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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE6
80/105

5 五分の戦況

イナンアの切り札、ディア・イフリートが出撃し、戦況は一転、ルディアが押されていく。果たしてオルグは、ミルディアはこの状況を打開出来るのか。

 ゲルシドは、確かに人間である。


 彼はケモナー施術もしていない。当然、アングラーやスピルナーもだ。それなのに、彼はケモナー特有の能力を発動させた。


「バカな、あり得ない! ゲルシド。お前は、ケモナーではないはず!」


『あぁ、そうだ。ケモナーではない』


 目の前に威風堂々佇むその姿は、かつてある場所で感じた圧力と変わらない。そして、いつも横で滑走する者の圧と変わらない。間違いなく、DEEPが発動されている。


「……グランツ君、無事か?!」


『あ~んま無事じゃねぇなぁ。咄嗟に感覚遮断したとは言え、両腕落とされた上に背後から蹴飛ばされ、武装も壊されたんだ。あと少ししか動かせねぇ……』


 今ラフ・ティガーは、うつ伏せで地面に倒れている。そこから何とか起き上がろうとしているが、そこをゲルシドの機体が背中を足蹴にしており、正に危機的な状況だった。


『さて。部下思いの君なら、この状況は理解しているな。そして私はそう甘くはない。厄介な者は、早々に潰す』


 そう言うと同時に、ゲルシドの機体が左腕を上げ、手の甲からビームの刃を伸ばすと、それをラフ・ティガーに向けて振り下ろす。


『っ……!! ふむ。まぁ、そう簡単にさせてはくれないのも分かっていた』


 しかし、ラフ・ティガーのコクピットが貫かれる前に、オルグがバズーカ砲でその攻撃を止めた。

 続けて、オルグの隊がゲルシドへと攻撃を仕掛ける。ゲルシドに反撃させないよう、途切れる事なく攻撃を続けていく。


『少佐! 今のうちに、グランツさんを!』


「分かっている。だが……相手機が全く微動だにしていない」


『くそ! これでもそこそこの弾量ですよ! どれだけの装甲で……げふっ!?』


「なにっ!?」


 すると、攻撃をしているオルグ隊の1機が、突然下から伸びてきた何かにコクピットごと貫かれる。そして、ぐいっと持ち上げられると、そのまま眩い光を放ち始める。


「まずい! 脱出を!!」


 咄嗟にそう言ったオルグだが、もう助からないのは分かっている。コクピットごと貫かれているんだ。パイロットはもう……。


『少佐……すいま、せん……』


 か細いそんな声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には、もうその機体は爆破されていた。


「くっ、そ……!」


 オルグはその伸びる何かに攻撃をするが、スルスルと蛇のように動き、ゲルシドの機体に戻っていく。良く見るとそれは、ディア・イフリートの尾だった。


『ふむ。思った以上の威力だ。感覚は分からないが、ここまで動かせるのか』


 あまりにもな戦力差に、オルグの隊の者達も、ここまでかと死を悟った……が。


「バイラ、イグール、ナッシュ隊は私の後方、他の隊は私のサイドに付けろ。この場は制させて貰おう。ゲルシド将軍」


『ほぉ。戦意が削がれぬか。貴様の相棒はこのありさ……うん?』


『へっ。慣れない尾の動きなんて、やるもんじゃねぇぞ。他が散漫になる』


 オルグの毅然とした態度と、相手機体の脚に噛みつき、脚1本をへし折ってその場を自力で脱した、グランツの不屈の闘志の姿を見て、オルグの隊の者達は、再び強敵に向けてライフルを構えた。


『……なるほど。いい兵を育てたものだな。グェンヤーガよ』


『褒めた所で何も出んぞ。貴様は、そこで朽ちるがいい』


『そうか。では少し、ギアを上げようか』


 そう言うと、ゲルシドはオルグから少し距離を取り、尾を上に上げる。その先が円を描くように開いているのを見て、オルグはすぐさま全機に通信を入れた。


「全機、奴の斜線上に入るな!」


『気付いたか。だが、ほんの数秒足りなかったな』


 そして、ゲルシドは機体の尾にエネルギーを集中させると、それを前方に伸ばし、そこからとてつもないエネルギーを持った、大きなエネルギー砲を撃ち放つ。

 オルグの隊は、何とかその直線上からは離れ、機体への直撃は免れた。ただ、空を飛ぶ大型艦や駆逐艦は、船体からは逸れたものの、翼や砲台に被弾していた。


『くっそ……!! なんだあのエネルギー砲は!?』


『操縦不能! 不時着します!』


『うわぁぁ!!!!』


 そして、いくつかの艦が戦闘不能となり、グェンヤーガまでの守りがまた減らされてしまう。

 オルグの隊も距離を取ってしまい、今現状では、ゲルシドの機体はグェンヤーガの大型艦まで、障害も無く辿り着ける様になっている。


 ただその中でも、オルグだけはゲルシドの機体の正面に付けた。攻撃を交わした後、直ぐにまたさっきの位置に舞い戻っていたのだ。


『……ほぉ。まだ立ち塞がるか。黒い凶星よ』


「悪いが、私をそう簡単に捉える事は出来んさ」


 そしてオルグは、左手に持ったレーザーライフルで牽制し、反対の手に握り締めたレーザーソードで斬りかかる。


 それをゲルシドは、腕に纏ったビーム装甲で防ぎ、反対からビームソードを射出して、オルグの機体を攻撃してくる。

 避けては撃ち、撃っては避け、また斬りつける。お互いに死角から狙おうとするが、その死角を移動し続ける事で無くし、攻撃をいなし続けていた。


『私と対等に渡り合えるのは、グェンヤーガ以来だな』


「お誉めの言葉どうも。私の前に立ち、無傷でここまで戦えたのも、あなたが初めてだ」


 お互いにお互いの実力が分かり始めた頃、2人はそう言い合っていた。


 次々とレーザーライフルの攻撃や、ビームライフルの攻撃、サーベルでの打ち合いが繰り広げられ、その場から先へゲルシドは進めなくなっている。

 ゲルシドの隊はその殆どがゲリラであり、訓練もし、新たな機体を渡しているものの、やはり正規軍とは違うようだ。一部腕の立つ者はいるが、正規軍にはその何倍も腕の立つ者がいる。


「落ちたものだな。そちらの理想が何かは分からないが、軍を抜けてまでやることか? しかも、ギルム様とつるんで何を企む」


『勘違いしては困るな。私は自ら軍を抜けていない』


「それは聞いている。確か、部下の策略で追いやられたと。その部下は、メールコンであなたに殺られているが、何故戻らない? 追いやられただけであり、あなたが大きなミスをしたわけではない。あなたを慕う者は、まだあの国にいるはずだろう」


『それは簡単さ。こちらの方が動きやすい。やはり、国に属している者達は頭が固い』


「ほぉ。それは、先程総督へ向けた質問と何か関係しているのか?」


 オルグは相手の尾の攻撃をギリギリで避け、サーベルで相手の下部を狙いながら、そうゲルシドに向けて質問した。


『そうだな。丁度いい。お前にも聞いておこうか。この銀河の成り立ち、役割についてな』


「…………」


 その問い掛けに、攻撃をしながらも、オルグは沈黙をした。


『なぁ、聖ヘパイト共和国の聖女の元フィアンセよ』


「……それをどこで?」


 そんな事を話したのは、ごく僅かな人間だけ。最近では、何かと気になるあの狐の娘だが、あの子がそう簡単に話すとは思えなかった。いや、そう思いたかった。


『ある情報筋さ。なぁに、君が思った子とは違う。もちろん、あの坊主でもないぞ』


「なっ……!!」


 ただ、それを見透かしたかのようなゲルシドの言葉に、少し戸惑いを見せてしまう。


『そこだ』


「……おっと!! 私を動揺させるためのものか。全く」


 そこを狙われ、コクピットに相手の尾が真っ直ぐやってくるが、オルグは咄嗟に後退り、その攻撃を交わした。


『狙えたらとは思ったが、まさか本当とはな。シナプスのパイロット……あの子はどことなく、英雄の気配を感じてならないな』


 どうやらゲルシドも、たった1度とは言え、何かを感じ取っていたようだ。

 しかし今の2人は、それを考察し合う仲ではない。再びお互いに攻撃を仕掛け、斬り合い、打ち合いの応酬を始める。


 誰もが割って入れない、援護をしたくても逆に足手まといになる。周りの者達も皆そう思い、お互いに距離を取りながら、相手部隊と交戦している。


 ただその中で、再び奴等がやってきた。


 両方の部隊の機体に、新たな敵接近の警報が鳴る。


「こんな時に……何処だ!」


『いや、これは最悪だな。このタイミングでもやってくるのか。奴等は……』


 ゲルシドの言葉の後、グランツがオルグに通信を入れる。


『大将! 空だ! また奴等だ!』


 その言葉と共に、上空から対地ミサイルが落とされ、辺り一面が炎に飲まれる。


「くそ!! こんな時にスピルナーか!! だからバッド・ビーと呼ばれるのだろうに!」


 戦いの最中に介入してくる、嫌われ者の虫達が、この戦場を更なる混沌へと陥れていく。

互角の戦いを繰り広げる2人を前に、またしても現れたスピルナー達。その意図も真意も不明。嫌われ者の虫達が、再び戦況をかき乱す。


次回 「6 戦火に散る」

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