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GALAXIES BEAST  作者: yukke
EPISODE6
79/105

4 ディア・イフリート起動

ミルディア優勢の所、嫌な予感を感じたグェンヤーガはオルグを下がらせる。果たして、その判断は正しかったのか。

 グェンヤーガ総督が乗る、大型艦の防衛に回ったオルグの部隊は、早速補給を受けていた。そして、DEEPを使ったグランツを少し休ませ、前線はそのまま進まず、しかし下がらずで粘るよう指示を出す。


「総督。何故、一気にゲルシドを落とさないのですか? 今の状況では、圧倒的に……」


「総督の御子息が、裏で動いているかも知れん。この状況が思惑通りなら、1度立ち止まって冷静になる必要もある」


「な、なんと! 失礼しました」


 総督の側にいる、大型艦の指揮官が進言をしているが、戻ってきたオルグにそう突っ込まれ、スゴスゴと後ろへと下がっていた。


「オルグよ。本当にギルムは、イナンアと協力しているのか? それとも、何か他の計画でもあるのか?」


 その後グェンヤーガ総督は、オルグに向かってそう話しかけた。

 まだまだギルムに対しての情報は、そこまで手に入れられていない。ガンマ社が怪しい動きをしており、それが全てギルムの指示であることは突き止めているが、決定的な部分は隠されているため、本人に問い詰めても誤魔化されるだけだった。


「私も、ギルム様の考えは分かりません。動きが読めないのですよ。まるで、何者かから知恵を与えられているような、そんな様子です」


「むぅ……確かに」


 そうなると、尚更ギルムの思い通りになってしまうのは危険なように思われた。その前に、何としてもギルムを取り押さえないといけない。

 だが戦争は、時として誰もが予想出来ない展開へと進んでしまう事がある。


『親父~手伝おうか?』


 それはギルムからの通信で、その言葉には誰もが疑いを持っていた。


「ギルムよ。この戦闘は貴様が誘導したのだろう? 手伝うとはどういう事だ?」


『いやぁ。相手の大型艦から飛んでもないのが出てるぞ。流石の親父殿も、アレには苦戦するんじゃねぇの?』


 その直後、前線を指揮していた戦艦から通信が入る。


『総督!! 我が隊の大半が撃墜! こちらの戦艦、大型艦、駆逐艦の半数以上が撃沈!! 止められまーー』


 その報告は、最後まで行われる事はなかった。途中で何かの攻撃にあったようで、突然途切れてしまった。


「総督。最後の通信の直前、映像も送られてきています。映します」


 何が起こったのか。それを整理する間も無く、総督のいる大型艦の司令室のモニターに、ある大きな機体が映し出された。


「あ、あの機体は!? 四皇機のレプリカとして開発されていた、ディア・イフリート!」


 2足歩行の龍の様な姿をした、普通の機体よりも一回り程大きな機体が、ゲルシドの乗る大型艦から出撃していた。

 どうやら、アレに前線を崩されてしまっているようで、事態は一変してミルディアが窮地に立たされる事になった。


「くっ! 私はグランツと共に出ます! DEEPの再起動の時間までは出来たでしょうし、何としてもアレを落とします!」


「あぁ、頼むぞ」


 オルグはそう言うと、急いで司令室から飛び出していった。


『ありゃ強力だぜ。俺自慢のガンマ社の機体を貸そうか? それがあれば、あの機体を押さえる事くらいは出来るだろうぜ』


「…………」


 だが、ギルムの提案にグェンヤーガは首を縦に振らず、沈黙したままモニターを凝視していた。


『……分かったぜ。親父がその気なら、俺は特に手は出さねぇ。本当にな』


 その言葉ですら、疑心暗鬼になっている。実の息子とは思えないほどに、その底を知れないでいる。


 それでも自分は、ミルディアの総督だ。長年の経験と勘、確かな情報だけを元に、様々な作戦を頭に巡らせていた。


『老いたものだな、グェンヤーガ。以前の貴様なら、このような事態も見抜けたろうに』


「好きに言っていろ。ゲホッゲホッ。それでも勝つのはーー」


『この私だ。老いと病に蝕まれた貴様に、こちらが負ける要素等1つもない』


 先程の龍の機体から、ゲルシドの通信が入る。あれのパイロットはどうやら、ゲルシド本人のようだ。それならばと、グェンヤーガはあの機体を撃墜する方法を探る。


 既に勝ちを確信しているのか、ゲルシドの態度はかなり大きくなっている。そこに付け入る隙があれば、まだ勝つ可能性は残されている。


「頼むぞ」


 ゲルシドと通信しながらも、グェンヤーガはオルグに通信を送り、ある作戦を伝えていた。

 かなり危険な賭けではあるが、相手がこちらに集中しているのであれば、この方法が有効になりそうであった。グェンヤーガの目は、しっかりとゲルシドの機体を見据え、闘志を燃やしていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「すまんな、グランツ君。動けるか?」


『余裕余裕~まだまだいけるぜ~』


 オルグは出撃準備を整え、同じように待機しているグランツに話しかける。本人は平然としているが、機体の方はまだオーバーヒート状態であり、DEEPが再起動出来る時間は経っていても、機体は先程のDEEPの影響から回復していない。

 それだけ動いて暴れていたのだから当然だが、ゲルシドのいる大型艦を落とす事まで至らなかったのが、ここにきて響いている。


 それでも、グェンヤーガ総督から受けた指令は、グランツが居ないと達成出来ない。


「無茶を承知で受けてくれて助かるよ。ただ、この出撃で今度こそ終わらせるさ」


『あぁ、分かっている。その為なら、俺の命くらい安ーー』


「それは言うな。グランツ君。私は、君を失わずに勝って見せるよ」


『あ~すまん。あんたがこの言葉を嫌ってたのを忘れてたぜ』


「部下の命を安く思っている奴は、人の上に立ってもいつか足下から崩されるさ。だから私は、自分の隊の者達と同じ立場で、同じ目線で戦場に立つ。戦いに上も下も関係ない。1つの個として戦う事になるのだからね」


『だから私達は、あなたに着いていくのです』


『どんな無茶な指令でも、オルグ少佐となら無茶に思えないんですよ』


『着いていくだけで精一杯でも、あなたの足を引っ張る事はしない!』


『さぁ、またいつものようにやりましょうや』


 そんなオルグの言葉に、彼の隊の者達が思い思いに話しかけている。


「あぁ、私はいい人達に巡り会えた。感謝するよ。そして、今この場で誰が最も脅威なのかを教えてやろう」


 大型艦の後方から、格納庫と直結している発進レーンが伸びていき、そこから次々とハコ機が出てきて、射出レーンに乗っていく。そして最後に、ラフ・ティガーとケプラーが出てきて、同じように射出レーンに乗った。


「さて、行こうか。オルグ隊、発進する!」


 そのオルグの言葉と当時に、射出レーンから次々とハコ機が出撃し、最後にグランツとオルグの機体も発進、地面にフワリと着地すると、目の前のディア・イフリートへと向かって進んで行く。


『オルグ・バージアス少佐。君が相手か?』


「あぁ、少しお相手願おうか。なに、相手にとって不足はないはずだ」


『良かろう。ミルディアきっての名パイロットならば、落とされた後の士気低下も十分だろう』


「そうはさせんがね」


 お互いにそう言い合うと、オルグから先に攻撃を仕掛ける。光子バズーカーを肩の部分から出すと、それを何発か発射させてディア・イフリートに直撃させた。


 同時に、オルグ隊のハコ機が左右から展開していき、ディア・イフリートを囲んだ。そして、オルグの背後からラフ・ティガーが飛び出し、薙刀を回しながら斬り付ける。


『君は、先程DEEPを起動している。無茶は良くないぞ』


 しかし、相手機の手がグランツの機体の薙刀をしっかりと掴み、それ以上はいかないように押さえている。


『ご心配どうも。だがなぁ、あんたはただの人間だ。そんな奴が、ビースト・ユニットに乗ってどうするんだ? 俺達ケモナーに比べたら劣るだろう』


 だが、グランツのその言葉の後に、ゲルシドは小さく笑うと、薙刀を大きく振り払い、彼を遠くに放り投げた。


『ぐっ!!』


『心配しなくてもいい。虎の人よ。ケモナーとの差は、そうはない』


 すると、ゲルシドのコックピットから電子音が聞こえてくる。最悪の言葉を乗せて。


『DEEP起動。認可不可。強制終了、強制終了エラー。強制終了、エラー。強制終了設定不可。認可、再設定』


『んぁ?!』


「まさか、DEEPだと!! 人の身で?!」


『さぁ、やろうか。黒い凶星』


 その瞬間、グランツの機体の両腕があっという間に切り離された。


『うぉ、マジか……』


「グランツ君!!」

イナンアの大型艦から、想定外の機体が発進する。更に想定外なのは、ケモナーではないゲルシド将軍がDEEPを発動した。一体どんなカラクリなのか。そして戦況は、イナンアが一気に押し返し、どうなるか分からない状況に。


次回 「5 五分の戦況」

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