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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
90/105

7 殺す覚悟

穏便に済ませたかったものの、相手は既に臨戦態勢だった。クレナイは何とか対応し、コノエもシナプスで相手機体に対抗する。生きて帰す事は出来ない。コノエに、殺す覚悟が突きつけられる。

 クレナイは血の気が多いというか、先手取るのが早い。それは、相手の敵意を敏感に感じとるからなんだろう。

 今だって、完全に不意をつかれたみたいで、クマのケモナーの人はお腹を押さえて後ずさった。


『ゲホッ。おのれ……』


 それを見て、残りの2人が完全に臨戦態勢になる。なので、僕もサッサッと攻撃して、牽制していかないと。相手のペースになってしまうと、それを覆すのに骨が折れる。


『うぉっ!!』


『気を付けろ! 向こうのビースト・ユニットが……って、あれはシナプスか!!』


 レーザーライフルで、イヌ型のビースト・ユニットの足元を撃ち、一旦意識をこちらに向かせる。その隙にクレナイは走り出し、車の方に向かって行く。

 車の後ろに繋いだ機体を使えば、この3人から逃れる事は出来るだろうけれど、上に報告されてしまうと、今度は部隊を送り込まれるだろう。さっきのミルディアの奴等とは違う。アルツェイトは、シナプスに関しての事情を全て知っている。


『となると……当然乗っている奴は、裏切り者の極悪人、コノエ=イーリアか!』


「裏切り者ね。間違ってはいないけれど、極悪人というのはいただけないな~僕のどこが極悪人だろうね」


『黙れ! 人の心につけこみ、卑劣なやり方でビースト・ユニットを奪いやがって!!』


 事情がある。と言っても、理解も納得もしないだろう。一番尊敬し、信じている人からそう伝えられている。彼等を言葉で止めるのは不可能だし、このまま生きて帰すのも不可能。つまりーー


 殺すしか、ない。


 覚悟は……決めている。つもりでも、やっぱり手が震える。


 迷うな。やるんだ。


 レーザーライフルを相手に向け、今度はイタチのビースト・ユニットに標準を向ける。

 あっちはもう、狙撃の体勢になってる。と言っても、巨大な長筒のライフルを肩に担いで、手元でのパネルで何か操作をしている。


『牽制したつもりか? 残念。こいつはな、こういう事も出来るんだ!』


 そう言うと、そいつは引き金を引いて、こっちに向かって撃ってきた。だけど、狙撃するには近すぎるし、スコープも覗いていない。どういう事なんだろうーーと思っていたら、銃弾がバラけるようになって……ってまさか、散弾?!


「あっぶな!!」


 ギリギリ避けられた。危なかった。もし数秒判断が遅れていたら、コクピットに何発か直撃していたよ。


『チッ。なかなかの判断力……』


 あのライフル、そんな機能があるのか。手元で何か操作していたのは、銃のタイプを切り替える為。他にも何種類かあるのなら、距離を取っても詰めてもあまり変わらない。


 ただ、切り替えに隙が出来そう。


 とにかく、イタチの方に集中していると、直前までいたイヌのビースト・ユニットが姿を消しているのに気付いた。


「くっ……!!」


 後ろから微かに土を踏みしめる音が聞こえたので、急いで機体を左旋回し、背後から攻撃を仕掛けてきたイヌのビースト・ユニットの腕を掴む。


『ちぃ!! 踏み込みをもうちょい加減するべきだった!』


「そうだねぇ。君のスピードは中々に厄介だ。って、その間にクマがって事ね!」


 既に上に飛び上がっていて、ヒト型に変形すると、両手を組んで思い切り振りかぶり、手首辺りに取り付けられている装置を起動させてきた。その瞬間、そこからバーナーみたいに火が出てきて、一気に放熱させくる。ということは……。


「うわぁぁ!!!!」


 予想通り、拳の勢いと合わさった爆発が、僕の機体に襲いかかった。イヌのビースト・ユニットの腕を離してしまったから、更にそいつから追撃で攻撃をされてしまい、僕の機体は地面に叩きつけられ、そのまま地面を滑ってしまった。


「コンビプレーは流石だなぁ、もう……」


 シナプスはこれくらいでは壊れないけれど、今の爆発の衝撃で、右腕の間接部がやられたかも。上手く動かせないや。いや、これくらいなら……。


『追撃しろ!』


「まぁ、だよね」


 既に長砲のライフルで狙われているから、尻尾をしならせて、こっちもショットガンでやり返す。

 ただし、着弾は前の地面。それで砂ぼこりを巻き上げて視界を奪う。


『ぬ。鬱陶しいやり方を……距離を取る気か』


 その間に、右腕の緊急修復を作動させ、破損箇所に応急的な、衝撃に強いラバー性の膜を張り、またスムーズに動けるようにした。


「さて、と。今度はこっちの番だ」


 それから、シナプスもヒト型に変形させ、レーザーライフルを構える。腰に付けているレーザーサーベルも何時でも抜けるようにする。


「ーーっと、そこ!!」


 やっぱりというか、クマのビースト・ユニットがまた爆破させてきて、爆風で砂ぼこりを払ってきた。

 僕は衝撃でバランスが崩れないようにしてから、ライフルで相手の機体を狙う。


『ふむ。やけくそか? 真っ正面から撃ってくるとは』


 こっちの攻撃は簡単に腕のシールドで防がれた。しかもその機体の後ろから、スナイパーライフルに換装したイタチのビースト・ユニットが追撃してくる。


「う~ん、隙がないなぁ。と言いたいところだけれど、見つけたよ」


 素早く動いている、イヌのビースト・ユニットの方が厄介だ。こいつが、僕の攻撃時とかに攻撃をしてくるから、そっちに対応しないといけなくなる。その間に、他の2体が連携に動く。だから、先ず戦闘不能にするのは、翻弄しているやつ。


『なにっ!?!?』


 尻尾でガッシリと捕まえて、右斜め後ろから攻撃して来ようとしていた、イヌのビースト・ユニットの動きを封じる。それから、ぐるっと一回転して、思い切り投げ飛ばした。もちろん、他の2体から離すようにしてね。


「君のスピードは凄いけれど、ミルディアの黒い凶星には劣るね」


『なっ! あんな規格外なやつと一緒にーーはっ!? なんだ、この音は?!』


 ようやく動き出したね。あれだけの大きさを、タービンやエンジンを組み合わせたもので動かしているからか、起動させるのに時間がかかる。だから、戦争でもあまり役立つ、町の自衛や工業用にしか使われなかった。


 それを戦闘で使おうとしたクレナイは、相当ブッ飛んでいるってわけだ。


『コノエ! そいつ、こっちに放り投げて!』


 そうだよね。そうなるよね。やるしかないんだ。


「えぇ~い!!」


『な、うわぁ!?』


 クレナイの言葉の後に、尻尾で捕まえた相手機を上に放り投げるようにして、後方から向かって来たクレナイの機体に向け、勢いよく投げ飛ばす。


 クレナイは、僕のシナプスよりも一回りも二回りもデカい、かなり巨大な機体を駆り、更にその機体と同じくらいの大きな右腕を振りかぶり、肘に取り付けられたバンカーを伸ばし、熱い蒸気を噴き出した。


『紅機人器、No.91。サンドリア・ライヤー! 撃ち抜け! バンカーインパクト!!!!』


『なっーーギャァァ!!!!』


 そして、蒸気の力でバンカーを打ち出し、ものすごい加速と勢いを付けた拳で、上空の相手機コクピットを丸ごと貫いた。当然、パイロットごと……。


『うっし、いい調子♪』


 クレナイは直ぐに腕を払い、相手機を遠くに投げ飛ばし、勢いで腕を引き抜いた。その瞬間相手機は爆発し、原形は跡形もなくなり、パーツだけがパラパラ舞い落ちていく。


『……隊長、少尉が』


『あぁ、くそ。やりやがったなぁ』


『先にやって来たのはそっちでしょうが~♪ それと、私達の仲間のコノエに手を出してる。問答無用よ!』


 クレナイはそう意気込みながら、相手機に向かって構えをとった。


 クレナイのこの機体は、何と言うか本当に独特で、さっき言ったように腕が機体と同じ位に大きいんだよ。右腕だけじゃなく、左腕にもバンカーが付いていて大きいんだ。

 そんな物を付けた機体を高速で動かすとなると、それなりのタービンが必要で、遮音と防音の装置を最大限まで取り付けないと普通にうるさい。近所迷惑とかいうレベルじゃない。そして普通なら、かなりの量の燃料が必要になるけれど、ここの惑星の燃料はかなり優秀で、地球のやつと比べても数百倍もの差がある。


 だから、こんなデカイ機体が作れたんだろうけどね。


 脚は二足だけどこれもデカイし、背面にはキャタピラーも付いているから、脚を折り曲げて戦車みたいな移動の仕方も出来るっていう優れもの。更には、背部には蒸気の排出をする、円筒状のものが突き出ている。そして胴体は、少しずんぐりとした感じだ。全体的に丸みも帯びてるから、空気抵抗も減らしている。


 まぁ、シナプスと並ぶとシナプスの方が潰されそうなので、立ち位置には気を付けないと。こんなの、大型のトレーラーと軽自動車みたいな差があるよ。


 それをジープで引っ張っていたんだからね。そりゃ目立つって。だけど、クレナイはこの機体を気に入っていて、ロマンとか何とか言っていた。


『全時代の頭のイカれた奴等が作った、環境破壊の機体で……俺達の近くをウロチョロするなよ』


 そりゃ相手からもそういう言葉が出るのは仕方がないけれど、クレナイはその言葉を聞いて、いっそう相手を許さないといった感じで言い返している。


『このロマンをわからない奴等が、最近の機体を作っているんだからね。そりゃあ負けて当然よ~♪』


『何だとぉ……!!!!』


『そんな金食い虫の様な機体に、負けるような要素など皆無だ!!』


 金食い虫……っていうのもあってるね。そりゃあもう、維持費はシナプスの倍だもん。

 それでも、クレナイは相手を煽り続けて冷静さを失わせている。


 これは、もう今すぐにでも決着が着きそうだ。

こちらの事がバレた以上、生きて帰す事は出来ない。それは分かっていた。こちらを狙われるし、世話になっている人達にも迷惑がかかる。コノエは覚悟を決め、そしてクレナイは躊躇なく相手を一機葬った。


逃がすわけにはいかない。覚悟を決めたコノエも、残りの機体に攻撃する。


次回 「8 それがエゴだとしても」

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