながら、防御力も半端じゃない。まぁ、クマの機体の攻撃の方が危険かも知れない。いくらなんでも、あの両腕から放たれる爆発を受けたら、クレナイの機体でもダメージを受けるだろうね。だからーー


『うん? くそっ!! やはり俺を警戒するか!』


「当たり前だよ!」


 クマの機体がクレナイに向かって突撃してきたから、尻尾のショットガンを撃って、相手機を足止めする。こいつは僕が押さえておかないとね。パワータイプにはパワータイプをぶつけるのも悪くないけれど、やっぱりダメージとかを考えると、出来るだけ機体の破損は少なくしたいところだよ。こっちは物資とかも限りがあるんだよ。


『ちぃ! おい、お前は一旦距離を取れ! 俺の援護だ!』


『そうしたいが……くっそ、こいつぅ!!』


 あ、クレナイが左腕から重りの付いた鎖を射出して、イタチの機体に巻き付かせた。距離を取って狙撃されると厄介だからね。というか、このイタチの機体の武器、今考えたら完全に失敗している。


『あんたは逃がさないよ~♪ 前に出てきたのが失敗だったね~ショットガンとか色んな銃になるからって、それよっぽど状況把握を瞬時に出来ないと、扱うの難しくない~?』


『なっ!! くっそ、こんな欠陥が! いや、欠陥というか、まだ試供段階だからか……!!』


 しかも、その武器は試供段階ってとこだったんだ。実践で使えるかをテストする為に、この辺りで活動していたのかな? そうなると、クマの機体の両腕の武器もそうかもね。


 ただ、こんな敵国の近くでっていうのが怪しすぎる。


「君達は誰に命令されて、ここで武器のテストをしろって言われたの?」


『…………』


『…………』


 当然答えないか。ただ、この戦闘は正直、なんの利点もないよ。お互い無駄に、命を散らしてしまうよ。いや、無駄とは思っていないか。戦闘データを取れるだけで十分か……それとも、戦闘そのものに旨味があるのかな? 例えば、敵国を刺激させ、攻撃をさせる大義名分を与える為……とかね。


 そうだとしたら、僕達のこの行為は、戦争をしたい何者かの思うがままになる。


「クレナイ。状況的に、戦闘自体がよくないかも。ただ……」


『うん♪ もう1体撃墜したからね~それと、向こうも引く気はないね』


「はぁ……この可能性に、今さっき気が付いちゃったからなぁ……気付かない方が良かったかも」


『え? なになに~?』


「こっちの話」


 さて、クレナイと綱引きしているイタチの機体は、銃の形態を変形させ、今度はライフル式にして、クレナイの機体に向かって撃ちまくっている。彼女の方はビクともしていないけれど、相手がやけくそになっているとも思えない。


『だから、効かないって~♪』


「油断しないで、こっちのクマは僕が引き付けるから、そっちはーー」


『あ、そ~っれ!』


『え? ひやぁぁ!!!!』


「え? あっ……」


 相手を分散させようと思ったけれど、クレナイが左腕を思い切り引いて、相手機を引っ張り上げていた。突然宙に舞ったものだから、相手は混乱してしまい、体勢を立て直すのも遅れた。だからーー


『どっか~ん♪!!』


『ひっ、あっ……ぁああああ!!!!』


 クレナイの機体の、両肩に取り付けられたレーザーキャノンをもろに受け、あっという間に爆発して砕け散った。


『なっ、なな……なんて力を……ひ、ひぃ……』


 あ~クマの機体の方は完全に戦意喪失しちゃった。だからって、このまま見逃すなんて選択肢もない。上に報告されたら、今度は軍が本気で僕を捕らえにくる。そうなると、クレナイ達にも迷惑がかかる。だから……。


「…………ふぅ」


『く、くそ……!! こんな事……こんな事が! 急いでーーあっ……?』


 逃げようとするクマの機体の背後から、コクピットをレーザーライフルで撃ち抜いた。


 その後、その機体はそのまま前のめりで倒れこみ、動かなくなった。


『やるじゃん~♪ 綺麗にパイロットだけ撃ち抜くなんてね。案外難しいのに。緊急脱出装置が作動するから、一発で装置ごと撃ち抜かないといけないし、国によっては停止と同時に爆破させる、なんて機体もあるんだもんね。機体の情報は、その国の軍にとって一番重要な情報の宝庫なんだもん』


 それを分かった上で、じゃないんだけれど、結果としてそうなった。なんというか、ただの僕のエゴだ。お前は今、人を殺したんだぞというのを、その手に、その目に焼き付けておきたかった。忘れていけないと思ったんだ。


 この、ゾワゾワと身の毛が立つような、吐きそうになる程の嫌悪感をね。


「はぁ……はぁ……」


 そんな僕達のもとに、ガイナバさんがジープを走らせてやって来る。


『お、モドのおっちゃん~♪ とりあえず、この機体をーー』


『直ぐに爆破させるぞ』


 すると、機体を回収しようとするクレナイの言葉を遮るように、ガイナバさんは強い口調でそう言ってくる。


『え? なんで~?』


『今、機体が停止した直後に発信器の装置が起動したのか、特定の電波を送信している。恐らく、軍にだ。緊急を知らせる為の装置だろう。パイロットだけじゃなく、機体ごと爆破するべきだ。無意識にでもクレナイはそうしたから、この発信器に気付かなかった』


 ガイナバさんは軍にいたから、そういう装置の電波を調べる装置でも持っていたのかな?

 もしかしたら、パイロットの生体反応が無くなったら、直ぐに起動するようにもなっていたのかも。自分に言い聞かせる為にと思ったけれど、裏目に出てしまった……。


「ご、ごめんなさい……まさかそんな……」


 クレナイが直ぐに機体を放り投げ、また両肩のキャノン砲で機体を爆破してバラバラにしてくれた。

 ただ、一瞬でもその電波が発信されてしまったから、もう軍には異常事態が発生したと判断され、部隊編成に取りかかっているかも。


『直ぐに撤退だ。それと、出来るだけ俺達の痕跡も消しながら行くぞ』


『はいは~い♪ あ、コノエ。あなたのせいじゃないし、あんまり思い詰めないでね。そんな装置、普通の軍の機体にはあんまり付けないよ』


「うん。相手がビースト・ユニットで、アルツェイトにとっては特殊な機体で重要だ。それは分かっていた……分かっていたから、こういう措置もされているって、なんで気が付かなかったんだ……」


『コノエのには付いてなかったんでしょ? その発信器』


「そうだね。ロールアウトもかなり古いし、その時は取り付けられていなかったみたいだ。それと、何だかんだでバタバタしていたから、本国の軍での整備なんて、ほぼされていない」


『それじゃあ気付かないのもしょうがないよ~♪』


 あぁ、もう。落ち込んでいる場合じゃないし、クレナイが元気づけてくれているのも分かる。切り替えないと。


「よし。ガイナバさん。痕跡もだけれど、行きとは違うルートで、ちょっと遠回りしながら細工していかない?」


『ん? ふむ。なるほどな。それで奴等の捜査を遅延させる手立てか』


「そういうこと。ただ痕跡消して逃げるだけじゃ、時間の問題だしね。そういう発信器があるというのも、知れて良かったよ」


 前向きに考えれば、そういう発信器が今のアルツェイト軍のビースト・ユニットに取り付けられているのなら、それを逆手に取ることだって出来るし、必ず爆破させないといけないって分かったから、今度は迷うことなく相手を倒せそうだよ。


『よっし。それじゃあこの辺りも、ちょっと派手に荒らしてーー』


「そういう余計な事はーー」


『しなくていいな。というか、ただその機体で暴れてみたいだけだろう? クレナイ』


『えぇ~?! モドのおっちゃんが久々に喋ったのに、お説教だなんて~』


 クレナイは文句を垂れているけれど、彼女の機体は本来は掘削用として開発された機体だから、こういう荒野で地面を掘ったり岩をひっくり返したり、崖を切り崩したりという事が出来る。


 単純に、それをやってみたいってだけの、彼女の純粋なワガママです。


『あぁ~切り崩してみたいな~あの岩山~♪ がらがら崩れるメロディは、さながら女性のハーモニー♪』


「……相変わらず歌下手だねぇ。クレナイ」


『んなぁ?! 仕方ないでしょ~久しぶりの機体だもん~! やりたいよ~! 岩切り崩したいよ~!』


 なんというか、彼女はその……時々破壊衝動に駆られるというか、土木関係の仕事に就いた方が良いんじゃないかって思うくらい、大型掘削機マニアらしいです。


『ねぇ~ほんのちょびっと削っても良いでしょ~? 先っちょだけ、先っちょだけだから~』


 そんな彼女に対して、ガイナバさんはまた無口モードになってしまいましたとさ。

絶対に忘れない為に、敢えての手段を取ったコノエだったが、それが裏目に出てしまう。

何とかその場は切り抜け集落に戻ったコノエは、孤児の子供達と遊んでいた。


次回 「9 このつかの間の平和」

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