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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE7
89/105

6 怪しいケモナー部隊

戦闘は起きて欲しくない、しかし準備するに越したことは無い。今はまだ、停戦中であって、終戦はしていない。いつまた戦争が始まり、戦火に見舞われるかも知れない。その時、守りたいものを守れる為にも。

 翌日。今日も僕達は、荒野をひた走る。


 ただ、今日は僕の横を走るジープの後ろに、クレナイの機体が結ばれていて、一緒に走っている。車輪付きの台座の上で、シートでしっかりと隠しているけどね。こうでもしないと、軍とかに見つかると色々と質問責めにされてしまうからね。


 この状態も、だいぶ怪しいけれど……。


『モドのおっちゃん。今日は、向こうの岩山よりも先に行ってみよっか♪ あっちはあんまり行ってないからね~』


「…………」


 ガイナバさんは無言だけれど、今回は頷かなかった。それを見たクレナイが続ける。


『あっちはミルディアに近くなるから、あんまり行きたくないのは分かるけどさ~ただ、この辺りはもうだいぶ漁ったし、他の漁り屋もいるからね~足伸ばさないと』


 それでも、ガイナバさんはその通りにハンドルを切る。ちょっとだけだぞと言わんばかりの様子だね。


『サンキュー♪ 愛してる~モドのおっちゃん♪』


 それが本気じゃないのは分かっているだろうけれど、ミルディアに近付くなら僕も気を引き締めて……と思っていたら、その先の道に嫌な跡があるのを見つけた。


 早速通信機で2人に話しかける。


「2人とも、辺りを警戒して。この先にビースト・ユニットが進んだ跡がある」


『うぇ?! ホントに!?』


「…………」


 ガイナバさんは、流石にそれは不味いといった表情をする。

 そりゃ、そうなるよね。ビースト・ユニットということは、アルツェイト軍の可能性が高い。

 しかも、こんなミルディアの近くをウロウロしているなんて、そんなの普通じゃないよ。僕だって、迂闊にこの機体を晒すわけにもいかないから、何処かに隠れる事になる。そうなると、ガイナバさんとクレナイだけで対応しなくちゃならなくなる。それは多分無理だ。


「Uターンしよっか。これは流石にだよ」


『ちぇ~しょうがない』


 クレナイも、ガイナバさんや僕が考えている事を分かっているから、残念そうにしつつも、引き返す事に反対しなかった。

 良かった……と思いUターンしようとしたら、遠くから何かが撃たれる音がする。


「ガイナバさん!! ハンドル切って! 右に迂回していって!」


『ちっ……!!』


『うわわわわ!! なになに?! 何なの!?』


 しかし、相手の武器の射出速度の方が速かったらしく、ハンドルを切ったガイナバさんのジープ付近に、砲弾か何かが着弾し、大きく爆発した。


『きゃぁぁああ!! ちょっと! 普通予告なく撃つ?!』


「いや、そんな事しない! イカれてるというか、だいたい何でか分かったよ! アルツェイトのケモナー特殊部隊だ!」


 本国へはあの時の一回だけだったから、その人達を見たことはない。聞いただけなんだ。


 その部隊は、常に特殊な任務を任され、その場での戦闘判断を有している、ケモナーだけで結成された特殊部隊。

 それが、ケモナー部隊の真髄とも呼ばれている、アルツェイト軍特殊作戦部隊『RE・BEASTAR』だ。


 望遠レンズ機能で僕の機体を見たのか、それともジープの後方の盛り上りを気にしたのか、怪しいと直感で感じて撃ってきたんだ。

 それすらも許されるほどだけど、あの天使の部隊に睨まれてしまうから、得策とは言えないはず。それなのに……。


「思った以上に近くにいたの? とにかく、僕は一旦隠れるしかない」


『いっ、たた……分かった。コノエのは、アルツェイトのだったよね。そうなると、バレると不味いね。何とかするよ』


「あんまり過信しないようにね。最悪の場合、ガイナバさんに」


 そんな僕達の会話を、ガイナバさんは真剣に聞いて、最後の僕の言葉で頷いた。

 とりあえず、ジープはひっくり返えっているけれど、後ろの荷台は大丈夫そう。2人も、目立った怪我はないね。何とか回避出来たみたい。ただ、ひっくり返えった時に何処かは打ってるとは思う。


 そして、遠くの盛り上がった丘の方から、砂煙を上げて、3体の機体がやって来た。

 岩影に隠れた僕も、望遠レンズでその機体を確認する。


「イタチ、犬、クマか……俊敏型にパワー型。チーム編成としては悪くないレベルだね。イタチ、犬。どっちが狙撃型かな?」


 何せ、距離的には数キロは離れている。そこから僕達を見つけたということは、狙撃型が絶対にいるはず。先ずはそれを見つけないと、こっちの撤退にも影響してくるよ。


『そこの者達、止まれ』


『いや、止まってますよ。隊長』


『私がひっくり返した……』


『あぁ、そうだった』


 何だか三文芝居されているような気がする。お陰で分かりやすいけどね。最初に喋った人が、この2人の隊長か。というか、思った以上に少ない……少数精鋭で動いているのか。


 だけど、近付いて来た機体を見て、僕は更に戦いは避けたいと感じてしまった。

 どの機体も、僕がいた2年前よりも、武装が段違いに変化している。


 長い砲筒を携えているのが、狙撃型だね。イタチのビースト・ユニットか。

 ただ、あの長い砲筒をしたライフルは気になる。あんなのは見たことない。身の丈以上だよ。今は先端を折り畳み、右側の背中に取り付けて収納してあるけれど、それでも目立つなぁ……。


 クマ型は、大きな斧みたいな武器を肘辺りに収納している。それも見たことのない形で、蛇腹みたいになっている。もしかしなくても、広げてきたり大きくしてきたりするかもしれない。

 残りは犬型のビースト・ユニットだけれど、見たことのある武装を装備している。標準型っぽいけれど、両肩についている筒が気になるなぁ。


『もう……ミルディアの国境近くなのは分かるけれど、私達はミルディア兵じゃないよ。死ぬところだったじゃない』


『それは失礼した。が、そのジープの後ろのはなんだ? 我々の事を知り、始末しにきたのではないのか?』


『私達は漁り屋、ジャンク・ルックアレードです。どこかの国の兵とかじゃないってば! この後ろのも、拾った物なの』


『確認させて貰おうか』


『どうぞ』


 やっぱりこの人達は、ジープに繋がっている物を見つけ、自分達の存在がバレたと勘違いし、こちらを消そうと仕掛けてきたわけか。

 そうなると、このケモナー部隊は何をしようとしていたんだ? 良からぬ事なのは違いない。だって、消そうとしてきたからね。


 そんなやり取りの後、クマのケモナーの人が機体から降りてきて、ジープの後ろに移動し、幕を少し上げて中を確認した。中年の髭を生やした男性でしたね。


『……これは。かなり古い前時代の物だな。綺麗にされているが、動くのか? いや、愚問か。動かすと罪になる』


『その通り。だ・か・ら。私達はあなた達の目的なんか知らないし、興味もありません。もう行っていいですか?』


 そうクレナイが話した後、彼女は突然後ろに下がり、そして右腕を引いて、腕の上部から蒸気を吹き出し円柱を突出させると、それを打ち込むようにしながら、相手の腹部にパンチをお見舞いした。


『ぐぅ……!! くそ、中途半端な機械やろうか。となると、後ろのも動くだろう』


『中途半端な獣野郎に言われたくないね! モドのおっちゃん逃げるよ! こいつら、容赦なく撃とうとしてきた!』


 確かに、その男性の手に銃が握られていて、既に引き金を引こうとしていた。なんなら、クレナイが距離を取った瞬間に撃ってきた。

 僕としてはどうしたら、と思っていたけれど、次の相手の発言で僕も出ないといけなくなった。


『全員捕まえろ! それと、さっき岩影に隠れたビースト・ユニットのやつも、そこから出てこい!』


 残念、見られていたか。だけど仕方ない。向こうの狙撃銃が、思っていた以上に厄介そうだ。

 折り畳まれていた部分が前に伸び、とても長い狙撃銃と砲銃を組み合わせたものになった。さっきの爆発もこいつかな?


「クレナイ。そこから下がりつつ反撃してて。相手を翻弄させないと」


『分かってるよ。モドのおっちゃんの方は大丈夫?!』


『大丈夫だ。出すのか?』


『コノエだけじゃちょっとキツいでしょ?』


「そうでもないけれど、あんまりエネルギーや弾は使いたくないね」


 僕は岩影から飛び出し、後ろの機体2体に対して、レーザーライフルで牽制攻撃を仕掛ける。

 それをしながら、クレナイやガイナバさんに状況説明し、ここから撤退するための方法も相談した。


『そうなると、一目散に逃げるしかないか~』


 相手が逃がしてくれるならだけど、それが無理なら倒すしかない。果たして、クレナイと僕だけで出来るのかな……。

更に遠くの方へと向かい、行動範囲を広げようとした矢先、アルツェイトの特殊ケモナー部隊と遭遇してしまう。何とか誤魔化そうとしたものの、相手は最初からこちらを疑い、攻撃をしてきた。戦闘は避けられない。シナプスに乗るコノエは、3体のビースト・ユニットの前に立つ。


次回 「7 殺す覚悟」

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